歩行困難だった高齢者がスタスタ歩けるように!正しい姿勢と呼吸法を身につける「ケアピラティス」って?
歩行困難だった77才の女性がスタスタ歩けるようになった!
股関節を著しく痛め、一時期はキャリーケースがなければ歩くのも大変な状況だったが、あるストレッチに取り組んで数か月、背筋が伸び、杖も持たずにスタスタと歩いていた――。その奇跡を生んだメソッドを大公開する。
ケアピラティスとは?
●ハードな動きなし! それでもインナーマッスルが鍛えられる
医師から変形性股関節症と診断され、「次に痛みが出たら、人工股関節の手術をしましょう」と告げられていたと語るKさん。診断の1年ほど前から歩行に困難が生じ、キャリーケースを杖代わりに生活するようになった。
「ケアピラティスを始めて、1年未満で階段の上り下りはもちろん、手術することなく、趣味のゴルフも楽しめるようになりました」(Kさん)
ケアピラティスとは、正しい姿勢と呼吸をベースに、ストレッチや筋トレを行っていくもの。椅子に座った運動が中心で、効率よくインナーマッスルを使えるよう、バスタオルなどを足に挟んで行う。
理学療法士で、2016年リオデジャネイロパラリンピック大会日本選手団トレーナーも務めた開発者の花岡正敬(まさたか)さんは、次のように語る。
「約15年前、留学先のアメリカで、多くのお年寄りが日常的にピラティスに通う光景を目の当たりにしました。当時の日本でピラティスといえば、『スタイル維持のエクササイズ』。そこで帰国後、『体を動かせない人のための運動』というピラティス本来の目的に立ち返り、高齢者向けにケアピラティスを考案したんです」(花岡さん・以下同)
キモはインナーマッスルだ。
「赤ちゃんはハイハイなどの動きを通して、インナーマッスルを自然に使えるようになります。でも、年齢とともに姿勢が悪くなり、インナーマッスルが働かなくなると、肩こりや腰痛、自律神経の乱れが起きる。さらには内臓が下垂し、胃腸の疾患にもつながります。呼吸も浅くなるので心肺機能も低下します」
Kさんの場合は、月1回の手技の施術に加え、3種の簡単なケアピラティスを自宅で毎日行った。定期的に撮っているレントゲン結果を見ると、股関節の状態は以前のままだが、痛みもなく、ヒールの靴も履けるようになったという。
「筋力がアップしたからでしょうね」(Kさん)
「関節や筋膜、血管など痛みの出どころは人それぞれ。レントゲンに写らない細かな原因を探り、一人ひとりに応じた運動や施術を指導しています。実は、姿勢と呼吸が整うだけで、日常的な不調が改善される人は多いんです」(花岡さん・以下同)
●くも膜下出血で歩行困難になった77才
くも膜下出血で歩行困難になった77才の女性が、歩けるようになった事例もある。
「出血した箇所の脳が働かなくなっても、刺激を与え続けると、脳のほかの部分が代わりに働くようになります。体幹を正し、状態に即したケアピラティスを繰り返し行ううちに、運動の刺激が脳に伝わり自力で体が動かせるようになる。継続は力、です」
インナーマッスルとは?
「体幹のインナーマッスルの筋肉群である横隔膜(屋根)、多裂筋(大黒柱である背骨を支える)、腹横筋(壁)、骨盤底筋(床)は、家のような構造をしているので私は“コアハウス”と呼んでいます」(花岡さん)。
呼吸と深く関与しているが、体の歪みや筋力低下によって働きにくくなるため、意識的な呼吸法により目覚めさせ、美しい姿勢と動ける体を取り戻すのがケアピラティスだ。
早速、具体的なやり方をご紹介!