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新『半沢直樹』2話|まるで幕末の群像劇のようで興奮!若手社員とのチームプレイで銀行に勝負を挑む

 堺雅人主演『半沢直樹』新シリーズ。第1話に続き、先週放送の第2話の視聴率も22%超え。役者たちの熱演による顔面相撲も大和田(香川照之)を代表とする決め台詞も健在だが、前シリーズにはなかった要素もだんだんと見えてきた。そのひとつが「チームプレイ」なのかもしれない。日曜劇場研究家のライター、近藤正高さんが考察する。

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『半沢』新シリーズ、人気は関西優勢?

 先週7月26日放送の『半沢直樹』第2話では、主人公の半沢(堺雅人)が、妻の花(上戸彩)から、どこの会社の株を買えばいいかわからないと言われ、こんなふうに諭していた。

「株を買うってことは、その会社を応援することでもあるんだ。株の値段には金額だけでは表せない人の思いってものが詰まってる。儲かるかどうかじゃなくて、好きになれるかどうかで選んだほうがいいよ。ラブレターを送りたくなる会社をね」

 株というと、とかく儲けるためのものと捉えられがちだが、半沢からおだやかな口調で言われると妙に納得してしまう。もっとも、彼がこんなふうにおだやかに語ったのは、第2話ではこの場面ぐらい。逆境に置かれた半沢の気が休まることはほぼないに等しい。

『半沢』新シリーズは鳴り物入りでスタートして以来、評判は上々だ。第2話の視聴率は、関東地区では初回から0.1ポイント増の22.1%、関西地区では同3.1ポイント増の26.4%を記録したという(「デイリースポーツonline」2020年7月27日)。SNSでも劇中の登場人物たちのセリフが話題を呼んでいた。たとえば前半、出向先の東京セントラル証券から親会社の東京中央銀行に呼び出された半沢に、彼の宿敵・大和田取締役(香川照之)が「君はもうおしまいです」と告げたあと、ダメ押しで放った「お・し・ま・い・デスッ!」。さらに終盤、やはり銀行に呼び出された半沢に、証券部長の伊佐山(市川猿之助)が迫ったときの「詫びろ、詫びろ、詫びろ」にしてもそうだが、話題になったセリフはどれもくどい。こういうこてこてなところが、関東以上に関西でウケがいい理由なのだろうか。

 前回、伊佐山率いる銀行の証券部に、大手IT企業・電脳雑技集団によるスパイラルの買収案件を横取りされ、怒りを爆発させた半沢は、第2話でついに本格的に反撃を開始した。電脳側はすでにスパイラル株の30%を買い取り、さらに過半数を取得して経営権を握ろうとしていた。スパイラル側はそれを防ぐべく、新たに株を発行し、それを友好的な第三者(いわゆるホワイトナイト)に買い取ってもらう策を立てる。ホワイトナイトには、財務アドバイザーである太洋証券の広重(山崎銀之丞)の勧めで、パソコンや周辺機器の販売会社であるフォックス社長の郷田(戸次重幸)になってもらい、電脳に対抗しうるIT連合を組む構えであった。半沢は部下の森山(賀来賢人)とともに、それを後押しするべく親会社の銀行には悟られないよう動き出すのだが、どういうわけか伊佐山に知られてしまう。果たして話を銀行側に漏らしたのは誰なのか。ここから半沢たちは伊佐山に一矢報いるべく、裏切者探しに全力を注ぐのだった。

飯を食うときは仕事の内々の話はするな

 それにしても、前回、例の買収案件を伊佐山に横取りされたときもそうだったが、証券会社から銀行へ話が筒抜けすぎる。これに関しては今回も冷や冷やさせる一幕があった。それは、半沢と森山がスパイラルに接近を図っていると知った部下たちが、外で食事中、その話をしていたところ、隣りの座敷にいた社長の岡(半沢と同じく銀行からの出向組/益岡徹)に聞かれてしまった場面だ。この直後には半沢が銀行に呼び出され、一瞬、岡が裏切者かと思わせたが、すぐに潔白があきらかになる。

 振り返ってみると、『半沢』シリーズではこれまでにも、登場人物が外食中にうっかり重要事項を漏らして、敵に利を与えてしまうことがたびたびあった。たとえば前シリーズでは、東京中央銀行・京橋支店の融資課長代理(手塚とおる)が、取引先のホテルの経理課長(小林隆)からの告発を常務(当時)の大和田が握りつぶしていたと居酒屋でうっかり口にしたところ、待ち構えていた半沢たちに聞かれて、言質をとられてしまった。

 今回のシリーズでも、半沢が同期の渡真利(及川光博)や苅田(丸一太)と行きつけの小料理屋で仕事の話をしていると、女将(井川遥)が「きょうはどんな儲け話をされるのかしら」と声をかけてくるし、まったく油断ならない。「飯を食うときは仕事の内々の話はするな」——このドラマは私たちにそんなことを教えてくれているような気がする。

