「腹部大動脈瘤」は破裂すると致命的… 原因、予防法を名医が解説
腹部大動脈瘤は突然破裂し、緊急処置が必要となるケースが多い。それはこの病気が最も発見されにくいものの一つだからだ。
「腹部大動脈瘤ができても自覚症状はほとんどありません。一般的な健康診断ではもちろんですが、人間ドックでレントゲンや心電図をとっても見つかることは少ない。血管が6cm近く、危険な大きさまでふくらんだ場合、瘤ができた場所によってはやせた人なら触って気づくことも稀にあります。でも、太っていると気づくのは難しいでしょう」
運よく破裂前に発見できるのは、ほかの病気を調べるためにCT検査や超音波検査をして、たまたま大動脈瘤に気づいたというケース。逆に言うと「大動脈瘤を探す」という目的で検査しなければ見過ごしてしまうというのがこの病気のおそろしさだ。
「最近は『単純CT検査』といって、血管に造影剤を入れないCT検査でも診断ができるようになりました。ただし放射線による被曝のリスクがありますから、瘤がないのであれば3年に一度くらいのペースで検査をすれば、危険な状態になる前に発見できるかもしれません」
ちなみに胸部大動脈瘤の場合は、瘤が気管支や食道、神経などを圧迫して、胸の痛み、せき、嚥下障害、声のかすれといった自覚症状が現れることがある。ただし、このような症状がまったくないまま大動脈瘤が破裂し、非常に激しい痛みが背中の上部から下部、腹部へと広がることも多い。
大動脈瘤の原因は? 予防するには?
大動脈瘤の原因は、動脈硬化だ。
「20歳以上になると、誰の血管にも動脈硬化による変化が起こります。その変化が心臓で起きれば狭心症や冠動脈狭窄(かんどうみゃくきょうさく)、脳で起きれば脳出血や脳梗塞、大動脈で起きれば大動脈瘤になるということです。
大動脈瘤の予防法は、動脈硬化が進行しないようにすること、これに尽きます。つまりバランスのよい食事、適度な運動、睡眠、ストレスをためないなどです」
大動脈瘤のリスクを高めるのは、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症といった病気。また、家族に動脈硬化や動脈瘤をわずらったことのある人がいることもリスク要因となる。
「大動脈瘤の患者さんのほとんどが65歳以上。75歳以上の後期高齢者や90歳以上の方も多くいらっしゃいます。男性のほうがやや多いかもしれませんが、女性も閉経後は高血圧や高血糖になりやすいため、男女差はそれほど実感していません。
欧米の人に比べて、日本人には動脈瘤は少ないといわれてきましたが、食生活の欧米化などの影響か、最近は患者数が増えているようです」
→後編:突然死の恐れも!「腹部大動脈瘤」を救う最新治療を名医が解説を読む
監修:渡邊剛
ニューハート・ワタナベ国際病院総長。心臓血管外科医。『The Best Doctors in Japan 2016-2017』に選出される。
【データ】
ニューハート・ワタナベ国際病院
HP:https://newheart.jp/
取材・文/市原淳子
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