認知症で要介護4の母「前歯が2本行方不明に！」発見した意外な場所と歯科通院介助の対策
作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡で暮らす認知症の母をさまざまな道具や工夫をしながら遠距離介護を続けている。母は要介護4、忘れてしまうことが増えてきて――。そんなある日、母の“前歯”が行方不明に。母の入れ歯にまつわるドタバタの顛末と、認知症の母の歯科通院介助の対策について教えてもらった。
執筆／工藤広伸（くどうひろのぶ）
介護作家・ブロガー／2012年から岩手にいる認知症で難病の母（80才・要介護4）を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母（要介護3）や悪性リンパ腫の父（要介護5）も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』（翔泳社）など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる？介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
認知症の母の前歯がない！どこに行ってしまったのか？
岩手に居る妹が実家で年末年始を過ごし、自分の家に帰ろうとしたときに、母のある異変に気づきました。しかしその場で解決できる問題ではなかったので、岩手に帰る予定があったわたしにLINEで連絡が来ました。
妹「昨日まであった前歯がなくなってる」
母は重度の認知症なので、ひとりで歯医者に行けません。わたしが遠距離介護で岩手に帰ったときに、歯の状態を確認することになりました。
デイサービスから帰ってきた母を玄関で迎え、マスクを外したついでに、口の中を見せてもらいました。すると、下の前歯が連続して2本なくなっていました。
母は自分の歯がないことを忘れてしまっていて、わたしに指摘されて思い出したようでした。
母「あら、おかしいわね。ここないわよ」
わたしは母の歯の状態をスマホで撮影し、翌日ひとりで歯医者へ駆け込みました。というのも、予約なしで当日の治療は難しいと思ったからです。予約を取ってから、母を連れて行ったほうが待ち時間が少なく、スムーズに治療できます。
この歯医者には7年近く通っていて、わが家の遠距離介護の状況や母の認知症、難病について理解があります。
たとえば、母は難病の影響でスリッパが履けないので、靴下のまま院内を歩きますし、治療の説明は理解できない母ではなく息子にするなどです。
受付で母の歯の写真を見せ、わたしが実家に帰省している2週間の滞在期間を考慮して頂き、最短で先生に診てもらうことになったのです。
それにしても、母の前歯はどこに行ってしまったのでしょうか？
なくなった歯がみつかった意外な場所
なくなった2本の前歯は自分の歯か、それとも差し歯か？
母の入れ歯はわたしが洗浄しているのでわかるのですが、残っていた歯はよく見ていなかったので、どちらかわかりませんでした。
仮に差し歯だったとして、母が抜けた歯を保管していてくれたら、つけ直すだけで治療が終わるかもしれないのに…。
予約日前日にそんなことを考えながら、実家で掃除機をかけていたところ、トイレ前の廊下で突然、掃除機の中から「カラカラ」という音がしました。
掃除機のダストカップを開けてみると、そこに母の差し歯があったのです。
母は差し歯を落としたときに、見つけられなかったのかもしれません。あるいはすぐに忘れてしまって、探すことすらしなかった可能性もあります。
滞在期間中に、治療が終わるかもしれない！見つけた差し歯をティッシュでくるんで、翌日母と一緒に歯医者へ行きました。
歯科医の診断結果は？
歯科医からの説明は、いつものように母にではなく、わたしにありました。
歯科医「この差し歯は使えないですね、虫歯で抜けてしまったようです。ご高齢で歯を抜くのもリスクがあるので、歯を削って歯茎の治療をして、新しく部分入れ歯にしますね」
わたし「ダメですか…。わかりました。その方針でよろしくお願いします」
次回の歯医者の予約は、わたしが帰京する日の朝一番なら空いているとのこと。乗車する東北新幹線は昼前の予約でしたし、歯の治療が終わったあと、急いで盛岡駅へ向かえば間に合いそうだったので、次の予約を入れました
しかし、次回の治療で入れ歯は完成しません。また今後の予定は、次回の治療の時にわかるとのこと。
わたしは付き添えないので、妹とヘルパーさんに通院の付き添いをお願いするかもしれないと連絡をして、この日の治療は終わりました。
2回目の通院は入れ歯のバネの型取り
私が東京に帰る日、母の2回目の通院は、入れ歯のバネ（残っている歯にひっかける金属の部分）の型取りでした。
母の治療中に今後の予定を確認したところ、あと2回通院が必要なことがわかりました。妹は仕事で付き添いができなかったので、ケアマネジャーさんを通じて、ヘルパーさんに依頼し、何とか手配できたのです。
この日はデイサービスの予定があったので、歯の治療を終えたあと、母と一緒にタクシーでデイサービスへ向かいました。
移動中にメールが来たので、開いてみるとこう書いてありました。
「東北新幹線は、停電の影響で東京〜仙台駅間の運転を見合わせています」
詳しい状況が分からないので、とりあえず母をデイサービスへ預け、わたしはそのまま盛岡駅へ向かいました。
帰京の日のドタバタと母の「新しい入れ歯」
新幹線は動いていなかったので、昼食をとって時間をつぶしたのですが、復旧する気配はありません。
喫茶店で1時間ほど情報収集をしていたら、鉄道に詳しいかたのSNSを発見。以前にあった新幹線の停電の際はすぐに復旧しなかったから、今回も時間がかかりそうと書いてありました。
ニュースでも復旧の見通しは立たないと言っていたので、帰京は諦めてバスで実家へ戻ることに。結局、東北新幹線は終日運休となり、翌日に帰京しました。
後日、新しい入れ歯は無事完成したのですが、母は入れ歯の変化に気づいていないようです。バタバタしましたが、母が違和感なく食事ができるようになってホッとしました。
今日もしれっと、しれっと。
『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』（翔泳社）
『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』（翔泳社）
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