「国際保健ビジョン」で介護に携わる国際人材の獲得強化へ 厚労省の新戦略
8月26日、厚生労働省は「国際保健ビジョン」を発表し、国内外の医療・介護システムの発展を図る戦略を明らかにした。国際保健ビジョンとは、留学生向けの奨学金制度を整備し、国内の大学の医学部に20人程度の留学生を受け入れる新たな実証事業のこと。日本国内の急速な高齢化に対応するため、特に介護分野では、外国からの労働者の確保と、彼らが日本で安心して働ける環境整備が重要な柱となる。介護人材の確保は、日本の介護現場での人手不足解消だけでなく、国際的な連携を通じて世界的な介護技術の向上にも貢献することを目指している。
介護人材の獲得強化に向けた取り組み
厚労省は「循環型高齢者保健戦略」という政策を掲げ、アジアを中心とする外国からの介護労働者の獲得に力を入れる。現地での働きかけを強化し、日本の介護技術や制度の魅力を広め、外国人が日本での介護職に就くことを促進する戦略だ。具体的には、現地の教育機関や関連団体と連携し、外国人が介護技術を学びやすい環境を整備。また、外国人労働者に向けた研修や日本国内での生活サポートも充実させることで、労働者が日本での長期的なキャリア形成を安心して行えるよう支援し、さらに彼らが日本での経験を母国に還元できる仕組み作りも視野に入れている。
外国人介護労働者と日本の介護技術の国際展開
「循環型高齢者保健戦略」の「循環」について、具体的には、外国人が日本で学んだ介護技術を母国に持ち帰り、現地での介護業界の発展に寄与する「好循環」を目指す。
日本で介護技術を学び、現場で活躍する外国人労働者が増えること、さらに、彼らが母国に戻った際に、日本の介護技術や知識を広めるというのが循環の目標とするところだ。日本国内で得た知見が世界各国に広がり、介護分野における国際的な協力や技術の共有が進むことで、日本と外国との間で「好循環」が生まれる。 この戦略により、外国人介護労働者は日本の介護現場の即戦力となるだけでなく、母国でも高齢者ケアに貢献できる人材となる。また、日本の介護事業者が国際的に展開することも目論み、現地での介護サービス提供にも寄与することを見据えている。これにより、介護技術の標準化や国際的な評価が進み、日本の介護分野は国際的に大きな影響を持つことを目指す。
今後の課題と展望
これに伴い厚労省は、国内の保健、医療、介護システムのさらなる改革が必要であるとの認識を示している。特に、少子高齢化が進行する日本において、介護サービスの需要は今後ますます増加すると予測されている。これに対応するため、外国人労働者の確保や育成だけでなく、彼らが日本で安心して働ける労働環境の整備が急務となる。 「国際保健ビジョン」に基づく政策が成功すれば、日本国内の介護現場における人手不足が解消に向かい、さらに外国人労働者が母国での介護業界の発展にも貢献するという、国際的な視点での相乗効果が期待される。日本が世界の介護分野においてリーダーシップを発揮することは、今後の国際的な課題解決に向けた重要な一歩となるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部
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