檀ふみさんが明かす「父の死後40年経って始めた遺品整理と実家の建て替え」で心残りだったこと
俳優で作家の檀ふみさんは、約70年前、東京都内に父(作家の故・檀一雄さん)が家を購入。建て増しを繰り返し、本や美術品が増えていった。父の死後、家を建て替えるがそのときはモノを捨てず、2回目の建て替えで大量の遺品と向き合うことに──。檀ふみさんが実践した親の家の片付け方、遺品整理のポイントとは?
プロフィール
俳優・エッセイスト 檀ふみさん
映画、ドラマなどで活躍。『父の縁側、私の書斎』(新潮社)、『檀流きもの巡礼(たび)』(世界文化社)など著書も多く、『ああ言えばこう食う』(集英社)は第15回講談社エッセイ賞を受賞。
檀ふみさん「父の死後40年、大量の遺品をどう整理するのか?」
「1950年代に父が買った土地の広さは約350坪。広い庭には父が植えた木々も生い茂っていました。家は建て増しを続けるうちに部屋数が増え、それに伴い、モノも増えていきました」(檀さん・以下同)
父親は1976年に他界。その後、檀が20代後半に差しかかった1980年代に建て替えをした。新しい家には収納スペースをたっぷり設けていたので、父親の遺品はすべて収納できたという。
「2015年に母も他界しましたが、やはり遺品整理は行いませんでした。ところが2017年、道路拡幅工事のため、所有する土地が半分に、家屋も3分の2に縮小しなければならなくなり、遺品整理をせざるを得なくなったんです」
母親とは同居していたものの、生前は遺品整理についての話をしていなかったという。長年手をつけなかった両親の大量の遺品。さて、これをどう整理したらよいのか――
難儀した父の蔵書、母の着物「心残りは庭の木々」
量の多さで難儀したのが、父親の1万冊もの蔵書や骨董品、食器、母親の着物だった。
「初版本や限定本など高価な本もありましたが、状態が悪く、復刻版が出版されていたこともあって、蔵書の8割以上を売っても30万円くらいにしかなりませんでした」
骨董品も総額で約20万円。食器にはほとんど値が付かなかったという。
「骨董というよりガラクタの類いでしたから。4社ほどの業者に入ってもらい、買い取りの際は、比較的よいモノとの抱き合わせで、値の付かないモノも引き取ってもらいました。でないと片付きませんから」
母親の着物は、着付けの先生方にまとめて譲った。
檀さんがもっとも心残りだったのは庭の木々だったという。
「父が植えた柿の木は、おいしい実をつけていましたし、立派に育ったクルミの木も切りたくありませんでした。でも柿の木は向きを変えただけでも枯れるといいますし、新しい家を建てるためにも切らざるを得なかった。仕方なく、お祓いをしてから伐採しました」
父が生前から使っていた戸棚は修繕して残した
遺品の中には、修繕して残したモノもある。
「父の生前から居間にあった戸棚は修理して、2018年に完成したいまの新しい家に置いています」
遺品整理には1か月を費やしたが、実はまだ完全には終わっていないという。
「新しい家には6畳ほどの収納部屋があるので、そこに私にとって思い出深い、両親の遺品を収めています。
これらの処分は、私の死後、甥や姪に託したいと考えています。私には処分しづらいモノでも、甥や姪なら処分してくれるでしょう。大方の整理は済んでいますから、それほど手間はかからないと思います。どうしても手放せないモノは、自分の死後に別の人に託す―そういう遺品整理の仕方があってもいいかなと思っています」
檀ふみさんの「片付けPOINT」
●木のように命あるものを処分する前にはお祓いを。
●父親の蔵書は、専門の買取業者に査定を依頼。
●業者には値の付かないモノも引き受けてくれるように依頼。
●着物や帯は、ばらすことなくまとめて着付けの先生に譲った。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2024年1月4・11日号
https://josei7.com/
●実家の生前整理を業者に依頼した実例ビフォー・アフター 費用や段取りも公開