ICTを活用し健康管理を! 住民の意識を変えた小豆島の取り組みとは
「導入当初、テレビ電話端末などの操作は、高齢の方にとっては難しいかもしれないという不安がありましたが、実際には操作は非常に簡単で、スムーズに利用できました」(山下さん)
ログインは活動量計をレシーバーにかざすだけ、データ転送の作業もシンプルだったため、職員の助言ですぐに使えるようになったという。また、利用者が相互に教えあう姿も見られたとのこと。
同町役場高齢者福祉課の保健師・坂東奈保子さんは、こう話す。
「テレビ電話で、みなさんのお顔を見て、その日の調子をうかがうことができるのはいいですね。保健師の活動を効率よく行うことができるようになったのは、大きかったと思います。戸別訪問では1日に3~4人が限度。でも、システム導入後は、1日に10~15人ぐらいまでの健康相談が可能になりました」
7割の人の高血圧が改善した!
最初は2か所の公民館のみで導入されたシステムだったが、2015年には町内11か所すべての公民館への導入が完了している。
テレビ電話での健康相談は予約制で、一人15分くらい、利用する料金は1か月500円だ。
「テレビ電話では、睡眠時間や食事内容など、日常生活の様子を聞いています。お顔を見ながらの会話なので、お互いに安心感が大きいと思います。継続的にデータが登録されるので、成果が目に見えてわかるのが励みになると利用者の方はおっしゃっていますね。また活動量計を持っていると、歩こうという意識が高くなり、公民館に積極的に足を運ぶ方が多くなりました」(小豆島町役場高齢者福祉課の保健師・橋本彩沙さん)
歩行はもっとも手軽な有酸素運動で、健康増進に役立つことは周知の事実。同町が調べたところ、高血圧と診断されていた利用者の69%が基準値に向かって推移していたという。
利用者からも「それまで1日7000~8000歩しか歩いていなかったけれど、システムが導入されてからは、1万歩以上歩くようになりました。やはり保健師さんにほめてもらいながら実行すると、目標が高く持てます。1年後には降圧剤の服用をやめてもいいと医師からいわれました」(77歳男性)、「活動量計を持って歩くと、実際の数字がすぐにわかるのがうれしい。保健師さんたちと気軽に話せる機会も増えて健康意識が高まりました」(80歳女性)と、評判も上々だ。
同町保健師の坂東奈保子さんは、システム導入からの手ごたえについてこう話す。
「システムを導入したことで、利用者の方たちの健康意識が高まったのが、最大のメリットです。血圧以外の数値でも健康効果がわかるように、統計を取っていきたいと思っています」
さらに、住民が公民館に集まることで地域の交流が増えた。高齢者の引きこもりや孤独は、全国的な問題となっているが、小豆島町ではこのシステムが動機づけとなってコミュニティーが再構築され、こうした問題も減少した。
小豆島の『オリーブヘルスケアシステム』は、ICTの活用で島の住民の健康に対する意識を飛躍的に高め、数値まで改善させた。そして、同時に健康管理に大切な、保健師とのコミュニケーションの重要性を再認識させてくれたことも注目すべき点だ。それまでは病気になってから初めて保健師に健康相談をしていた住民が、日常的に保健師にかかわり予防措置を取ることができるようになったことは、町全体の健康対策としての意義が大きいといえる。
今後は離島だけでなく、過疎の山村などにおいて、同様な取り組みがされるようになるかもしれない。小豆島の取り組みの成功例に学ぶところは大きい。
取材・文/介護ポストセブン編集部