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【京王線】注目の介護付有料老人ホーム【まとめ】

 評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。

 明大前駅や調布駅などを経由しながら新宿駅と八王子駅を結ぶ京王線。利便性と住環境の良さで人気の路線となっており、他の路線同様に混雑緩和が課題で、その対策として立体交差の工事も進んでいるという。今回は京王線沿線にある介護付き有料老人ホームを紹介する。

福祉先進国デンマークの理念を取り入れた介護付き有料老人ホーム「デンマークINN深大寺」

 京王線「調布」駅からバスで12分、バス停から徒歩5分の「デンマークINN深大寺」。こちらの施設はその名の通り、高齢者福祉先進国と言われるデンマークで作られた高齢者福祉3原則を取り入れて設立・運営されているという。1982年に作られた3原則には(1)本人の意思尊重(2)残存能力の活用(3)生活の持続性が掲げられている。

 デンマークの高齢者福祉3原則の1つである「残存能力の活用」とは、具体的にはどのようなケアなのだろうか。こちらの施設では残存能力の活用を意識して、入居者自身ができることにはなるべく手を出さずに援助しているそうだ。食事介助の時も、自分でできることは自分ですることで、能力を維持・活用できるようになるという。もちろん、本人が疲れている場合などに様子を見ながら手伝いはするが、運営効率を良くするために職員のペースで世話をするようなことは極力しないそうだ。

 食事とならんで生活の質を左右する入浴の時にも、残存能力の活用を意識しているという。まずは入居者の満足度が高くなるように、時間をかけて入浴しているそうだ。そして、手取り足取りで入浴介助をするのではなく、できることはやってもらう方針を掲げている。例えば、浴槽をまたげる人には自分でまたいでもらい、難しい場合に初めて手助けをする。効率だけを考えると、スタッフが全てをやってしまった方がスムーズだが、待ちの姿勢で見守り、たとえ時間がかかっても入居者自身にできることをやってもらうという。そのために、スタッフ同士で入居者の能力の情報を共有することを重視。時間をしっかりとかけることで、入浴中の事故もないそうだ。

 高齢者福祉3原則の1つである「本人の意思尊重」。現在は、日本の介護現場でも少しずつ浸透してきているそうだが、これまでは、入居者本人が入居する老人ホームを選んだり、入居後の生活のあれこれを自分で決めることが難しいことが多かったという。しかし、ここでは開設当初から小さなことでもできるだけ本人や家族の意思を尊重してきたそうだ。例えば、生活用品を買う時も、施設職員主導ではなく、必ず入居者の希望を聞き、家族に連絡し、決定しているという。

 自宅から介護施設に移る際、新しい環境で共同生活を送ることに戸惑ってしまい、慣れるまでに時間がかかる高齢者も少なくない。デンマークINN深大寺では入居後、スムーズに生活に慣れるよう、「生活の持続性」にも意識を向けているそうだ。入居者が新しい生活に早く慣れるために、こちらの施設の母体である病院で行うミニカンファレンスの仕組みを取り入れて、入居者様の情報を共有しているという。

 静かな環境で暮らせる居室が全部で78室。各室に温水洗浄機能付トイレや洗面台、2か所のPHSナースコール、介護支援ベッド、冷蔵庫、エアコン、クローゼット、机、カーテンなどが備え付けられている。外出は自由で外泊もできるので、体調に問題がなければ好きなところに行けるそうだ。もちろん、家族と過ごすこともできる。

 館内には絵画が至る所に飾られている。創設者が人間の感情を豊かにするものとして絵画を集めて飾ったという。文化的な生活を送ることが重要だという創設者の考えが今も生きている。

 レクリエーションにも力をいれており、書道や絵手紙、エアロビクス、音楽療法、合唱などが活発に行われているそうだ。この日に行われていたのは、歌に合わせて体を動かすアクティビティ。参加率も高く、笑顔が多かったのが印象的だった。ちなみに参加していたかどうかを家族に教えてくれるので、入居者の日々の様子がよく分かるという。

 デンマークで提唱された高齢者福祉3原則を取り入れ、精神科の病院を母体として実績を積み重ねてきたデンマークINN深大寺。理念に基づいた温かく丁寧なケアが評判で、介護施設の各種ランキングでデンマークINN上位に選出されることも。空室が出ると、入居者家族の紹介ですぐに契約者が決まるのも納得だ。

→福祉先進国デンマークの理念を取り入れた介護付き有料老人ホーム<前編>
→デンマークの福祉理念を実践、病院が母体の介護付き有料老人ホーム<後編>

認知症介護に特化した介護付有料老人ホーム「フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘」

 東京・府中市にある「フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘」は京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅と「中河原」駅が利用可能。駅から出ているバスに乗ると静かな住宅街にたどり着く。こちらの施設の特徴は認知症対策に力を入れていることだという。今まで、認知症の重さを理由に入居を断ったことはないという。他所で入居を断られたようなケアが難しい認知症の高齢者も、介護で困っている家族の最後の砦として気概を持って受け入れてきたそうだ。

 自宅での介護に行き詰まり入居相談に来て、状況を話しているうちに泣き出してしまう家族も多いという。スタッフに話を聞いてもらい、今までの苦労を分かってもらうこと自体が何よりの安心になるようだ。施設に入居したことをきっかけに、介護で悩んでいた家族の精神的な負担も減ることで、家族間のやさしさが復活するケースも多いそうだ。

 フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘のきめ細かい認知症ケアを支えているのが、フロア担当制とユニットケア方式。1階と4階が比較的元気な人、2階が重介護・医療の必要な人、3階が認知症の人という区分けをし、各階の担当スタッフを決めているという。そうすることで、入居者は事情をよく把握した顔なじみのスタッフからケアを受けることができるそうだ。

 こちらの介護職員の常勤比率は94.4%で派遣スタッフはゼロ。国家資格である介護福祉士資格所有者の割合は63.4%と高い。さらに、入居者と介護に関わるスタッフの人員配置は2.1:1と法定基準の3:1より手厚い体制を整えているという。

 認知症ケアと同じように力を入れているのがリハビリだ。「個別リハビリ」「生活リハビリ」「集団リハビリ」「作業療法」の4つに分けられるそうだ。個別リハビリでは機能訓練指導員が個別に評価を行い、リハビリ計画書を作成する。そこでは「できること」が重視され、生活リハビリの実施プログラムへとつなげているという。リハビリ計画書に基づいて、介護スタッフ、看護師が毎日、日常動作に対するサポートを行っているそうだ。

 集団リハビリとして行われているのは、フロアごとの週1回の体操や筋力・バランスの訓練。決まった時間・場所に集まることには、生活リズムを作るという効果があるそうだ。また、認知症の人には他の人と触れ合うこと自体に意味があるという。

 作業療法のメニューには習字や手芸などのアクティビティ、計算・漢字ドリルなど様々なものが用意され、入居者が興味を持ったものを選べるようになっている。これらの活動で期待されているのは、認知機能の低下予防や精神面の活性化だという。

 人知れず悩んでいる人も多いという自宅での認知症介護。家族の介護に悩んでいる方は相談をしてみてはいかがだろうか。しっかりと耳を傾け、誠実に対応してくれるはずだ。

→認知症介護に特化した介護付有料老人ホーム<前編>
→認知症対策に特化した介護付有料老人ホーム<後編>

手厚い介護・看護体制が評判の介護付有料老人ホーム「ゆうらいふ世田谷」

 京王線「芦花公園」駅から徒歩10分、「千歳烏山」駅から徒歩12分の「ゆうらいふ世田谷」。作家の徳冨蘆花ゆかりの東京・世田谷区の芦花公園近くの閑静な住宅街に2006年7月に開設された。千歳烏山駅の商店街には、生活に必要なお店が揃っていて、買い物にも不自由はなさそうだ。

 ゆうらいふ世田谷には、手厚い介護・看護体制を口コミで聞いて、他の高齢者向け施設から移ってくる入居者も多いという。機能訓練指導員として常勤の理学療法士がいるため、入居者の状態に合わせたリハビリサービスを提供することができるそうだ。常勤の理学療法士の他に、非常勤の理学療法士や作業療法士もいて、専用のリハビリルームだけではなく、居室やフロアでも機能訓練ができる体制を整えているという。

 ここで働いている介護士の8割は正社員。その正社員のうち8割近くが介護福祉士の資格を持っているという。専門知識を学んだ新卒を正社員として採用し、ゆうらいふ流の研修で育てているそうだ。介護業界で問題になっている離職率が低いため、入居者は顔なじみのスタッフからサービスを受けることができるのがポイントだ。

 建物の1階には協力診療所の芦花公園クリニックと薬局が入居している他、医師が各フロアを週2回定期巡回し、入居者の健康を見守ってくれているという。看護師が24時間施設内に常駐しているので、何か起こった時に迅速な初期対応を受けられるのは大きな安心材料になりそうだ。

 アクティビティにも力を入れているゆうらいふ世田谷。ダイニングとは別にホールがあり、アクティビティや作業療法を行っているという。ホールにはピアノがあり、コンサートが開かれることも。お花見や七夕、お月見などの季節の行事、動物とのふれあいを楽しむアニマルセラピー、趣味の世界を広げるサークル活動などアクティビティは多岐にわたる。

 芸達者なスタッフによる催し物が行われることもあり、今まで落語やコンサートなどで入居者を楽しませてきたという。また、子どものとのふれあいにあるそうだ。近くの保育園と連携しており、入居者と園児が一緒になって餅つきやハロウィンなど季節の行事をを楽しんできた。卒園時には園児が歌を披露し、入居者から卒園記念品を渡すなど密な関係を築いているという。

 入居者1.5人に対し1人の介護・看護スタッフという手厚い体制が整えられているゆうらいふ世田谷。静かな落ち着いた生活をするための環境がソフト面もハード面も整っていると感じた。

→手厚い介護・看護体制が評判の介護付有料老人ホーム<前編>
→手厚い介護・看護体制が評判の介護付有料老人ホーム<後編>

 登山を楽しむ中高年にも人気の高尾山に接続している京王線。通勤通学で慣れ親しんだ人も、観光で利用した人も老後の住まいを探す路線の候補にしてみてはいかがだろうか。

撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

→このシリーズのバックナンバーを見る

●特養に早く入所する裏ワザ|判定会議で優先順位を上げる方法や狙い目

●介護が始まるときに慌てない!要介護認定の申請、介護保険サービス利用の基礎知識

●新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい

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