移動困難者を支える活動レポート|東日本大震災時から活動を続ける石巻の「Rera」とは?<第1回>
あ、また…。思わずつぶやいてしまうほど、高齢者ドライバーによる事故のニュースが後を絶たちません。胸をつまらせながら、他人ごとではないと、運転免許証の自主返納を強く考えるようになった人も多いはず。
けれども、一方には、返納に踏み切れない人もいます。とくに地方都市に多い、長くマイカー生活をしてきた人たちからは、車がなければ病院にも買い物にも行けないという声が聞かれます。
免許証の返納に限らず、なんらかの理由で運転をしなくなったら、外出には自家用車以外の交通手段を考えなければなりません。でも、助けてくれる家族や知り合いがいないし、公共交通機関からは遠い…。「どうしたらいいだろう」という思いがふくらんでいく人も多いのではないでしょうか。
そんな状況を考えている中で記者が手にしたのが、「いしのまき くらしとお出かけヒント集」という小冊子。そこには、宮城県・石巻地域で利用することができる、さまざまな交通機関・移動手段の紹介と、その利用の仕方が紹介されています。さらに、公民館などで行われるクラブ活動や習い事といった、“お出かけがしたくなる場所”をていねい取材した情報もまとめられています。
この小冊子を発行したのは、石巻地区を中心に、移動が困難な人たちを対象にした送迎ボランティアを行っている特定非営利活動法人『移動支援Rera(レラ)』(以下、Rera)。これを作った思いと、その背景にあるReraの活動を、3回シリーズで綴っていきます。
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東日本大震災の救援活動がきっかけで生まれた移動支援
「わたしたちReraは、2011年の東日本大震災の救援活動がきっかけで生まれた団体です。最大被災地といわれるほど被害が大きかった石巻地域では、6万台ともいわれる車が流され、たくさんの住民の移動手段がなくなってしまいました。始まりは、そういう方たちの移動の支援だったのですが、続けているうちに、移動ができない人がいるという問題は被災地だけに限ったことではない、ということが見えてきたのです」
そう語るのは代表の村島弘子さん。高齢化や過疎化などによって、移動手段がなくなり、健全な生活ができない状態の人が、実はたくさんいます。とくに高齢者が多い地方都市が抱えるこのような問題が、災害がきっかけで表面化したということでしょう。
Reraが送迎で支援する人(利用者)のほとんどが、高齢者や障害者。要介護者より要支援者が多く、80代以上の人が全体の約半数を占めているといいます。 送迎を頼める家族がいない。バスを利用したくてもバス停までひとりで歩いて行けない。タクシー料金を支払う余裕がない。そういった人たちを支援しているのです。
利用は登録制。週に2回まで利用することができ、ガソリン代などの実費程度の金額(2キロメートルごとに100円)を“協力費”として支払います。
移動支援Reraの利用方法
具体的にはどのような送迎なのか。利用する側の目線でいうと、こんなふうになります。
週に1回、整形外科の病院に通っている阿部けいこさん(仮名)の場合。
まずReraに電話して送迎を予約(2週間前から受付開始)→当日、自宅の玄関先まで迎えに来たReraのスタッフに導かれて乗車→病院の入口で降車→治療/支払いが終わった段階で、Reraに電話→病院に到着したReraの車で帰宅。
これで送迎は終了となります。
Reraの移動中に生まれる他の利用者との触れあい
行きと帰りではReraのスタッフ(ドライバー)が変わることもあれば、他の利用者と相乗りになることもあります。ですから結果的に、短い時間かもしれないけれども、利用者にとってReraの車の中は、他人との触れ合いの場にもなります。
震災後に活動を始めてからしばらくは、乗り合わせた人たちが「あなた生きていたのね」と声をかけ合う会話を耳にした、と、スタッフのひとり植野圭さんは言います。
Reraが活動を開始した震災直後の2011年5月から、今年3月31日までの累積送迎人数は15万8965人。この数は、石巻の人口を超えています。
※第2回(8月2日公開予定)に続く。
取材・文/堀けいこ
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。『移動支援Rera(レラ)』の活動に、3年前からボランティアとして参加中。
撮影/伊藤克行 小林克司 堀けいこ 写真提供/移動支援 Rera
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