高齢者の自転車の選び方|命を守るために気をつけたいポイント
若者はデザインや用途で自転車を選んでもいいが、高齢者はそうはいかない。意外と知らない、高齢者の自転車の選び方を専門家に聞いた。また、いざというときに大事な保険の加入、定期メンテナンスのポイントも合わせて教えてくれた。
→高齢者の自転車 選び方のポイントからオススメ電動アシストまで徹底紹介
高齢者は「適用身長」より小さい車体を選ぶ
「脚力の衰えた高齢者に、ペダルをこぐ力がいらない電動アシスト自転車はおすすめです。ただし、選び方には注意して」
とは、「自転車工房いのうえ」の店主・井上一さんだ。
「通常、自転車の車輪サイズは『適用身長表』を見て選びますが、高齢者の場合、自分の適用サイズよりワンサイズ小さい車輪の自転車を選びましょう。車輪が小さいほど全体の寸法も小さくなり、取り回しが楽になるからです。また、またぎやすさを考えて、フレームは2本より1本のものを選んで」(井上さん・以下同)
車体が小さいとスピードが落ちると思われがちだが、電動アシスト自転車の場合、一定の速度までモーターで補助してくれるので、気にする必要はない。
最近は、メーカーが試乗用自転車をレンタルしている。買う前に、試乗するのもおすすめだ。
●高齢者が乗りやすい自転車の例
●高齢者が乗りにくい自転車の例
保険加入と定期的なメンテナンスは必須
自転車購入時には、保険にも入っておこう。2008年、当時小学5年生だった男児が乗った自転車が歩行者に衝突した事故で、男児の母親は約9500万円もの高額賠償を命じられ、自己破産した。自転車は軽車両なのだから、自動車同様に保険に入っておくに越したことはない。
井上さんは、自動車保険や火災保険の付帯保険(特約)をすすめる。
「今加入している保険の特約なら加入しやすく、補償も手厚いはずです。あるいは、TSマークもおすすめ。これは、自転車を点検・調整して、安全が確認された自転車に貼付できるもので、自転車保険が付帯されているからです」
ただし、TSマークを貼付する目的は、保険加入より、定期メンテナンスの大切さを知るためだと井上さんは強調する。
「自転車本体の調子が悪いことで事故が起きるケースも意外と多いんです。特にBAAマークが貼付されていない安価な自転車はブレーキパッドの消耗が激しいものもあり、1年程度でブレーキがきかなくなることも。異音や違和感があればすぐに自転車店で見てもらいましょう。まめに空気を入れればタイヤも軽くなり、バッテリーの持ちもよくなりますよ」
タイヤが傷んでいる時に空気を入れすぎると故障の原因になる。空気入れひとつとっても、専門店に相談を。思わぬ不調を発見できるかも。
TSマーク付帯保険の補償内容
TSマークとは、(公財)日本交通管理技術協会が認証した自転車安全整備店で、自転車を定期的に点検整備することで、自動的に保険に加入できるサービス。保険の有効期間は、TSマークの記載日から1年間。マークの色によって保障内容が違うので自分に合ったものを検討してみましょう。
・賠償責任補償
TSマークがついた自転車に乗っている人が、第三者に死亡または重度後遺障害(1~7級)を負わせ、損害賠償を負った場合、1億円(限度額)が支払われる。
・傷害補償
TSマークがついた自転車に乗っている人が、交通死亡事故によって事故日から180日以内に死亡または重度後遺障害(1~4級)を被った場合、一律100万円が支払われる。15日以上入院した場合は、一律10万円が支払われる。
・被害者見舞金
TSマークがついた自転車に乗っている人(加害者)が、第三者(被害者)に入院治療15日以上の障害を負った場合、一律10万円が支払われる。
・賠償責任補償
TSマークがついた自転車に乗っている人が、第三者に死亡または重度後遺障害(1~7級)を負わせ、損害賠償を負った場合、1000万円(限度額)が支払われる。
・傷害補償
TSマークがついた自転車に乗っている人が、交通死亡事故によって事故日から180日以内に死亡または重度後遺障害(1~4級)を被った場合、一律30万円が支払われる。15日以上入院した場合は、一律1万円が支払われる。
・被害者見舞金
適用なし
自転車のメンテナンス・チェックリスト
1つでもあてはまれば近くで自転車店を見つけ、定期的にメンテナンスしてもらおう。
・1~2か月に1回はタイヤに空気を入れる
・半年に1回はブレーキのきき具合をチェック
・半年に1回は自転車のチェーンに給油をする
・乗る前に必ず、各部のネジがきちんと締まっているかチェックする
イラスト/高梨としみつ
※女性セブン2019年5月2日号