脱・老け声!1日5分「のどストレッチ」で10才若返る、肩こりも取れる
「人の印象は外見が4~6割。声のトーンが3~4割。内面が1割」とは、アメリカの心理学者・メラビアンが提唱した法則。いくら見た目や心を磨いても、声が老けていると、その努力を台無しにしかねない。だが声は、いくつになっても若返らせることができる。そのとっておきの方法をお伝えする。
声の老化チェックリスト
※以下、上のイラストと同じ内容
●日常でわかる「兆候」チェックリスト
□ペットボトルや瓶のふたが開けづらい
□重い荷物が持てない
□便秘がちだ
□つまずく(転ぶ)ことが増えた
□長い距離を歩くのが苦痛
□十八番だった歌が歌えなくなった
□会話中、「聞き取りづらい」と言われる
□外出や人と会って話す機会を避けている
なぜ年を取ると声が変わってしまうのか?
「最近、朝起きると声がガラガラで、時間が経ってもかすれたまま元に戻りません。聞き取りづらいのか、よく人に聞き返されることも増えて…若い頃はカラオケで一晩中歌っても、翌朝はなんともなかったのに」
こう話すのは、50代の主婦Aさん。40代、50代に差しかかり、こんな“オバ声”に悩む人は多い。
なぜ年を取ると声が変わってしまうのか。『フケ声がいやなら「声筋(こえきん)」を鍛えなさい』(晶文社)の著者で、山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介さんが説明する。
「体の筋肉と同様、声の筋肉も30代から衰え始めます。声がかすれたり、詰まって聞き取りづらくなるのは、典型的な“声の老化”です。声の筋肉とは、のど仏の下あたりに左右1つずつある『声帯』の筋肉のこと。それぞれ『内喉頭(ないこうとう)筋』という筋肉が声帯を閉じたり開いたりしています(図1)。この『声筋』が衰えると、声帯をしっかり開け閉めできなくなり、老け声になるのです」(渡邊さん・以下同)
声筋の衰えで転びやすくなる、便秘になりやすい、肌荒れを引き起こす
声筋が衰えると、影響は声の変化だけにとどまらない。
「体の中のとても小さな筋肉ですが、あなどってはいけません。声筋の老化を放っておくと、力が入りにくくなったり、転びやすくなったり、最悪の場合、死に至ることもあるのです」
テニスのマリア・シャラポワ選手を思い浮かべるとわかりやすい。試合中に大きな声を出すのは、声帯をしっかり閉めて声を出した方が、力が入りやすくなるから。
逆に、声が出なくなると、力も出なくなる。力が入らないと、つまずいた時に踏ん張れずに転びやすくなり、力めないと便秘になりやすく、それが肌荒れも引き起こす。
「声帯の下には気管と肺があり、声帯はシャッターの役割を果たしています。声筋が弱って声帯が閉まらなくなると、食べ物が気管に入ってむせたり、最悪、食べ物が肺に入って誤嚥性(ごえいせい)肺炎を起こすこともあります」
自分の声筋が衰えているか確認してみよう
何も対策をしないでいると状況は悪くなる一方である。まずは自分の声筋が衰えているかどうかを確認することが先決だ。次のチェック方法を試してみよう。
【1】一息で何秒声を出し続けられるかを計測
リラックスして首や肩の力を抜き、口を閉じ鼻からたっぷり息を吸い、「あー」と一息で何秒声を出し続けられるかを計る。
女性の場合、20秒以上声を出し続けられたら問題なし。それ以下の場合は声筋が弱っている可能性がある。もし10秒以下なら、すぐに耳鼻咽喉科か声治療の専門医療機関を受診してほしい。
【2】裏声を何秒出し続けられるかを計測
【1】と同じ方法で、今度は「裏声」を何秒出せるかを計る。裏声は声帯をぴったり閉じないと出ないので、声筋の衰えを判断するバロメーターになる。5秒以上出せれば健康で、それ以下なら、声筋が老化している可能性がある。
1日5分、1週間で声に張りが
2つの方法を試して、声筋が衰えていても心配はいらない。
「声筋は、簡単な3つのストレッチで改善できます。下で紹介する『のどストレッチ』をきちんと毎日行えば、大体1週間ほどで、声の張りや音域の変化など効果を実感するでしょう。60代なら10才、50代なら5才くらい声が若返る可能性があります」
【10才若返る「のどストレッチ」】
(1)胸を広げる
胸の前で手を合わせ、手のひらが正面を向くまで後ろに徐々に広げていき、胸部を開く。その状態を5秒キープする。このストレッチ10回を1セットとして1日3セット行う。
(2)首のストレッチ
片方の手で頭の上を持ち、手の側へ頭を倒して反対側の首を伸ばして5秒キープ。逆も同様に行う。左右で1回と数え、10回を1セットとして1日3セット行う。
(3)舌のストレッチ
後ろで手を組み、腕をなるべく高く上げ、同時に口を開けて舌を出したり引っ込めたりを繰り返す。舌を出す時に「あー」と優しく発声する。これを10秒間、10回を1セットとして1日3セット行う。
まずは声帯を鍛える上記の3つの「のどストレッチ」を実践してほしい。 また、ストレッチ以外にも、声を若返らせるためには声帯のケアも欠かせない。
日常生活での声帯ケア法
「声帯は粘膜なので、目や唇のように濡れていないといい声は出ません。口呼吸している人はすぐにやめて、1日2Lを目標に、なるべく水を飲むようにしましょう。できればスチームも当てるとよいですね」
反対に、声帯を守るために、やってはいけないこともある。その1つが、過度なダイエットだ。
「ダイエットでも、筋トレや運動はよいのですが、過度な糖質制限や、食べないダイエットは筋肉が落ちるばかりで、声筋もやせてしまい、よいことはありません」
ほかにも、30分以上話し続けたり、のどに力を入れて話したり、習慣的に咳払いをするなどの行為も、声帯や声筋に負担をかけるのでNG。
健康でいることはもちろんのこと、自分の声は一生つきあっていくもの。声によって人の印象も大きく変わる。日頃から声のケアを行って、若々しい美声と華やぎのある生活を手に入れてほしい。
イラスト/藤井昌子
※女性セブン2019年10月24日号