【世界の介護】多様な国籍の入居者に対応するデンマークの老人ホーム
居住スペース「アネモネ・ユニット」で暮らす入居5年目のハンヌ・ベックさんは、ひとりで気ままに過ごす時間を堪能する。
「足を悪くして、2階建ての住居で病気の主人を看病するのがつらくなり入居しました」(ベックさん)
この施設への入居は、住んでいた自治体(コミューン)が提案してくれたそう。モダンな家具や食器は自宅から持って来た。
「1年前に主人が亡くなり、いまは昔からの友人とフランス語を読む会を開いたり、iPadで家族にメールを打ったりして過ごしています。自分の活動が忙しいから、こちらのアクティビティ(施設のイベント)には気が向いたときに参加するくらいよ」(ベックさん)
多国籍のスタッフとの会話が楽しみ
一方、入居して6年目のペア・ルドゥさんは、居室を訪問するスタッフとの会話が楽しみだという。
「ここのスタッフは多国籍。だから昔、僕が旅をした国で生まれたスタッフがいると、お互いにその国の思い出話をして盛り上がるんだ」
ルドゥさんの居室は移動リフト付き。デンマークでは介護補助機器が必要になると、国が全額負担してくれる。
ペダー・リュッケ・センターにはアネモネ・ユニットの他に5つのユニットがあり、入居者は152人、デイケアサービス利用者は180人。それに対して、スタッフは140人。2人の医師が駐在する他、看護師、理学・作業療法士。不定期で歯科医、美容師なども来所する。
入居費用は、居室料、光熱費、3食とおやつ、消耗品費がひとつのパッケージとなって、月額約1万2000クローネ(約20万1600円)。これはデンマークの平均的な毎月の年金支給額と同額程度。ただし、支払い能力がない場合は自治体が負担する。
センター1階のカフェではフォルケホイスコーレ(市民大学)を開催している。外部も含めて60歳以上の320人の“学生”が在籍する。プログラムは、哲学や歴史、パソコン教室など55種類。デイケア用のアクティビティセンターでは伴侶を失くした人の会や、民族ごとのランチ会など、セラピー的な内容の30種類のプログラムが開催されるそうだ。