その不調、梅雨のせいかも|気象病とは?チェックリスト、症状、対策
昔から「古傷が痛むと雨が降る」などといわれてきたが、実はコレ、迷信でも気のせいでもない。天気の影響を受けることで、痛みやめまい、狭心症、低血圧、ぜんそく、うつ病などの症状が出ることを"気象病"といい、近年、そのメカニズムが解明されつつある。本企画では、これらの症状を改善する秘策を紹介。対策を知れば、ただでさえ憂うつな梅雨だって、快適に過ごせるはず!
まずは下記の“気象病チェックリスト”をチェックしてみましょう。
あなたの頭痛、めまい、肩こり&首こり、関節痛、憂うつな気分…。原因は低気圧にあるかもしれません!?
気象病チェックリスト
思い当たる項目はいくつありますか?
□昔から天気の変化には敏感な方だった(※)
□体調の変化で、雨が降る、気圧が変化するのがなんとなくわかる(※)
□乗り物酔いしやすい方だ
□天気によって気分の浮き沈みがある方だ
□過去にスポーツでけがをした経験がある
□台風関連のニュースが気になる方だ
□季節の変わり目に体調を崩しがちだ
□暑い季節にはのぼせやすく、寒い季節には冷えやすい
□雨が降る前に眠気やめまいなどを感じることがある
□雨が降る前に頭痛がすることがある
□今まであまり運動をしてこなかった
□最近、体を動かす機会が減っている
□仕事はデスクワークが中心で、前かがみの姿勢になることが多い。もしくは猫背ぎみだ
□よく肩こりを患う
□どちらかといえば几帳面な性格だ
□首を痛めたことがある
□よく耳鳴りがする
□耳抜きをするのが苦手
□新幹線や飛行機に乗ると耳が痛くなる
□片頭痛持ちである
□ストレスを感じやすい。もしくはストレスの多い生活を送っている
上記(※)に該当する人は気象病の可能性が高い。それ以降の項目のうち、4つ以上当てはまる人も気象病予備軍として注意が必要だ。
参考文献/『天気痛を治せば頭痛、めまい、ストレスがなくなる!』佐藤純(扶桑社)
覚えておきたい主な症状 それは仮病でも、怠けグセでもない!
「気象病は、気圧、温度、湿度などが変化することで発症するのですが、なかでも“低気圧”が深く関係しています。そのため、低気圧が頻繁に通過する春や梅雨時、台風が接近する晩夏から秋にかけて、症状を悪化させる患者が多いんです」
そう教えてくれたのは、愛知医科大学客員教授で気象病の第一人者である佐藤純さんだ。では、気圧の変化はどうやって感知しているのだろうか。
「私は40年以上におよぶ研究から、鼓膜の奥にある器官“内耳”に気圧の変化を感じとるセンサーのようなものがあると考えています。このセンサーでキャッチした気圧の情報が脳へ伝わり、自律神経を刺激します。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、内耳が敏感な人の場合、ほんの少し気圧が変化しただけでも、脳に過剰な情報を伝えてしまい、自律神経のバランスを崩してしまうのです」(佐藤さん・以下同)
交感神経が活発になると、痛みの神経を刺激したり、血管を過剰に収縮させて血流を悪化させ、血管周辺の神経を刺激して痛みを感じやすくさせてしまう。一方、副交感神経が活発になると、だるくなったり眠くなったりする。
「気象病は、自律神経の乱れが原因なので症状は多岐にわたります。頭痛や肩こり、ひざの痛み、リウマチの痛み、過去のけがの痛み、線維筋痛症の痛みといった、あらゆる“痛み”をはじめ不定愁訴、心の不調、そしてぜんそくや心臓病の悪化にも関係してきます」
梅雨時期に陥りやすい原因不明の不調‥‥。ひと昔前なら仮病や怠けグセなどと捉えられ、周囲に理解されずに苦しむ患者が多かったという。
「最近では気象病を診てくれる外来も増えてきました。該当する症状が出たら、気のせいなどと思わず、なるべく早く受診してください」
気象病の主な症状
●頭痛
気象病の症状としてもっともよく現れるのが頭痛。こめかみが脈打つような痛みの"片頭痛"も併発しやすいので、がまんせず受診を。
●肩こり・首こり
交感神経が過剰に刺激されると、血流が悪くなるため、肩や首などの筋肉がかたまり、こりやすい。頭痛を悪化させる原因にもなる。
●めまい
自律神経が乱れると内耳から伝えられる平衡感覚に関する情報を脳がうまく処理できなくなって、視界が回転するようなめまいが起こる。
●関節痛
交感神経が過剰に刺激されると、ひざや肩などの関節が痛むのはもちろん、古傷などの痛みも発症する。炎症も起こりやすい。
●憂うつになる
太陽光には精神を安定させる脳内物質を分泌させる働きがあるが、悪天候だと分泌されにくくなり、憂うつに。低気圧で自律神経が乱れると症状は悪化。
●朝なかなか起きられない
自律神経が乱れ、副交感神経が刺激されると眠くなったり、体がだるくなる。症状が悪化すると、自律神経失調症になるケースも。
自利神経のバランスを整えるには内耳の機能改善を
気象病はセルフケアで緩和できると、佐藤さんは言う。
「大切なのは、自律神経のバランスを整えることです」(佐藤さん・以下同)
室内の温度を快適な温度にするエアコンは、この時期の必須アイテムといえるが、体にやさしい環境でのみ生活を続けていると、ちょっとした気象の変化にも体がついていけず、自律神経のバランスを崩しやすくなる。
「特に内耳が敏感な人ほど、気圧の変化を感じやすく、自律神経を乱してしまうので、内耳の機能を鎮静化させることもポイントになります」
そのためには、耳を温めたり刺激するなどして、内耳の血流をよくするのがいい。
「手軽にできるのが、耳のマッサージ(下記イラスト参照)です。気象病の症状がつらい人は、朝晩に1回ずつ、毎日行ってみてください」
内耳のマッサージで耳の温め、血流改善を
●耳のマッサージ
6ステップで耳がポカポカ。内耳の血流が改善する!
