兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第242回 オニの居ぬ間の映画鑑賞】
ライターのツガエマナミコさんは、若年性認知症の兄と暮らしています。7年以上にわたり細腕ひとつで兄をサポートしてしているマナミコさんの疲労は肉体的にも精神的にも相当なもの。現在施設入居を絶賛検討中ではありますが、その間、ショートステイを取り入れることにしたツガエ家。今回は、オニならぬオニィ不在のときのお話です。

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コメントを寄せてくださる読者の皆さまへ
兄がショートステイの間に久々に映画を観ました。
『PERFECT DAYS』 という役所広司さん主演の、公衆トイレ清掃員の1~2週間を描いた作品を拝見しました。台詞の少ない映画でした。何か事件が起こるわけでもなく、ほぼ毎日淡々と同じことを繰り返す暮らしの中で、ほんの少しのいいことや、ちょっとした困惑で心を動かす機微が描かれておりました。一番印象に残ったのは、伏線っぽい意味ありげな景色や出来事がいくつも出てくるのに一つも回収されないことでございます。主人公の過去もわからなければ、印象的に繰り返されるぼやけたモノクロ映像の意味もわからないまま。
でも、そう思った途端に、何かにつけて伏線回収を求めている自分に気づきました。「この出来事にはこういう意味があったんだ」とか「あの言葉はこれを示唆していたんだ」と気づけることで気持ち良くなるとでも申し