入居後は元気になる「高齢者向けのシェアハウス」的サ高住<後編>
銀木犀・浦安
千葉県浦安市にある「銀木犀・浦安」。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)であるこちらの入り口を開けると、眼の前には駄菓子屋コーナーが。そして、駄菓子を買いに来た近所の子供たちが買ったものを食堂に座って食べながら笑っている。その奥には入居者たちが談笑している姿。子供たちは入居者の孫ではなく、いわゆるご近所さんだ。一般的なサ高住ではもちろん、他の高齢者向けの施設でもめったにない光景がそこには広がっていた。
駄菓子屋と食堂で地域との交流をはかる
ここでは入居者が駄菓子屋の店番をして、子供たちと毎日触れ合っている。微笑ましい光景ではあるが、運営側としては入居者以外を建物の中に入れるというリスクを負っているのだ。
実際、地域との交流を重視している高齢者向け施設は多いし、ほとんどの事業主が施設内の閉じられた環境で過ごすのではなく、入居者と近隣の住民が自然な形で交流してもらいたいと考えている。そのために地域のお祭りや防災に参加したり、施設内で催し物を企画して近隣の住民を招待するなどしているが、継続的な成果に結びつけることに苦労しているところが多い。
しかし、銀木犀・浦安では駄菓子屋と一般も利用できる「銀木犀食堂」を運営することで地域との交流を実現している。銀木犀・浦安の所長である麓慎一郎さんは銀木犀食堂を始めたきっかけを教えてくれた。
「銀木犀は、入居者の方が食堂で食事をしているのが外からよく見えます。それでここをレストランだと思って、『ご飯食べられますか?』と言って入って来る方が何人もいらっしゃったのです。『だったら食堂をやってみたい』と思って代表に相談して実現しました」(麓さん、以下「」は同)
銀木犀食堂は土日も含めて毎日ランチの時間帯に営業している。平日は幼い子供を連れたお母さんたちが、土日は家族連れが多いそうだ。毎日違ったメニューになっていて、常連が多いというのもよく分かる。
この食堂を運営しているのは、入居者の食事を作っている厨房。厨房が入居者のためにこだわっているのは味だけではない。