1.両耳の上部をつまんで、上方向に5秒間引っ張る。
2.両耳の上部をつまんで、横方向に5秒間引っ張る。
3.耳たぶのあたりをつまみ、下方向に5秒間引っ張る。
4.両耳を横に引っ張りながら、後ろに5回まわす。
5.両耳を上下からはさんで折りたたみ、5秒間キープ。
6.手のひらで耳全体を覆い、円を描くように後ろにゆっくり5回まわす。
めまい薬が内耳の血流を整える
「気象病の症状がよく出る人は、内耳の血流が悪い傾向にあります。ですから、血流を改善する効果のある『めまい止めの薬』が役立ちます。めまいがある人は気圧が下がる前に服用してください」
頭痛など、体に痛みがある場合は、市販の頭痛薬をのみがちだが、この時期の頭痛は気象病が原因の場合もある。気象病の症状は多岐にわたるため、自己診断は危険だ。必ず受診したうえで、医師に適正な薬を処方してもらおう。
「つらい時は薬に頼るのもいいですが、普段から自分の体調がどのような天気の時に悪化するのかをメモしておくことも大切です。症状が出るタイミングを把握しておけば、薬をのむタイミングもわかりますし、余計な不安を抱え込まないですみます」
気圧の変化は、気象庁のホームページからもチェックできる。
気圧が下がる前に用意しておくと、便利なグッズとアプリをご紹介!
マッサージや薬には体の中から症状を緩和する効果があるが、併せてグッズ(耳せん)やアプリを活用して、気象病に備える方法もある。
「私が開発した『天気痛耳せん』(左記参照)は、耳に差し込むだけで気圧の変化を調整してくれます」
天気や気圧の変化を調べて備えることも大切だが、面倒だという人には、気象状況を予報するアプリもある。これらの便利ツールを、体調管理に活用しよう。
●天気痛耳せん
超多孔質の気圧調整フィルターが、耳の中の気圧をコントロールする。使用中も音は聞こえる。「天気痛耳せん」1998円/アメイズプラス:0120・787・989
●アプリ「頭痛ーる」
自分が暮らすエリアを登録すれば、1時間ごとの気圧の変化が一目でわかり、事前に気象病の対策ができる。ダウンロード無料。iOS、Android対応/ポッケ(https://zutool.jp)
季節に合わせた方法で養生する
「心と体の調和を整えるのが東洋医学の基本的な考え方のため、原因がわからないけれどなんとなく調子が悪い“不定愁訴”への対応は専門分野。ですから、気象病は東洋医学で緩和しやすいんです」と話すのは、アシル治療室院長で鍼灸師の若林理砂さんだ。
東洋医学によると、人は「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火」という6つの気象現象の影響を受ける。これらの現象が強すぎても弱すぎても病気を招くという。
「気象現象による病気の対策としては、食事、睡眠、運動などの生活習慣を、各季節に合った方法で整えて“養生する”ことが大切なんです」(若林さん・以下同)
梅雨時期の養生は水分の排出が肝に
では、梅雨時期はどう養生したらいいのか。
「東洋医学では“湿邪はゆっくり体をむしばむ”とされ、梅雨時の体調管理には湿気対策が重要になります。水分を体内にため込まず、こまめに排出するよう食事に気をつけることが、この時期に適した養生になります」
甘いものなどを避け、水分を出す食材、例えば豆類やとうもろこし、お茶類、海藻類を積極的に摂るのがおすすめだ。また漢方薬・五苓散にも、体内の余分な水分を排出する役割がある。
「雨で外出できなくても、家事で体を動かし、湯船で発汗させたり、6~7時間は睡眠時間を確保するのもおすすめです」
季節に応じた養生を根気よく続けることで、天気に左右されない体質を作れるという。
気象病改善に効果的な食材、控えた方がいい食材
●梅雨時におすすめの食材
・豆類
・とうもろこし
・お茶(緑茶、ウーロン茶)
・海藻類
●梅雨時は控えた方がいい食材
・甘いもの
・脂っこいもの
・塩辛いもの
・赤身の肉
・乳製品
ツボの刺激で気象病の不調を解消
耳の後ろにある骨の出っ張り部分のすぐ下にあるのが「完骨」のツボ。ここを刺激すると、頭痛やめまい、耳鳴りなどに効果的。ペットボトル温灸の場合、3~5秒当て、熱く感じたら離す、というのを3~5回繰り返す。気圧が下がる日の朝に行うと効果的。
●完骨のツボ
気象病予防としてツボを刺激する方法もある。ただ押すだけではなく温めると、より効果が得られるという。「お灸をすえるのが最適ですが、簡単な方法として“ペットボトル温灸”がおすすめ。ホット専用のペットボトル(350ml)に水道水3分の1量と、沸かした湯3分の2量を入れます。これをツボに当てるだけでも、お灸と同様の効果が得られます」(若林さん)
●失眠のツボ
かかとの中央にあるツボ。快眠効果や、体内の余計な水分を排出し、むくみをとる効果も。このツボにペットボトル温灸を3~5秒当てては離すを繰り返す。就寝前に行うと、目覚めのよい朝が迎えられる。
イラスト/尾代ゆうこ
※女性セブン2019年7月4日号
●自律神経とは?|乱れの原因、自律神経バランスのチェック、整える方法【まとめ】