認知症予防のエンタメ!「若返りリトミック」人気の秘密
「若返りリトミック」3つの柱
若返りリトミックには3つの柱がある。1つめは「頭の若返り」だ。
「脳の神経のうち、60%が手と顔につながっていると言われています。大きな声で歌って顔の筋肉を動かしたり、音楽に合わせて指先の運動をしたりすることで、脳の血流や酸素の供給量が増え、脳の神経が活性化するのです」(松島さん)
2つめは「体の若返り」。
歌いながらのほうが、楽しく体を動かせる。また、歌うことで自然に深い呼吸ができるので、運動効果がさらに高まるという。
「頭と体の若返りでは、童謡や唱歌など、歌詞を自然に口ずさめるような曲や“拍”がはっきりした曲を使います。また、『春が来た』『紅葉』などの季節感のある歌も適しています。外に出ることが少ない方も、こうした歌を通して外の風景を想像できますから」(松島さん)
3つめの柱は「心の若返り」。
懐かしい音楽をきっかけに参加者と会話をすることで、若き日を回想させ、心をリフレッシュする。精神的にも穏やかになるという。
「心の若返りでは、参加者の方の年代や季節に合わせて曲を選びます。私たちが選ぶだけでなく、リクエスト曲を取り入れることもありますよ」(松島さん)
さらに、濱田さんと松島さんが大切にしているのが“笑い”だ。
若返りリトミック講座の前口上では、
「笑うのは健康にいいと言われていて、笑いの塾まであるんですって。口角をぐっとあげるだけでも効果があるのよ。だからみなさん、今日は面白くなくても笑って!」
と、濱田さんが参加者を毎回笑わせる。笑いは単に場を盛り上げるだけではなく、意味があるとのこと。
「笑うと心が元気になりますし、免疫力も高くなって病気にかかりにくくなります。なぜ笑うといいかという理由を説明することも、脳への刺激になるんです」(松島さん)
元音楽教師コンビならではのテクニックが満載
濱田さんと松島さんが指導する若返りリトミックの講座を取材させてもらった。濱田さんはおもにトークと運動指導、松島さんがピアノ演奏を担当する。
講座は、元気いっぱいの自己紹介の後、1曲目は『丘を越えて』の合唱から始まった。
「最初と最後の曲は、どの講座でも同じにしているんです。定期的に講座を開いている施設では『丘を越えて』を聴くと、みなさん『濱ちゃんと松ちゃんがきたな』と、スイッチが入るんですよ。最後は『ふるさと』の合唱で締めくくることにしています」(濱田さん)
1番を歌い終えると、濱田さんはホワイトボードに貼った「歌詞幕」をめくる。自分の体で歌詞が隠れないよう、濱田さんは立ち位置にも気を配る。松島さんは、参加者が気持ちよく歌い出せるタイミングを計るため、間奏をくり返して弾き続ける工夫をしていた。
「これが生演奏のいいところ! CDのような録音した音源だと、音楽に人間が合わせなければならないけれど、ピアノの生演奏なら、状況に合わせてテンポや間合いを変えられます。
運動をするときも、ゆっくり肩を回してほしいときはゆったりとしたメロディで、勢いよく、ももを叩くときなどはポンポンと弾むように弾くなど、ピアノが動きをさりげなくリードするんです」(濱田さん)
講座に参加して気づいたのは、どの歌も思ったよりもずっと歌いやすいこと。それにも音楽の専門家ならではの仕掛けがあった。