12月2日から紙の保険証の新規発行停止<マイナ保険証>移行による高齢者への影響は?【社会福祉士解説】
12月2日から健康保険証の新規発行が停止となり、マイナンバーカードと一体化された「マイナ保険証」に移行される。高齢者や介護が必要な人にとっては利用に不安を感じている人もいるのではないだろうか。社会福祉士の渋澤和世さんに活用法や注意ポイントを解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
現行の保険証が使えなくなる!有効期限を確認して
現行の保険証は2024年12月2日に新規発行が停止となり、健康保険証の登録をしたマイナンバーカード「マイナ保険証」に移行されます。
ただし、現行の保険証がすぐに使えなくなってしまうわけではありません。経過措置として最長1年間(2025年12月1日まで)の移行期間が設けられています。なお、後期高齢者医療保険証は2025年7月末の有効期限までは使用できます。さらに、後期高齢者のかたや、マイナンバーカードを取得していない人などに向けて、マイナ保険証のかわりに利用する「資格確認証」が順次交付されますので、こちらは後述します。
高齢者のかたの中には、「マイナ保険証」の利用に不安を感じているかたもいらっしゃると思います。利用方法や現時点での対応について確認していきましょう。
マイナンバーカードを健康保険証として使うための登録
マイナンバーカードを健康保険証として使うための登録は、以下の方法があります。まだの人は確認しておきましょう。
・顔認証付きカードリーダーからの申請
・マイナポータル(政府が運用する行政手続きのオンライン窓口)から申請
・セブン銀行ATMからの申請
・医療機関や薬局などの受付から申請
詳しくは、厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用方法」を確認しましょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40391.html
マイナ保険証のかわりになる「資格確認書」とは?
そもそもマイナンバーカードを取得していないかた、マイナンバーカードの健康保険証として利用登録をしていないかた、後期高齢者のかたには、加入する医療保険(国保・健保等)から「資格確認書」が交付されます。
また、自身でのマイナ保険証の利用が困難なかた(高齢者、障害があるかたなど)は、申請することで「資格確認書」が交付されます。
この「資格確認書」を医療機関等に提示することで、これまで通り保険診療を受けることができます。
申請不要で交付されるケース
・マイナンバーカードを取得していない
・マイナンバーカードを健康保険証として利用する登録をしていない(マイナ保険証の利用登録解除を申請、マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れたかたを含む)
・後期高齢者(2024年12月2日~2025年7月31日に75才になるかたを含む)(すでにマイナ保険証がある後期高齢者にも資格確認書が自動交付される)
申請が必要なケース
・マイナ保険証での受診等が困難なかた(高齢者、障害があるかたなど)
・マイナンバーカードを紛失・更新中のかた
※現行の健康保険証と同様、親族等の法定代理人や、介助者などによる代理申請は可能。
参考/デジタル庁「資格確認書(マイナ保険証以外の受診方法)」
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/insurance-card/optional-insured-status
マイナ保険証の利用方法は?
医療機関・薬局においてマイナ保険証で受付をする方法は以下となります。利用自体は簡単ですが、現行の保険証は月に1度の提出でしたが、マイナ保険証は毎回受診時に提示する必要があります。
【1】受付の顔認証つきカードリーダーに、マイナンバーカードを読み取らせる
【2】認証方法を選択し、本人確認を行う(顔認証か暗証番号を選ぶ)
【3】画面に沿って情報提供の可否を選択する。
【4】受付完了後、カードを取り出す。
操作できない、介助者が代理で病院の受付をする場合は?
介護が必要なかたなど病院や薬局などマイナ保険証での受付をご自身でできない場合、急に倒れたなどの緊急時は、介助者が代理で受付手続きをすることも想定されます。
カードリーダーの利用が困難なときは、窓口職員によるマイナンバーカードの顔写真と患者本人の顔の目視確認も可能なので、受付に相談してください。
また、暗証番号を入力するだけの医療機関もありますが、介助者が暗証番号を知っていても代理利用は認めないところもあるため、事前の確認が必要です。暗証番号の共有はリスクがあるため家族以外に教えることは避けたいところです。代理利用は制約が多いため、従来の保険証や資格確認証との併用が当分の間は安心といえます。
訪問診療やオンライン診療でマイナ保険証として利用できる?
医療機関・薬局が行う訪問診療等、オンライン診療等におけるマイナンバーカードの保険証利用については、すでに2024年4月から運用が開始されています。また、訪問看護事業者が行う訪問看護においても、2024年6月から運用が開始されています。
介護施設での運用はどうなる?
介護施設で生活している場合、ご本人の身体状況にもよりますが、従来の健康保険証を施設側が預かって管理しているケースが多くあります。
従来の保険証からマイナ保険証に切り替わることで、かなりの個人情報の管理が施設側に課せられることになります。鍵付きロッカーで保管し、出し入れの記録を行うなど国の運用マニュアルはありますが、現実的ではなく、紛失のリスクは避けられないでしょう。当分は「資格確認書」との併用が現実的といえそうです。
マイナ保険証の高齢者にとってのメリット・デメリット
最後にマイナ保険証のメリット・デメリットを改めて確認しておきましょう。
メリット「初診料の節約にもなる」
・受診時の様々な手続きの申請管理が楽になる。
・薬の履歴や過去の特定健診の情報提供に同意すると総合的な診断が受けられるほか、重複する投薬を回避できる。
・救急搬送時や避難時に、患者の診療情報等を迅速に把握できる。
・高額医療費の一時的な自己負担や限度額適用認定証の申請手続きが不要になる。
・マイナポータルから保険医療記録が参照でき、医療費控除申請の手続きが楽になる。
・保険者証類(健康保険被保険者証、国民健康保険被保険者証、高齢受給者証等)、被保険者資格証明書、限度額適用認定証、限度額適用、標準負担減額認定証、特定疾病療養受療証等の持参が不要となる。
・初診料等の医療費の節約(3割負担:6円、2割負担:4円、1割負担:2円)となる。
デメリット「毎回提示が面倒」
・毎回受診時に提示が必要(現行の保険証は月1回の提示だった)
・持ち歩く頻度が増えるので紛失の心配があり、紛失・盗難による不正利用のリスクも。
・再発行には窓口への訪問が必須で最短で約5日かかる。
・マイナ保険証を導入していない診療所なども一定数あるので注意が必要。
・マイナンバーカードの有効期限(発行から10年間・18才未満は5年、電子証明書は5年間)が切れると、マイナ保険証の有効期限も切れるので更新手続が必要。
参考/マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局等についてのお知らせ
https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16743.html
「マイナ保険証』高齢者への影響は?【まとめ】
後期高齢者をはじめ、マイナンバーカードをもっていない人や、マイナンバーカードの健康保険証の利用登録をしていない人には、現行の保険証のかわりに「資格確認証」を利用することになります。不安なことあれば、自治体に問い合わせをしてみてください。
初診料の節約につながるなどメリットも多い「マイナ保険証」ですが、高齢者にとって暗証番号を毎回入力するなどの作業は難しいこともあるでしょう。高齢者自身も介護をしている家族、介護施設にとって、マイナ保険証がスムーズに使いこなせるようになるまでは、しばらく時間と経験が必要になるかもしれませんね。