注目の介護予防法、石川遼もトレーニングにとりいれる「ノルディックウォーキング」
認知症リスクを高める閉じこもりの一因、尿もれや、認知症予防策の研究に取り組むユニ・チャーム(本社:東京都港区)が提案する『ソーシャル・ウォーキング』。これは、有酸素運動であるウォーキングと社会参加を融合した認知症予防プログラムで、体験会(4月15日 於:国営昭和記念公園)では、2本のポールを使って歩く「ノルディック・ウォーキング」(ポール・ウォーキング)が行われた。バランスよく全身の筋肉を鍛えられ、介護予防法としても注目のウォーキングスタイルだ。
「ノルディックウォーキング」とは、もともとクロスカントリースキーの選手が夏季のトレーニングとして始めたもので、スキーのストックのような専用ポールを2本両手で持ち、地面を突きながら歩く。北欧ではもっとも簡単で効率のよい全身運動としてアスリートのみならず多くの人に親しまれ、最近は日本でも注目されている。
『ソーシャル・ウォーキング』体験会で指導にあたった全日本ノルディックウォーキング連盟公認主席指導員の芝田竜文さんに聞いた。
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普通のウォーキングより消費エネルギーは20%、運動効果は10%アップ!
「ノルディックウォーキングは自分の足とポール2本の4点で支えるので、支持基底面(重心を動かせる範囲)が大きくなり、通常の歩行よりバランスよく安定して歩けるのが特徴です。安定しているので自然と歩幅が広くなり、ポールを突くとリズムがつきやすく歩くスピードも速くなるのです。
また普通のウォーキングでは下半身の筋肉しか使いませんが、ノルディックウォーキングは全身の90%近い筋肉を使います。かかとからつま先への体重移動がスムーズになるため足の指の握力までしっかり鍛えられ、美しいウォーキングスタイルになります。その結果、消費エネルギーは20%、運動効果は10%もアップ。アスリートの筋力トレーニングとして、ファッションモデルのウォーキングフォーム矯正や子供の歩育プログラムとして、またプロゴルファーの石川遼選手もトレーニングに取り入れているそうです」(柴田さん、以下「」内同)
歩幅広めで速歩きといえば、まさに認知症予防の『ソーシャル・ウォーキング』の目標そのもの。ポールが杖のような役割を果たし、転倒のリスクも減るので、高齢者のリハビリや筋トレにも取り入れられている。歩くための筋肉を鍛えることで骨盤底筋も鍛えられ、高齢者の外出を阻む尿もれ対策にもなるという。
コツをつかむと誰でも簡単歩くことが楽しくなるノルディックウォーキング
初心者向けのノルディックウォーキングスタイルは、踏み出した足の土踏まずからかかかとあたりに、足と反対側の手に持ったポールをつく。ポールが体の前方に着地するのでより安定感がある。
『ソーシャル・ウォーキング』体験会では、平均年齢68才(最高齢84才)の男女70人が、ごく簡単なレクチャーと準備体操の後、美しい花々に彩られた国営昭和記念公園の中を歩き始めた。ノルディックウォーキングはまったく初めてという参加者が多かったが、失礼ながら驚くほどスムーズに、しかも驚くほど速いスピードで歩行している。
「歩き方を頭で考えすぎると逆に混乱して、右足と右手が同時に前に出てしまうようなこともありますね(笑い)。でも基本はいつもやっている歩行ですし、ポールによって歩行が安定しますから、『ソーシャル・ウォーキング』に則っておしゃべりしながら、花を愛でながら歩いているうちにコツが身につきます。リズミカルに歩くことがどんどん楽しくなってくるでしょう」
同行した昭和記念公園のボランティアガイドさんが随所でしてくれる植物の説明などを聞き、ビューポイントで水分補給をしながら、約3㎞のコースを1時間ほどかけて完歩。全身運動を行った後としては疲労の表情が少なく、一様にイキイキと壮快な笑顔だった。
家族3世代で楽しめる!湾曲した背筋が伸びてきた人も
「楽に歩けるので、家族3世代などで楽しめるのもノルディックウォーキングの魅力です。私の94才になる祖母は、背骨が湾曲して床に額をこするような姿勢でしたが、子供用のポールでノルディックウォーキングを始めたところだんだん背筋が伸びてきました」(芝田さん)
健康維持や介護予防策として、ノルディックウォーキングの講習会などを行う自治体や団体も全国に増えてきているという。スポーツが苦手、筋トレはハードルが高いという人も気軽にチャレンジしてみては?
撮影/浅野剛 取材・文/斉藤直子