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《親にエンディングノートを書いてほしい?》50代女性の悩みに91才料理研究家・小林まさるさんが回答「死んだら無、生きているうちに話をしよう」【人生相談・第7回】

 91才の料理研究家・小林まさるさんが、読者のお悩みに真摯に答える人生相談企画。今回は、読者から寄せられた「親の終活」に関する悩み。「親にエンディングノートを渡してあるが、なかなか話が進まない。渡されるとイヤなもの?」という質問に対して、まさるさんの答えとは――。読んですっきり、心は晴々!

答えてくれた人

料理研究家・小林まさるさん

昭和8年、樺太(現在はサハリン)生まれ。70才から長男の嫁で料理研究家の小林まさみさんのアシスタントを始め、料理研究家として活躍。著書『人生は、棚からぼたもち! 86歳・料理研究家の老後を楽しく味わう30のコツ』(東洋経済新報社)ほか、小林まさみさんの著書『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)では血糖値を下げる企画にチャレンジ。88才でYouTubeを始めるなど、新たな挑戦を続けるシニア世代の星。小林まさる88チャンネル

お悩み「親にエンディングノートを渡したら迷惑ですか?」

 以前、年齢を重ねていく親にエンディングノートを渡しました。

 娘としては、ただでさえ散らかっている実家なので、万が一のことがあったらどうしたいか(延命治療のことやお金の管理、入っている保険、 介護が必要になった時のことなど)を書き留めてもらい、 その後、何か気持ちが変わったら内容を更新してくれたらいいと思っていました。

 しかし、そのエンディングノートをどこにしまってあるのかすら分かりません…。親としては、娘がこういったものを渡してきたらイヤなもの、迷惑なものでしょうか?(まるこ 50さい・50才/女性)

まさるさんの回答「直接言われたら腹が立つ。聞き方が大事だ!」

 まるこ50さいさんの気持ちは分かる。万が一のことを思ったら、子どもとしては親がどうしたいか事前に知っておきたいものだよな。

 でも、俺は直接聞かれたら、「なんだ、俺が死ぬのを待っているのか!」って、頭にきちゃうよね(笑い)。頭ではやっておくべきだと分かってはいても、それでも腹が立つもんだ。

 こういう話は、俺はやはり聞き方が大事だと思う。

「保険はどうなってるの?」「貯金通帳はどこにあるの?」とか、ストレートに聞くと角が立つから、たとえば、親御さんの機嫌が良さそうな時に、「ねえ、この前渡したエンディングノート、あれどうしたかなぁ?」ってやんわりと聞いてみる。

 あるいは、時には嘘も方便だ。

「知り合いの親御さんが亡くなって、貯金のこととか全然聞いてなかったからすごく苦労したみたい…」と、作り話でいいから聞いてみるのはどうだい?

「そろそろ考えておかなくちゃなぁ」と本人に思ってもらうように話してみたら、案外うまくいくんじゃないかな。

 俺も昔、息子に死んだ時のことをどうするか聞かれたことがあって、その時はムッツリしちゃったんだ。それ以降、聞かれることはなくなったけど、ちゃんと話しておくべきだということは俺だって分かっているんだ。

 だから、最近は気持ちが変わってきた。以前は貯金通帳を隠していたんだけど(笑い)、今は家族が分かる場所にわざと置くようにしているよ。

 俺は「動けるうちは、お前たちの役に立つように、一生懸命働いて手助けするから、その代わり、何かあった時はよろしく頼むぞって」って言ってあるんだ。

 俺は子どもの頃に戦争を体験して、いつも死を身近に感じて生きてきた。だから分かる。死んだらおしまい。死んだら無。それだけなんだ。迷惑をかけないように葬式代くらいは自分で用意しているよ。

 心の中では山でも海でも、焼いたら撒いてくれ~って、思っているけど、墓はあるんだ。俺は長男で40代の時に自分で墓を買ったんだ。樺太から引き上げてくる時に死んだきょうだいを埋めた場所の土や祖父の位牌も持ってきた。両親もおっかあ(妻)も、みんな俺が買った墓に一緒に眠っているよ。

 生きているうちに、親子で本音を話せたらいいよな。

まさるさん

まさるさん

直接は聞かないこと。作り話でいいから優しく聞いてみよう!

まさるさんの愛用品紹介「雪のようにふわふわになるおろし器」

 70代から料理研究家の小林まさみさん(息子の嫁)のアシスタントとして活躍しているまさるさん。仕事でもプライベートでも欠かせない調理道具を教えてもらった。

 キッチンの引き出しから取り出したのは、長年愛用している「おろし器」。料理の撮影用に大根おろしを大量に作らなければならない時など、野菜をおろすのはまさるさんの大事な仕事だ。

『OXO』のおろし器(写真右)は、「おろすのってなかなか疲れるけど、これは滑りにくくて使いやすい。粗めだけれどとにかく早くおろせる。玉ねぎも簡単にすりおろせるよ!」と、太鼓判。

 伝統銅器の老舗『新光堂』のおろし器(写真左)は、抗菌性に優れた純銅製のボウルが美しい。

「これはとにかくきめ細かくて、雪のようにふわふわな大根おろしが手軽に作れるんだ。目で見ても、みずみずしいのが伝わってくるだろ」

「動けるうちは、俺は働く」と言ったまさるさんは、4月で92才を迎える。今日も生涯現役で走り続ける姿に、私たちは学ぶことがたくさんある。

 ――次回のお悩み相談もお楽しみに!

撮影/菅井淳子 取材・文/岸綾香

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