「認知症は前段階なら食い止められる」医師が解説するグレーゾーンの見分け方と7つの対策
もしグレーゾーンに足を踏み入れていた場合、どうすれば認知症に進まずにUターンできるのか。そのための方法として朝田さんが真っ先に挙げたのが「人との交流」だ。
「孤独になると脳が縮むことがわかっています。友人や家族に自分から連絡をとったり声をかけたりすることなく一日中家に閉じ込もっているような人は、グレーゾーンから一気に認知症へ突き進んでしまう。難しく考えず、できれば体の接触も含めてとにかく人と集まることを意識するだけでも脳が活性化します」
朝田さんのクリニックを訪れるある女性患者は、グレーゾーンから踏みとどまったひとり。来院のたびに「先生、見てください」とうれしそうに爪を見せてくるという。
「“孫が塗ってくれたの”とネイルを見せてくれるんですが、表情が以前と比べて明るくなって、日を追うごとに症状も和らいできています。自分が楽しんでいることと、ネイルを塗るときにお孫さんと手を触れ合っていることが脳を活性化させ、Uターンにつながったと考えられます」
グレーゾーンの人が誰かと接するとき、より有効になる行為がある。それは「相手を褒める」こと。それも外見ではなく、内面を褒めるのがポイントだ。
「褒めるためには相手をよく観察し、話を聞く必要があるので、それが脳への大きな刺激になります」
一方で、自分を褒めることも大切だと朝田さんは続ける。
「自己肯定感を持つためにおすすめなのは毎日『To Doリスト』を作って、やることを可視化させること。やったことから消していけば達成感がありますし、頭の中も整理できて一石二鳥です」
その際、To Doリストに加えたいのが「歯茎磨き」だ。
「アルツハイマー型認知症患者の脳に歯周病菌が存在することは、さまざまな研究で明らかになっています。原因は歯周病菌が血液に乗って脳に達し、アミロイドβを増やすからだといわれています。そのため、歯周病菌の温床となる歯茎をしっかりケアすることが大切なのです。朝昼晩の食事の後と朝起きたとき、寝る前と5回行うことを推奨します。ただし力を入れすぎるとかえって歯茎を後退させてしまうので、やさしく磨くこと。デンタルフロスや歯間ブラシ、舌みがきも同時に行うとさらに効果的です」
有酸素運動もおすすめ
脳への血流を促す有酸素運動にも意欲的に取り組もう。
「ウオーキングも効果的ですが『ラジオ体操』などは、みんなで集まって会話の機会を増やすことにつながるのでよりよい。ほかにも、高齢者だとダンスや卓球などもおすすめ。勝ち負けがあったり上達したいと思えるような運動を選べばさらに効果的です」
朝田さんが診療した72才の女性患者は社交ダンスによって「Uターン」を果たした。
「彼女は70才で認知症グレーゾーンと診断されたものの、そこから一念発起して昔から興味があった社交ダンスを習おうと地域の公民館で開かれている教室に通い出しました。すると“男性と手を取り合って踊ることがこんなに楽しいなんて”と生き生きとした表情を取り戻し、2年経ったいま、認知機能は完全に回復。“年甲斐もなく…”とためらわずに一歩踏み出すことがグレーゾーンを抜け出す大きなきっかけになるのです」
グレーゾーンから引き返す対策7選【まとめ】
・人との交流
・ネイルなど手の触れ合い
・人も自分も「褒める」
・ToDoリストでやることを可視化
・歯磨き、歯周病のケア
・ウオーキングなど有酸素運動
・会話や触れ合いのある運動(ラジオ体操、社交ダンス、卓球)
※女性セブン2023年11月30・12月7日号
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