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健康

うがいと歯磨きの重要性 命を繋ぐ「口腔ケア」<第2回>

抵抗力の弱った高齢者にとって、口腔内の雑菌は命取りに

 体力や抵抗力の衰えている高齢者にとって、口の中を不衛生にすることは非常に危険だ。食べかすが口腔内に残っていれば、知らぬ間に誤嚥性肺炎を起こすこともある。また、口を開けたままになりがちなため、口呼吸によってウイルスや菌が口腔内に入り込み、感染症にかかるリスクも高くなる。

 口腔内の清潔を保つためには、菌を常在させないことと、唾液をたくさん分泌させて菌に対抗することが重要。そのためには、ポイントを抑えた歯磨きやうがいとともに、口腔内を潤わせるためのちょっとしたテクニックがあると、ケアマネジャーであり歯科衛生士の二島弘枝さんは言う。 毎日の歯磨きの中で、効率よく口腔のケアを続けるための、ポイントとアイデアについて二島さんにうかがった。

写真/アフロ

 * * *

歯磨きタイムで「清潔」「機能維持・回復」「潤い」

 第1回でもお話した通り、口腔のケアには「清潔を保つ」ことと「口腔の機能を維持する」というふたつの大きな目的があります。ですから、歯磨きやうがいで口腔内をきれいにしながら、口周りや舌を動かすトレーニングもできれば、口腔のケアとしては一石二鳥になります。

 さらに、唾液を分泌する機能の衰えを回復して、潤った口の中、つまり免疫力の高い環境をつくることも、歯磨きタイムを利用して行うことができます。言ってみれば、ちょっとした工夫次第で、歯磨きやうがいには一石三鳥の効果があるのです。

【10ブクブク×6回のブクブクゆすぎが大切】

 歯磨きの回数は、できれば毎食後が理想です。洗面所まで「歩く」または「車いすで移動する」、「歯磨きの準備をする」といった一連の動作は、ルーティンの活動であっても立派な運動やリハビリになります。ベッドから降りられない方の場合も、体を起こし、鏡を用意して、歯磨きをする環境をつくってあげてください。

 毎食後の歯磨きが介助する人の負担になるようであれば、朝、昼の食後は口をゆすぐだけでも構いません。

 その際には、以下を心がけてください。

コップに入った水を少なめに口に含む。
1回につき10回ブクブクと口を動かし、水を変えて6回行うようにします。
●上唇と上の前歯の隙間、下唇と下の前歯の隙間は、汚れのたまりやすい場所なので、意識してゆすぐ。

「6回も?」と驚かれることがあるのですが、このうがいは歯ブラシを使用した後でも同じように行ってください。実は、健康な若い方であっても、歯磨き後には丁寧なブクブクゆすぎが必要です。せっかく汚れを掻き出しても、汚れが口腔内に残っていれば再び歯や口腔内の粘膜にくっついてしまうことになりからです。 朝と昼をブクブクゆすぎだけで済ませた場合、夜はその分、時間をかけてしっかり磨くように心がけてください。

【毛は柔らかめ、グリップにはタオルを巻く】

 使用する道具ですが、介護用や高齢者用といった高価なものを揃える必要はありません。選び方のポイントを抑えて、ちょっとした工夫をプラスすればOKです。

● 毛の束が縦に2~3列のスリムタイプで、できるだけヘッドが小さく、毛は柔らかめ~ふつうを選ぶ(自分で磨く高齢者の場合は、少し大きめのヘッドのものを選択し、後で仕上げ磨きを行う方法もある)。

●握りにくい場合はグリップにハンドタオルを巻いて持ちやすくする。
● 歯磨き粉と洗口液は、基本的に使わなくてよい。
● 自分で磨く人の歯間ブラシはゴム製が使いやすい。   

おすすめの歯間ブラシを購入する!

● 電動歯ブラシは爪のキワで電動の力の強さを確認、自分に合ったものを購入する。

 一般的に、若い方も高齢者も、歯磨きでは力を入れすぎる傾向が見受けられます。硬い毛の歯ブラシを歯肉にギュッと押し付けると、かえって歯肉を痛めてしまうことになりますから、柔らかめを選んでください。

 また、高齢者の方がご自身で磨く場合には、大きなヘッドの歯ブラシを選んであげるといいでしょう。短時間で「磨いた!」という達成感が得られるからです。歯ブラシを持てる限り歯磨きを続けるためにも、工夫したいポイントです。その場合には、磨き方について声を掛けて誘導してあげることや、仕上げ磨き、最終チェックは介助者が行う必要があります。

 歯ブラシのグリップは握力の弱った方にとっては、細くて握りにくいものです。高齢者用のグリップキャップも市販されていますが、小さめのハンドタオルをグリップに巻きつけ、輪ゴムで留める工夫をするだけでも、十分握りやすいグリップに変身させることができます。 歯磨き粉は基本的に使用しなくてかまいません。誤って飲み込み、誤飲性肺炎を起こすリスクがあるからです。

 歯磨き粉を使わないと、茶渋などの汚れが歯にこびりつき、茶色っぽく変色してしまうことがありますが、月に一度程度、歯科衛生士に検診とお掃除をお願いして、その際に歯磨き粉を使ってもらえば十分です。 洗口液は汚れを取る力や殺菌の効果は期待できません。さっぱりしたい時は利用してもかまいませんが、誤嚥する恐れのある方は使わないほうが賢明です。

 歯ブラシを細かく動かすのが困難な方には、電動音波歯ブラシもおすすめです。力をいれず、歯に当てるだけで汚れを取ることができます。電動歯ブラシから受ける刺激は、人によって感じ方が違います。大型のドラッグストアやスーパーなどの試供品で、刺激の強さを確かめてから購入すると失敗が少ないでしょう。手の指の爪と皮膚のキワで感じる感覚は、歯と歯肉の間で感じるものと同程度です。

 ですから、試供品を爪の周囲に当ててみて、痛みを感じず心地良いものを選ぶようにしてください。

 自分の歯がすべて残っている方であっても、高齢になると歯と歯の隙間が開いてきます。この部分に汚れが溜まると、口臭や、虫歯、歯周病の原因になりますから、歯間ブラシはとても重要なケアです。高齢の方が自身で使用する場合、金属を使った歯間ブラシは、力加減が難しく歯肉を傷つける恐れがあると共に針金が折れて誤嚥する危険性があるため、ゴム製のものがおすすめです。

 続いて、実際の磨きかたです。

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