猫が母になつきません 第394話「いしそつう」
賃貸に引っ越して今までのように庭に出ることができなくなったさび。運動不足にならないように室内でおもちゃを使って遊ばせています。紐がついたネズミのおもちゃを私があやつり、それを追っかけるという極めて単純な遊びですが、さびはその時間をとても楽しみにしています。光を追いかけるレーザーポインターも試してみましたが、さびは実体のないものを追いかけることにすぐ飽きてしまいそれは数回でお蔵入りになりました。動き回るネズミを前脚でキャッチする醍醐味が大事というのは理解できます。私もだんだんネズミ使いが上達してテーブルの下にしゅっと入れたり、クッションの影からだしたりひっこめたりして気を引いたり、猫が喜びそうな動きをさせます。でもたまに紐がからんだり、家具にひっかかったりして動きが止まってしまうと、さびはいかにも「興醒めだわ」という顔をしながらもストップモーションがかかったみたいにじっと私が紐を解くのを待っていて、ほんもののネズミをで狩っているように見えたけどやっぱりちゃんと遊びなんだなとあらためて感心します。遊びを知っている動物は知能が高いといいますよね。
私が用事があるのにさびが遊びたいとねだってにゃーにゃー鳴くとき「おしごとあるから今はだめ」ということを伝えるのに「パソコンを指差す」「キーボードを打つようなしぐさ」というふたつの動きのハンドサインを何度か見せたらさびはすぐに覚えて、この動きをすると遊びをあきらめてさっさと自分のベッドに行くようになりました。さびは今年11歳。11年も一緒に暮らしていたらそのくらい理解できる? まあ、以前から母よりもよほど意思疎通ができていたのは事実。それにしてもききわけがよすぎる。いつも「もっとわがままでいいのに、猫なんだから」と思っています。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。