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「ガムを噛む習慣がある高齢者」はオーラルフレイルの有症率が4割も低い<最新研究レポート>

 2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会となった日本。肉体的にも精神的にも健康を保った高齢者になるためには、口腔機能の維持・向上が不可欠だ。ロッテと東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長らのグループが行なった共同研究によるとガムを噛むことは口腔環境の悪化を予防し、健康にも良い影響をもたらすことが判明したいう。最新の研究レポートから分かった口腔機能と健康の関係性について紹介する。

教えてくれた人

飯島勝矢さん/東京大学高齢社会総合研究機構機構長。未来ビジョン研究センター教授。まちづくりを通しての虚弱予防・サルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力低下のこと)予防、在宅医療推進を軸とした地域包括ケアシステム構築、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に向けた研究など、健康長寿社会の実現に向けた研究を幅広く推進している。

口の中をキレイにするだけじゃダメ?噛む力と健康の関係性とは

 先進国の中でも特に高齢化が進む日本。国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」によると、日本の人口は約1億2000万人から2070年には8700万人へ減少、総人口のうち65才以上の高齢者の割合は2020年時点の28.6%から2040年には35%、2070年には38.7%へ上昇すると推計されている。

 超高齢社会を迎えた日本では気づかぬうちに口の中の健康状態が悪化し、食べこぼしが増える、口の中が乾きやすくなる、硬いものが食べにくくなるといった「オーラルフレイル(口腔機能のささいな衰え)」に悩む高齢者が増えているという。

 ひとたび「オーラルフレイル」の状態に陥ると、2年後にフレイル(加齢により心身が弱った状態)・サルコペニアになるリスクが2倍以上に、4年後には要介護・死亡のリスクが2倍以上になる(※1)といわれているため若い頃から気をつけておきたいところだ。

 そんな中、口腔機能の維持・向上がオーラルフレイル対策に効果があり、日常生活を支障なく送ることができる健康寿命の延伸にも密接に関係している可能性があるという研究結果が発表された。

 ロッテとの共同研究を行った東京大学高齢社会総合研究機構・機構長の飯島勝矢教授(飯島さん・以下同)は、

「オーラルフレイル対策では口の中を清潔に保つだけでなく、口の機能を低下させないことが大切です。ほとんどの人が歯磨きなどの口腔衛生は意識しているようですが、噛む力などの口腔機能についてはしっかり対策されている人は少ないと感じています」

 と口腔機能維持の重要性を指摘する。

(※1)Tanaka T, Takahashi K, Hirano H et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2018; 73: 1661–1667.

共同研究で判明した「ガムを噛む習慣」が健康にもたらす良い影響

 ロッテと飯島さんの研究チームは、健康的な65才以上の高齢者1474人を対象に週に30分以上ガムを噛んでいる人を「ガムを噛む習慣のあるグループ」として、習慣のない高齢者グループと健康状態を比較する共同研究を行った。その結果、ガムを噛む習慣のある高齢者は、ない高齢者と比べてオーラルフレイルの有症率が4割も低いことが判明した。

「口腔機能の維持、改善については口腔体操があげられますが口腔体操を習慣化することは難しいという問題がありました。体の筋肉と同じく、お口の筋肉も使い続けなければ衰えてしまいます。毎日の食事で噛み応えのある食事を食べることでも口腔機能を維持・向上させることは可能ですが、今回のようにガムを噛むことも良い影響を与えるかと思います」(飯島さん)

 また、ガムを噛む習慣のあるグループは咬合力や咀嚼力などの口腔機能が有意に高いことに加えて、認知機能、握力、バランス能力(開眼片足立ち)や通常歩行速度などの身体能力も習慣のないグループと比較して高い数値だったことが今回の研究で明らかとなった。

「オーラルフレイルや身体的なフレイル予防には自分の生活に取り入れやすい一工夫が重要です。今回の研究結果からガムを噛むことを習慣化するだけで多面的なフレイル予防にも健康増進にも役立つ可能性が考えられます。口腔体操だけでなく、毎日の生活にガムを噛む習慣を取り入れてみると良いかもしれませんね」(飯島さん)

 年齢を重ねるほどなりやすい「オーラルフレイル」は早い時期から意識して予防することが大切だ。まずは生活の中で気軽に実践できる予防法をぜひ試して欲しい。

<研究詳細>

タイトル:Relationship between a gum-chewing routine and oral, physical, and cognitive functions of community-dwelling older adults: A Kashiwa cohort study(地域在住自立高齢者におけるガム噛み習慣と口腔、身体、認知機能との関係:柏スタディ)

著者:川村 淳、田中 友規、菅野 範、大澤 謙二、岡林 一登、平野 浩彦、白部 麻樹、永谷 美幸、孫 輔卿、呂 偉達、飯島 勝矢

対象:自立高齢者1474名(横断的研究)

内容:1週間のガム咀嚼時間を聞き、30分/週以上ガムを噛んでいる人をガム噛み習慣群として、非ガム噛み習慣群と様々な健康状態について比較した

※ロッテの発表したプレスリリース(2024年1月23日)を元に記事を作成。

写真・図/ロッテ提供  取材・文/松藤浩一

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