夏バテは秋の体調不良を招く!高齢者の栄養補給におすすめ火を使わない簡単レシピ【管理栄養士解説】
暑さで食欲が低下、火を使う料理も億劫…。「夏場に食事量が減ってしまうと夏バテを引き起こし、秋にガクンと体調が悪化する高齢者が多いんです」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。夏の食事の摂り方や高齢者の栄養補給におすすめレシピを教えてくれた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
夏バテが秋の体調不良を招く
デイサービス利用者の栄養チェックをしていると、夏の時期はなんとか乗り切れていた高齢者も9月頃に体重が、がくんと低下して体調を崩される方が毎年います。
高齢者は夏バテをきっかけに食欲が低下して体調を崩してしまうと回復が難しくなる場合も多いので「予防」が大切です。夏を乗り切り、秋にも元気にいるために、夏場の食生活が鍵になるのです。
食欲が落ちる夏は「ちょこちょこ栄養補給」
1日3食が基本ですが、どうしても食事がとれないときも奴豆腐やミニトマト、枝豆、納豆、果物、ヨーグルトなど単品の食材や栄養ドリンクでもよいので食べられるときにちょこちょこ食べたり飲んだりしながら栄養補給をすることが大切です。
「量より質」1日1食は温かいものを
食事量が落ちてきている時は「量より質を意識する」ことが大切です。
さっぱりした冷たいものばかりだと胃腸機能の低下を招きやすいので、1日1食は温かいスープやみそ汁、煮物など取り入れて胃腸を冷やしすぎないことも食欲低下を予防するうえで大切です。
料理をすると部屋の温度は上がる
環境省は夏場の室温は28℃にすることを推奨しています。これはエアコンの設定温度ではなく「室温」です。
猛暑の7月、8月の室温を28℃にするには、エアコンの設定温度はもう少し下げる必要があるでしょう。エアコンの設定温度を基準にするのではなく、室内の温度のチェックを。
とくに料理で火を使っていると、室温は上がるといわれていますので注意が必要です。
夏におすすめ火を使わず栄養価の高いレシピ2選
火を使わない料理でもしっかり栄養補給できる食事はあります。夏バテを防ぎ、秋にも元気でいられるための栄養たっぷりレシピをご紹介します。
山形名物「ダシ」は夏の栄養チャージに
野菜を生のまま手軽に食べられる夏の山形県の定番郷土料理「ダシ」に納豆を合わせて栄養価をUP!ごはんにかけても、そうめんや奴豆腐にのせても食が進みます。
水分を多く含む夏野菜は、汗をかく夏場の水分補給にも適しています。夏野菜には体内で作ることができない「ミネラル」が豊富に含まれています。
ミネラルは、夏はとくに汗とともに失われやすいので必要量も増加します。複数の夏野菜を使ったダシは、ミネラル豊富で様々な栄養素を少しずつ補うことができます。食欲が落ちてきた夏の時期にもさっぱりと食べられ、1品で栄養補給にもなります。
ダシ納豆
ミネラルたっぷりのダシに納豆を合わせて。食感もよくサラリと食べられます。
<材料>※4人分
なす…小1個
きゅうり…1本
みょうが…1本
オクラ…1本
青じそ…4枚
しょうが(すりおろし)…少々
白だし…大さじ1
めんつゆ(2倍濃縮)…小さじ1
ひきわり納豆…1パック
<作り方>
【1】野菜をよく洗い、水気を切ったら全部みじん切りにする。
【2】ナスは、一度水に入れてアクを抜き、水分を切る。
【3】切った野菜と材料を深めのボールにすべて入れてよく混ぜる。
【4】ねばりが出てまとまりができてきたら完成。
お好みで、ご飯やそうめん、奴豆腐に乗せて食べましょう。
「サバ缶」は高齢者におすすめの優秀食材
暑い日はキッチンで火を扱うのも億劫になる日も。こちらは炊飯器で調理できる簡単で栄養豊富な炊き込みご飯です。
サバ缶は、手軽に購入でき、日持ちもするので買い置きしておくと便利です。面倒な下処理も不要で丸ごと食べられるので、サバの栄養をまるごと摂ることができます。
サバには、高齢者が不足しやすいたんぱく質や、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸も豊富。不飽和脂肪酸は、血液サラサラ効果や脳の認知機能にも良い影響があるとされています。骨ごと食べられるサバ缶はカルシウムの補給にもなり、高齢者におすすめの食材です。
サバ缶の簡単炊き込みご飯
サバ缶を丸ごと使った栄養満点の炊き込みご飯。
<材料>※4人分。
・鯖の味噌煮缶…1缶
・米…2合
・長ネギ…1本
・しょうが…1かけ
・みりん…大さじ2
・酒…大さじ2
・しょうゆ…大さじ2
<作り方>
【1】しょうがは千切りにする。
【2】米を洗って水切りをした後、炊飯釜へ入れる。
【3】さばの味噌煮缶を汁ごと加える。
【4】調味料と合わせて2合の線まで加水する。
【5】生姜を上から散らす
【6】白米モードで炊飯する。
【7】炊きあがったらサバをほぐすように混ぜる。
【8】器に盛り、お好みでねぎや生姜を飾って完成。
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高齢者の夏の栄養不足の蓄積は、秋の不調につながりやすいんです。回復も遅くなりがちなので今の時期からしっかり対策して予防に努めましょう。
食欲が落ちてしまったときは、「量より質」を意識して、少量でも栄養価の高いものを見極めながら摂ることも必要です。特に低栄養気味のかたほど、一度体重が落ちてしまうと戻すことが難しいので夏場に体重を大きく落とさないようにしたいものです。高齢者ご本人、そしてサポートをする人も、夏場の食事量や体重など定期的に確認して欲しいと思います。