 裏切者探しを続ける過程で、フォックスの業績が悪化していることがわかった。そんな会社がスパイラル株を買い取れるのかという疑問が、半沢たちの頭をもたげる。調べてみると、どうやらフォックスに対し東京中央銀行が融資を予定しているらしい。これはようするに、電脳の買収案件を成功させるため、融資をエサにフォックスをスパイラルに近づけ、まんまと両者ごと電脳に吸収してしまおうという伊佐山の策略なのではないか。だとすればフォックスはその社名どおり、とんだキツネということになるが、確たる証拠はない。ここで半沢たちのため動いたのが、証券会社から銀行に出戻った三木(角田晃広)である。三木は前回、伊佐山を手助けするため、上司の諸田(池田成志)とともに裏で動き、その見返りに銀行に戻ることができた。だが、銀行に戻って幅を利かせる諸田とは対照的に、三木は苦手な雑務を押しつけられて冷遇されていた。そんな彼を半沢だけは「三木は客の懐に飛び込む対人スキルがある」と評価する。三木はその恩に報いるべく、一転して半沢側に協力し、伊佐山のデスクから買収計画についての文書を入手する。三木を演じる角田晃広は、所属する東京03でのコント同様に体を張った活躍ぶりであった(歌舞伎役者とお笑い芸人が活躍しがちという“「日曜劇場」あるある”だ!)。

親会社に対する子会社の下剋上

 このほかにも、渡真利は銀行がフォックスに融資したと確認するやいち早く半沢に知らせ、証券会社の若手社員の浜村(今田美桜)は、裏切者の正体の決定的証拠となる写真を撮影し、そしてスパイラル社長の瀬名は、フォックスとの契約書にサインするのをしばし待つよう半沢から指示され、それに従い……といった具合に、第2話では半沢チームの連携プレイが光った。『半沢』新シリーズが、7年前の最初のシリーズと一線を画すのはこのあたりだろう。前シリーズでは、半沢のモチベーションの根本には、父を死に追いやった銀行への私怨があり、それゆえ彼にはどこか孤独の影がつきまとった。しかし今回のシリーズは違う。半沢は証券会社の営業企画部の部下たちと手を組み、チームプレイで銀行に勝負を挑もうとしている。つまり親会社に対する子会社の下剋上であり、それこそが新シリーズの前半における最大の見せ場になるに違いない。

 なお、今回の裏切者の正体は、スパイラルのホワイトナイトにフォックスを紹介した張本人である広重だった。浜村が撮った写真には、電脳側とひそかに接触した広重が、先方の副社長にして社長夫人の平山美幸(南野陽子)とハグする姿があった(このドラマの世界ではどうやらまだ他人と心置きなく濃厚接触できるらしい)。証拠を突きつけられて広重はすっかり取り乱す。半沢から「この絵図を描いたのは誰だ!?」と、策略の首謀者(もちろん伊佐山に決まっているのだが)を問いただされても、ろれつが回らず、すぐにははっきりと答えられない(イラスト参照)。伊佐山の駒に使われた者は、前回の諸田や三木に続き、半沢にしっぽをつかまれると、うろたえるしかないのが何とも哀れだ。

 第2話の終盤では、銀行に呼び出された半沢がスパイラルと正式にアドバイザー契約を結んだと、伊佐山や三笠副頭取(古田新太)に続き、中野渡頭取(北大路欣也)と大和田にも伝えた。銀行への“宣戦布告”というわけだが、ここで半沢が掲げたのが、中野渡のモットーである「顧客第一主義」というのが面白い。考えてみたら、銀行の中枢にいるのは、伊佐山にせよ、三笠や大和田にせよ、自分の出世が第一という輩ばかりなのに、そのなかで銀行トップの思いをもっとも理解しているのが彼らの敵である半沢とは、何という皮肉だろうか。いわば錦の御旗を掲げた半沢に、伊佐山たちは矢を射ることができるのか。そういえば、フォックスがスパイラルに対しIT連合を持ちかけたときには、「薩長連合か!?」と一瞬思ったが、今回の『半沢直樹』は、若手社員が活躍するところといい、どこか幕末の群像劇を思わせる。

 今夜放送の第3話では、検察庁の黒崎(片岡愛之助)が前シリーズに続き登場するほか、今年1月に放送された『半沢』スピンオフ版の主人公・高坂(吉沢亮)も出てくるとか。新たな名ゼリフが出てくるかどうかにも注目したい。

『半沢直樹』(新シリーズダイジェスト)は配信サービスParaviなどで視聴可能(有料)

半沢直樹スピンオフ企画「狙われた半沢直樹のパスワード」は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

『半沢直樹』(前回シリーズ)は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

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