60歳を過ぎたら面倒な人間関係を見直す!夫婦関係は「独立国家同士が貿易をすると考える」、介護が必要な親との関係は「共倒れの回避」を大切に
墓じまいや年賀状じまいなど、面倒ごとを減らすために行われる「○○じまい」。人間関係においても「○○じまい」を取り入れることをすすめているのが、『60歳を過ぎたら面倒ごとの9割は手放す』(アスコム)を上梓した、真言宗 密蔵院住職の名取芳彦さん。60歳を過ぎたら参考にしたい、人間関係の面倒ごとを減らす「しまい方」を詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
真言宗 密蔵院住職・名取芳彦さん
なとり・ほうげん。大正大学米英文学科卒業後、英語教師を経て、東京都江戸川区鹿骨 元結不動密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長、豊山流大師講(ご詠歌)詠監。密蔵院でご詠歌・写仏・読経・法話の会などを主催し、仏教の教えをわかりやすく説く切り口が好評を博す。著書に『60歳を過ぎたら面倒ごとの9割は手放す』(アスコム)など。
夫婦が目指すべきはお互いの主権を認める独立国家のような関係性
人間関係の面倒ごとを減らすために、まず見直したいのがパートナーとの関係性。夫婦ごとにその関係性はさまざまだが、よい関係性の土台となるのが、「自分だけ働いてきた」、「自分だけ家事をしてきた」という自己犠牲の思いを捨て、「あなたのおかげで働けた」、「家事に専念できた」という感謝の気持ちで過ごすことだ。
「夫婦のどちらかが相手に依存したり、強権的になったりしないで、それぞれが相手の主権を認める独立国家のような関係を目指すこと、その独立国家同士が貿易をすると考えること、それが私の考える夫婦じまいです」(名取さん・以下同)
さらに、同じ時間、同じ空間を共有する努力を怠らないことも重要だという。「あなたはあなた、私は私」と割りきってしまうと、やさしさが発生しなくなってしまうためだ。
「葬儀の現場にいる坊主として、仲のよい夫婦ほど、どちらかが亡くなったときの喪失感が早く解消することを実感しています。今の夫婦関係を少し変化させつつ、相手をおもんばかった、仲のよい夫婦でいたいものですね」
子どもにも自らの経験で正攻法をつかむ経験をさせる
次に、見直しておきたいのが、子どもとの関係性だ。特に注意したいのが、自分のなかにある「正攻法」をいつも子どもにとらせようとしていないかどうかだ。
親は子どもより多くの経験をしてきているため、自分のなかに「正攻法」がある人も多いが、その方法だけが正しいとは限らない。結果的に同じやり方になるのだとしても、親が自分の正攻法を自らの経験でつかんだように、子どもが自らの経験で自分の正攻法にたどり着くというその過程を尊重し、自立できるようにしてあげるのが良いと名取さんは言う。
「頼りにしてくれる子どもがいる、そして、頼りにできる親がいるのは、とてもすてきなことです。問題なのは、親離れができない、子離れができないという共依存、あるいは”強依存”です。互いが自立し、自由になれるように、強依存のつながりを徐々にほぐしていきたいものです」
介護が必要な親との関係性は「共倒れの回避」を大切に
人生100年時代においては、親との関係性に悩む人も多いだろう。特に悩みの種となりやすいのが介護問題だ。自宅で最期まで面倒を見てあげたいと考えた結果、共倒れになってしまうことも少なくない。
家族を施設に入居させる場合、家族に対する申し訳なさを感じる人もいるが、「『施設に入ってくれてありがとう』という感謝の気持ちを持ちましょう」と名取さん。施設に入る人も、「見捨てられた」と考えるのではなく、共倒れを防ぐため、家族のために施設に入ると考えるのが良いと言う。
「共倒れを回避し、いただいた命をそれぞれが精一杯咲かせるための介護じまい。今が苦しいのなら、ぜひ家族で話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか」