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松本明子さんが振り返る「本当に大変だった“実家じまい”それでも、自分でやってよかった」と語る理由

 家のあちらこちらにしまわれた大量の不用品を処分したい気持ちはあっても、年齢を重ねると腰が重く億劫になってくるもの。実家の片付けは、親が元気なうちに親子でコミュニケーションをとりながら進めるのがベスト。親の家の片付けを済ませたタレントの松本明子さんからのアドバイスを紹介します。

■タレント・歌手 松本明子/香川県出身。1982年、『スター誕生!』(日本テレビ系)をきっかけに歌手デビュー。『DAISUKI!』『電波少年シリーズ』(いずれも日本テレビ系)などで人気を得た。著書に『実家じまい終わらせました!』(祥伝社)。

松本明子さんの状況・問題点

 実家は敷地面積約90坪。宮大工に頼んで釘を一切使わない木組みにするなど、こだわって造られた。そんな父の家への思いも松本さんが受け継いだ。

空き家になった実家の維持費1800万円

「空き家になった実家を維持するため、25年間に支払った固定資産税や光熱費、保険料などを月平均で計算すると約3万円。払えない金額ではなかったのでそのままにしていたら、900万円にもなっていました」(松本さん・以下同)

 このほかに、リフォーム代、整理や掃除のために実家に通った交通費などを含むと、1800万円を超えたという。

 実家は松本が27才のとき、父親から「頼む」と言われて生前贈与された。父親はこのときすでに定年を迎えており、夫婦で上京して松本さんと3人で暮らし始めたときだった。

「芸能界は浮き沈みの激しい世界。だから両親も、会社勤めの兄ではなく、私に家を譲り、仕事がなくなっても住む家だけはと考えたのでしょう。私も、いつか郷里に帰る日が来るかもしれないと思っていたので、維持費を払うことに疑問を感じませんでした」

 その後松本さんは、30才で東京に戸建てを購入して両親と同居。32才で結婚した後は夫の実家で暮らしていたが、2003年に父親が他界し、松本さんが建てた東京の家に母親がひとり暮らしとなったため、夫の実家を出て母親と再び同居を始めた。その母親も2007年に亡くなったが、それでも実家を処分しようとは思わず、2015年にはリフォームまでした。

「父から“頼む”と言われたことが大きかったんですよね」

 別荘代わりに使おう、震災が起こったら避難場所にしよう、子供が将来住んでくれるかも…などとさまざまに使い道を考えたが、訪れる回数は年々減っていった。

木造家屋の価値は築20年以上でゼロに!?

 そんな松本さんが実家の処分を本気で考え始めたきっかけは2015年、バラエティー番組『私の何がイケないの?』(TBS系)への出演だった。

「番組の企画で、専門家が私の実家を査定してくれたのですが、土地を含めたその価値はなんと200万円。木造家屋の場合、築20年を過ぎると建物の価値はほぼゼロとなり、土地にしか値段が付かないということでした。ちょうど600万円かけてリフォームをした直後だっただけにショックでした」

 それでもまだ手放す気にはなれなかったという。それだけ思い出が詰まっていたからだ。しかしこの頃から、世の中が空き家問題を取り上げるようになり、少しずつ考えが変わっていった。

「賃貸に出そうか、親戚に住んでもらおうかなど、実家を残す可能性を探りましたが、どれも叶いませんでした。残すために手を尽くしたけれど、現実的じゃないと思い知りました」

 2017年、バラエティー番組『爆報! THE フライデー』(TBS系)で、松本さんが実家を売るまでの過程をドキュメントとして取り上げる話が持ち上がったのを機に、本格的に処分に向けて動き出した。

「高松の不動産業者と香川県が運営する空き家バンクに登録して、買い手を待つことから始めました」

 そして登録から3か月後、希望の600万円で買ってくれる夫婦が現れ、即決した。

「価格もそうですが、何より改築などをせず、そのままの状態で住んでくれるというのがうれしかった。実家が残せると思ったんです」

自分で片付けることで思い出の整理もできた

 明け渡しまでには3か月あったが、仕事もあったので、片付けができたのは実質1か月。

「高松まで車で片道11時間かけて通うこと7回。最後の1週間は、地元の温泉施設に連泊して、朝から晩まで片付けました」

 業者に任せる方法もあるが、松本さんはすべて自分で片付けると決めていた。

「再利用できるモノは買取業者に査定してもらいましたが、骨董品を含め、ほとんどお金にはなりませんでした。父の文学全集は二束三文。レコードも1枚1~2円。ピアノは4000円でした」

 母親の着物は知人に譲ったり、劇団や知り合いの衣装担当者に引き取ってもらった。自分の衣装や台本、トロフィーなどは東京の自宅に持ち帰った。

「日本人形は供養してくれるお寺に送り、仏壇は地元のお寺に頼んで魂を抜いてもらった後、仏具店に処分をお願いしました。ゴミは全部で20t出ました」

 こうして、松本さんの“実家じまい”は2018年に終了した。

「本当に大変でしたが、すべてのモノの“行き先”を自分で決められたので後悔はありません。遺品整理は、業者に任せる方法もあるし、費用も自分でやるのとさほど変わりません。それでも、自分でやってよかった。なぜなら両親との思い出も整理できたから。後悔があるとすれば、母が生きていて、私にもっと体力があるときに済ませておけばよかったことです」

 誰もがいずれはやらなければならない親の家の片付け。先延ばしにすると大変になることを、松本さんが身をもって教えてくれた。

《片付けPOINT》

●売却は、地元の不動産業者と空き家バンクを活用。
●リフォームをしてきれいに保つことで売れ、実家を残せた。
●遺品整理から売却まで自分で行うと思い出も整理できる。

取材・文/上村久留美

※女性セブン2024年1月4・11日号
https://josei7.com/

●作家・落合恵子さん「空き屋になっていた実家の遺品整理、土地建物の処分に10年かかった」理由

●檀ふみさんが明かす「父の死後40年経って始めた遺品整理と実家の建て替え」で心残りだったこと

●川上麻衣子さんが実践した<生前整理>「昭和の家電、北欧の食器…母の思い出話を聞きながら片付けた」

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この記事へのみんなのコメント

  • 池田剛士

    国等の調査の結果、植物の粘性物質をムチンと呼ぶ「明治百五十年の大過」は、現存する学術団体(公益社団法人日本化学会、公益社団法人日本生化学会、日本医学会)による誤った日本語訳(「粘液質」「粘素」「粘液素」)=「ムチン(粘質物一般の総称和名)」を端緒とした、「(動物の)粘液(英: mucus 日: ミューカス)」の主成分「糖タンパク質(英: mucin)」と「(植物の)粘液(英: mucilage 日: ミューシレージ)」の主成分「ペクチン性多糖(英: pectic polysaccharide)」の誤認混同に由来し、『広辞苑』で知られる岩波書店が戦前戦後にかけて出版した『理化学辞典』『生物学辞典』『英和辞典』がそのインフルエンサーとなっていたと結論付けられました。

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