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暮らし

医療介護連携を情報ツールで実現!使いやすいと評判の医療介護専用SNSとは?

 昨年亡くなった女優の樹木希林さんは自宅で最期を迎えたと伝えられているが、私たちが穏やかに自宅で終末期を過ごすためには、医療・介護連携をベースとした在宅医療の充実が不可欠だ。そこで注目したいのが、医療介護専用に開発された完全非公開型SNS「メディカルケアステーション」(エンブレース株式会社)。在宅医療・介護の現場で使い勝手のいい情報共有ツールとして評判が評判を呼び、いま着々とユーザーを増やしつつある。

一筋縄ではいかない「地域包括ケア」と「医療・介護連携」

 厚生労働省「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査」によると、自宅で最期を迎えたいと望む人は全体の約7割におよぶ。また、加速する高齢化を背景に、国としても2025年を目処に「地域包括ケアシステム」の構築を目指しており、医療・介護が病院や施設から在宅へとシフトしていく流れは必然でもある。

「地域包括ケアシステム」とは、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしい暮らしを続けられるように、医療・介護だけでなく住まいや生活の支援まで一体として提供されるケアシステムのことで、言葉で言うのは簡単だがその実現は容易ではない。現在、各自治体では知恵を絞って試行錯誤している真っ最中、といったところだ。

 行政と医療・介護事業者が足並みを揃えて取り組まないことには、一般市民のニーズに合った地域包括ケアを構築することは難しいだろう。ところが医療・介護の連携がなかなか進まないという現場の声は少なくない。

 大きな原因のひとつに、旧態依然とした手間のかかるコミュニケーション手段に依存している事業者が多い点が挙げられる。病院内やクリニック内では患者情報を電子カルテで管理していても、訪問看護ステーションやケアマネジャー、薬局とのやりとりは相変わらず電話、ファクス、手書きの連絡帳というところは珍しくない。地域包括ケアシステムにおけるICT(情報通信技術)の重要性が叫ばれて久しいが、現場ではまだ十分に生かされていないのが実情だ。こうしたコミュニケーション不全ともいえる状況に一石を投じているツールが「メディカルケアステーション(以下MCS)」だ。

いつでも、どこでも、簡単に情報共有ができるMCS

 MCSはパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に対応したクラウド型サービス。完全非公開型SNSなのでセキュリティ性が高く、患者や利用者の個人情報を守りつつ、いつでもどこでも必要な人・情報にアクセスすることができる。

 最大の特徴はチャット感覚でコミュニケーションができる操作の簡便さと、タイムライン形式(書き込みを時系列で表示する形式)の使いやすいインターフェース。これにより、デジタル機器に不慣れな人でも、気にせず情報共有が可能になる。管理者ユーザーが患者単位でグループ(患者グループ)を作成、その患者に関わる医療介護従事者などを招待することでアクセス制御を行い、参加者はタイムライン上で自由に情報のやりとりができる仕組みだ。

 たとえば在宅療養中の患者を訪問した看護師が「こんな状態だったので、こういう処置をしました」と書き込むと、医師、薬剤師、ケアマネ、ヘルパーなどその患者に関わる全ての多職種に“リアルタイムで共有”できる。チャット感覚なので一文だけの書き込みなども気兼ねなくできるし、逆に必要に応じて長文を書き込んでもいい。さらには画像ファイル、文書ファイル、動画なども添付できるため、スマホのカメラで撮影した患部の写真を共有することも手軽にできる。

 こうした情報のやりとりには、無料通話アプリを使い慣れた人には「当たり前」のことだが、情報ツールが電話、ファクス、連絡帳中心の医療介護の現場ではこれが難しい。電話はリアルタイムで伝わるが、診察中など状況によっては出られないことも多い。ファクスなら相手の状況は気にせず送れるが1対1でしかないので、複数の相手に伝えるには手間がかかる。ベッドサイドにある連絡帳ノートはどんなに詳細に記載しても、次回の訪問までは見られることがない。ちなみに一般的な訪問診療では医師の訪問は1か月に1〜2回なので、すぐに医師に伝えたい情報を連絡帳ノートに書き込んでも意味がないことがほとんどだ。

 そのため、MCSを導入した現場からは「電話が半分に減った」「ファクスがどこかに紛れてしまう不安がなくなった」「履歴が残るので安心」「伝達ミスが減った」といった声がしばしば聞かれる。

 MCSでは「患者グループ」のほか、自由にテーマを設定して参加者を招待する「自由グループ」も作成できるので、地域の多職種グループで情報交換をするなど幅広い用途に活用することができる。

医療介護者と患者・家族が直接繋がることで医療介護の質がアップ

 在宅医療を支える多職種チームの連携がスムーズになるほか、MCSは総合病院と地域の在宅医の連携や、医師会や行政を巻き込んだチームづくりなど、さまざまなケースで活用できる。こうした連携が医療の質の向上に繋がり、ひいては患者のメリットになるのだが、MCSは医療介護者と患者・家族が直接繋がれるという点で、より患者にメリットをもたらしているという実感がある。

 先に紹介した「患者グループ」は、医療介護従事者のみが参加できる「医療・介護側タイムライン」、患者のプロフィール情報などを共有できる「患者詳細ページ」、患者本人や家族も参加できる「患者側タイムライン」から構成されている。この「患者側タイムライン」を使えば、従来は連絡を取りづらかった医師、看護師、介護スタッフらと、患者や家族が簡単にコミュニケーションを図ることができる。患者や家族が納得のいく医療を受けるためには、医療介護従事者への信頼が不可欠で、そのためにはコミュニケーションが必要なはずだが、患者側が医師に直接電話やメールで連絡を取るのは実はハードルが高い。MCSによって、この心理的なハードルが下げられるのだ。

 実際にMCSを使った患者や家族の声の一部を紹介しよう。

「些細なこととはわかっていても、知らないと困ることは多々あります。でも、家族としては、いちいち電話をしてクレーマーと思われるのは嫌なのです。その点、MCSがあれば先生とも直接コミュニケーションが取れるので本当に安心です」(鹿児島県・Kさん/サ高住利用者の家族)

「口で説明しようと思っていても忘れることがあるけれど、MCSなら自分の思ったことを全部書き込んでおくと記録に残るからいい。言葉で伝えにくいことは看護師さんに写真を撮ってもらって載せます」(福岡県・Aさん/在宅療養中の患者)

「以前の先生の場合は、2週間に1回しか会えないし、看護師さんに電話をしても先生までにはなかなか伝わりませんでした。いまはMCSがあるので確実に伝えられます」(福岡県・Bさん/在宅療養中の患者)

開発の原点は終末期患者を支えたショートメール

 医療介護現場のために開発されたICTツールは多々あるが、コミュニケーションを特に重視しているという点でMCSはほかと一線を画している。これはMCSの生みの親であるエンブレース株式会社の創業者・伊東学氏の医療への思いと無関係ではないだろう。IT企業のエンジニアであった伊東氏が医療プラットフォームの提供を志したのは、末期がん患者の最期をショートメールのやりとりによって支えていたという医療関係者のエピソードに、深く心を打たれたという。

 さて、気になる費用面だが、MCSは医療・介護現場のコミュニケーションに必要な機能を無料で提供している(2019年8月30日現在)。デジタル機器に不慣れなユーザーにも使いやすい上にコストがかからないとあって、従来はICTツール導入に二の足を踏んでいた介護事業所でも「ちょっと試してみよう」と利用を始めるケースが少なくないという。現在、全国200を超える医師会で採用されているが、今後のさらなる広がりが期待できる。

※MCSの具体的な活用例をより多くの医療介護従事者に知ってもらうため、エンブレース株式会社ではウェブサイト上で事例集『メディカルケアポスト』を公開している。

【データ】

「メディカルケアステーション」(エンブレース株式会社)
URL:https://www.medical-care.net/html/

取材・文/ノーション

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