高齢者や介護中の家庭は特に注意!夏バテを予防する栄養摂取の基本を管理栄養士が指南「1日1食は温かいものを」
高齢者や介護が必要なかたにとって夏場の栄養摂取は重要なテーマだ。夏バテを予防するために、どんな対策をすればいいのか。食事の摂り方や栄養素、生活習慣について、デイサービスなどで高齢者に食事指導を行っている管理栄養士の川鍋仁美さんにアドバイスいただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
高齢者のための夏バテ予防対策
今年も猛暑が続いています。気象庁から、沖縄をのぞく日本全域に「高温に関する早期天気情報」として、7月の時期としては10年に一度程度しか起きないような『著しい高温』の可能性があると発表されました。
高齢者は、暑さに対しての免疫力、回復力も低下しています。熱中症予防はしっかりしているけれど「なんとなく食欲が無い、体がだるい…」。それは夏バテのサインかもしれません。そうなる前に「予防」が大切です。
夏バテ予防のための高齢者におすすめの食事法やレシピをご紹介します。
夏バテによる栄養不足で熱中症のリスクも
夏バテは室内外の温度差による自律神経の乱れや水分・栄養不足などから起こりやすくなります。夏の暑さが続くとどの世代の方も夏バテを感じることはありますが、高齢者の場合は特に症状が悪化しやすく、回復にも時間がかかりやすいため注意が必要です。
高齢者が夏バテをきっかけに食事量が減少すると、水分不足から熱中症になりやすくなるのはもちろんですが、栄養不足からフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)やサルコペニア(筋肉が減り身体の機能が低下した状態)に陥りやすくなってしまいます。
高齢者にとって夏バテによる食欲低下・体力低下は介護度にも係わるリスクを伴うことを意識しましょう。
夏の食事はとくに「栄養面」に気を配りましょう
夏場は暑いので料理すること自体が億劫になったり、食欲が落ちてしまったりして食事回数を減らしてしまうかたも多いです。食事回数が減ってしまうとその分摂取できる水分も栄養も減ってしまうため夏バテを引き起こしやすくなります。
特に、ビタミンB1、ビタミンCは疲労回復に有効な栄養素で夏場はとくに消費量が増えて不足しやすくなるといわれています。またさっぱりしたものや麺類が多くなるとたんぱく質も不足しやすくなります。
それぞれの栄養素の摂り方を見直してみましょう。
たんぱく質「筋力の維持に欠かせない」
食事量の少ない高齢者は特に不足しやすく、不足すると体内のたんぱく質が分解されてしまうため筋肉量の減少につながります。1食に1品はたんぱく質を多く含む食材を意識して取り入れましょう。肉、魚、大豆製品、卵、乳製品に多く含まれています。
ビタミンB1「夏バテ予防に積極的に摂りたい」
糖質を効率よく活動エネルギーに変換するために必要な栄養素です。不足してしまうと、せっかく食事で摂った糖質がスムーズにエネルギーとして変換されず、体内に疲労物質が蓄積して疲れやすさや食欲低下を招いてしまいます。ビタミンB1は、うなぎ、豚肉、大豆製品、たまご、アボガドに多く含まれています。
ビタミンB1の吸収を良くするアリシン(にんにく、にら、ネギに多い)と一緒にとるとより効果的です。
ビタミンC「紫外線で失われがち」
紫外線や暑さによるストレスから体を守る抗酸化作用があります。ストレスが多いとビタミンCの消費量も増えるため、夏場は積極的にとりたいビタミンです。
ビタミンCは、果物や野菜全般に多く含まれています。人の身体ではビタミンCは作ることができないので、食事やサプリメントから摂る必要があります。ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱いので調理時に失われやすい性質があります。食事から摂る場合も「生食」がおすすめです。
生食が難しい場合は、じゃがいもやさつまいもはビタミンCがでんぷんに保護されていて加熱調理後にもほとんど分解されずに残るので、煮物やスープなどで取り入れるとよいでしょう。
さつまいものポタージュでビタミン補給も
熱に強いビタミンCが豊富なさつまいものポータジュ。冷製でもよいですが、エアコンで冷えた体を労わるために温めて摂るのがおすすめ。じゃがいもでもアレンジも可能です。
<材料>※4人分
・さつまいも…大1個300g
・玉ねぎ…1/4個
・バター…10g
・水…250ml
・牛乳…400ml
・スープの素…1個
・塩コショウ…適宜
<作り方>
【1】たまねぎは薄いくし切りにする。さつまいもは皮を向いて、一口大に切り水でさっと洗う。
【2】鍋にバターを入れて玉ねぎを弱火で炒め、さつまいもを加えて軽く火を入れる。
【3】水とコンソメを加えてさつまいもが柔らかくなるまで15分ほど煮る。
【4】さつまいもが柔らかくなったら火を止め、粗熱をとる。
【5】【4】をミキサーにかけて滑らかにする。
【6】【5】を鍋に移し、牛乳を加えて弱火でよく混ぜる。
【7】塩コショウで味を調えたら完成。
エアコンの使い方に注意しましょう
バランスの取れた食事のほか、十分な睡眠は夏バテ予防には必要不可欠です。とくに注意すべきなのは、エアコンの使い方。たとえば就寝時、タイマーでエアコンが切れる設定にしているかたもいらっしゃると思います。しかしエアコンが切れた後、熱帯夜や明け方に気温が高い日もありますし、体温で布団の中の温度は上がっているかもしれません。
また、エアコンの温度設定は適切でも実際には日当たりが良く十分に温度が下がっていないことも。逆に直接エアコンの風が当たっていて体が冷えすぎる場合も考えられます。エアコンの設定温度だけでなく、実際の室内温度や利用時間、配置も含め改めて確認してみましょう。
適度に体を動かしましょう
運動に関しては、身体の状態にもよりますが、日常的に無理のない範囲で運動やストレッチを行うことで体力低下を防ぎ、良質な睡眠にもつながりやすいでしょう。
高齢者や介護が必要なかたがいらっしゃるご家庭はとくに食事や生活習慣に注意して、夏を乗り切っていきたいですね。