連載

2024年遠距離介護スタート!認知症の母と歩む12年目の在宅介護、5つのプランと心得

 作家でブロガーの工藤広伸さんは、東京から岩手・盛岡に暮らす認知症の母を通いで介護している。2024年を迎え、遠距離介護は12年目に突入。先が見えにくい介護だが、年間の介護プランや見通しを立てておくことで、いざというときに備えておきたい。工藤さんが考える新年の抱負、在宅介護における5つのプランとは?

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(80才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

遠距離介護12年目、新年に考える介護の見通し、5つのプラン

 あけましておめでとうございます。岩手と東京を行き来する遠距離介護は、2024年で12年目に突入しました。

 認知症が重度まで進行した母を、自宅でどのように介護していくのか? 今年の見通しをご紹介します。

1.<環境の工夫>まずは冬の寒さ対策をしっかりと

 1年の遠距離介護のうちで、最も緊張する時期は冬です。特に1月、2月の岩手の冬は寒く、雪や氷による転倒リスクも高まるので、帰省頻度を増やして雪かきや氷割りを頻繁に行います。

 また、寒さ対策が必要になります。母はエアコンの役割が分からないので、せっかく部屋を暖めても、扉を開けっ放しにして暖気を逃がしてしまいます。エアコンをつけながら、ジャンバーを着込み、コタツに入って寒いと言う日もあるくらいです。

 他にもデイサービスの送迎日時を理解していないので、外気温とほぼ変わらない玄関先と暖かい居間を何往復もしてしまい、昨年は2度ほど体調を崩してしまいました。おそらく寒暖差の影響で血圧が激しく変動し、ヒートショックのような状態になったようです。

 こうした健康への影響を最小限にするため、世界保健機関(WHO)は、冬の室温を18度以上に保つことを強く推奨しています。しかし気密性が低く、断熱材も入ってない築50年以上が経つわが家の場合、室温を18度以上に保てません。そこである対策を行いました。

1個500円のドアクローザーで寒さ対策

 大規模なリフォームは経済的負担が大きいので、エアコンの暖気が逃げないよう、1個500円のドアクローザーをネットで購入しました。

 壁とドアをワイヤーでつなぎ、ドアを開けるとワイヤーの力で扉が自動的に閉まるシンプルな仕組みです。

 設置した場所に限っては、エアコンの暖気は逃げなくなりました。しかし対策が必要な扉はたくさんあるので、設置個所を増やして、母にできるだけ暖かい環境で生活してもらうよう工夫します。

2.<情報収集>介護施設の情報収集をしておく

 こうした寒さの心配は、母を介護施設に預ければ解決できます。

 一方で生活環境が変われば、今まで自宅でできていたことができなくなる可能性もあります。母は施設を望んでいませんし、自立した行動を続けて欲しいので、今は在宅介護を選択しています。

 母もわたしも在宅での介護を希望していますが、母の体調次第では自宅での介護が難しくなるかもしれません。

 昨年から介護施設の口コミを集めたり、見学に行ったりしていますが、今年はさらに情報収集することになるでしょう。

3.<体調の管理>訪問フットケアによる足の巻き爪治療

 昨年秋、母が立ちあがった際に「痛い」と言ったので、足を見せてもらうと巻き爪になっていました。以前と比べて歩いたり立ったりする時間が減ってしまい、足の爪に体重がかからなくなったので、爪の端が内側に巻くようになったのです。

 そこで看護師の資格を持つかたに、訪問フットケアをお願いすることにしました。

 巻き爪になりにくい爪切りをしてもらったのですが、爪の状態をよく見ると、1度はがれて、その後爪が生えてきていたことが分かりました。

 母はおそらく爪の違和感を忘れていて、長期間誰にも訴えなかったのでしょう。巻き爪になると自然と歩かなくなり、そこから筋力が落ちて、一気に車椅子や寝たきりになる可能性もあります。

 2024年は母の足の爪をしっかり治して、違和感なく歩ける状態に戻すつもりです。

4.<介護方針の検討>効率よくプロの力を借りるために…

 遠距離介護が始まった2012年当時から、可能な限り住み慣れた自宅で母を介護しようと努力してきました。今も思いは変わっていませんが、これからも自宅で介護するためには、今まで以上の覚悟が必要になると思っています。

 母は80才になったばかりで、これからは認知症の進行だけでなく、健康面でも不安な点が増えてくると思います。介護はもっと大変になるかもしれませんが、それを上回る知恵を振り絞って、できるだけストレスを抱えないようにするつもりです。

 昨年の冬、母が体調不良を起こしたため、今年の1月上旬に担当ケアマネジャーと今年の在宅介護について話し合うことになりました。介護保険サービスは、すでに支給限度額いっぱいまで利用しています。効率よく介護のプロの力を借りるための施策を、ケアマネさんと一緒に考えるつもりです。

5.<介護者の心得>介護する自分自身も守っていきたい

 介護する自分も、すぐ動けるようにしておこうと思っています。月1回~2回の遠距離介護のペースは守りながら、母に何かあってもすぐに対応できるよう、自分の仕事のスケジュールをこれまで以上に余白を持たせるつもりでいます。

 在宅介護に固執し過ぎて、介護しているわたしが倒れてしまったら、母にも他の家族にも迷惑がかかってしまいます。最期まで在宅でという思いは持ちながらも、介護者である自分自身を守ることも忘れないようにしていきたいです。

 亡くなった祖母や父の遠距離介護をして看取ったときも、冷静に対応できました。あまり深刻に考えてもいいことはないので、いつもどおり「なるようになる」という思いで、2024年も遠距離在宅介護を続けていきます。

 2024年もしれっと、しれっと。

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