憧れの介護付き有料老人ホームをオンライン見学。やはり費用が大変…モヤモヤは続きます【実家は 老々介護中 Vol.29】
81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、実家を手伝いながらどうにか仕事をこなしています。現在、兄と私も週に2回は実家へ行き、父が最期まで家で過ごせるよう介護をしていますが、一応老人ホームを見学しておこうということに。父は末期がんなので今更感はありますし、費用も心配ですが、納得して在宅介護をする一助になれば…。
コロナの影響で老人ホームの見学がオンラインに
「明日見に行く施設、コロナの感染者が出ちゃって。残念ですが、見学は中止になりましたよー」
ケアマネさんから電話が来て、実家近くの介護付き有料老人ホームの見学は、画面越しで見るだけになってしまいました。まあ、見るだけ見ておくかな。母、兄、私、父本人も寝たままパソコン画面を覗き込み、説明を聞きます。
担当の方が施設内をぐるりと歩き、生中継。コロナ対策のために利用者は居室にいるそうで、普段の雰囲気はわかりません。でも、ネットの写真ではわからないリアルな雰囲気が窺い知れて良かったです。
「建物は古いんですが、整理整頓して清潔にしています。周りは田んぼだらけですからね、太陽をさえぎるものがなく、窓から光がいっぱい入って明るいです」
「近くにある幼稚園の子どもたちが、帰りにバイバイしてくれるので、時間になると窓際へみんなで並んで座り、手を振るんですよ」
へえー、素朴で和やかなムード。とはいえ、施設内には騒いだり不穏だったりする利用者もいるかもしれないし、施設と父のウマが合う合わないがあるでしょう。しかし、オンライン中に後ろを通る職員さんも、ニコニコしていて好感触。
母が会いに行ける距離の施設で、末期がん、認知症、統合失調症の受け入れができて看取りまでOKなのは、老人ホームだとここ一択。ほかはターミナルケアの病院しかない。じゃあ、現実的に検討するか? というと…。
お安くはないですね。入居一時金はかかるし、月々の支払いも食費込みで15万くらい。プラス介護保険料は別の支払いなのですが、要介護5の自己負担1割だと2万6000円くらい。あと医療費やオムツ代、日用品代などもかかるので、20万超えです。
父母の限られた資金からすると、やはりキツいなあ。変な話、長生きしたら毎月払うわけだし、母の老後もあるし。お金のことばかり考えながら説明を聞いていると、兄がいい質問をしました。
兄:「敷地内にデイサービスもあるようですが、そこは、父のように寝たきりでもサービスを受けられるのでしょうか?」
施設の方:「そうですね、状況によりけりなので、今すぐには返答できないんですが、ベッドに寝たままデイサービスを利用している方はいらっしゃいます」
兄:「行った日に、お風呂に入れてもらえたらいいですよね。今、本人の状況も落ち着いているので。主治医にも相談してみますね」
えー。寝たままデイサービス、無理じゃないのかな? オンライン見学が終わったあとケアマネさんに聞いてみると。
「状況的に受け入れが厳しいかもしれないですが、寝たまま利用する方はいらっしゃいますよ。そちらのマンションにエレベーターがないから、階段昇降機で昇り降りする間だけ、お父様が頑張って座っていられれば、あとは寝て移動できる車で連れて行ってくれますよ。レクリエーションルーム見ました? あそこにベッドを置いてレクに参加するようです。周りから話しかけられて刺激がありますし、ご本人も楽しいかもしれないですよ」
そこで、母が父の説得を試みます。
「お父さん、さっき見た施設、デイサービスもあるんだって…」
しかし、父はすぐに無言で顔をしかめて小さく顔を横に振り、全面拒否。家族のために施設入居の可能性はある、と納得しているようなのですが、やはりできるだけ外の施設には行きたくないよう。
「あら、そうお。じゃ、気が向いたらね」。母はスッと引きました。
日中に数時間、父が外へ出かけてくれるなら、日中担当の母がすごく助かるのですが!
さて、母は介護疲れから復活してすぐに、あれこれ父の世話を焼いています。
実は、夜間のヘルパーさんを導入して、介護が劇的にラクになりました! しかし、その費用の工面で衝撃の事実が発覚です。なんと兄は実家にいる間、父母に渡す生活費を20年滞納していたのだそう。その返済という名目で、夜間ヘルパーさんのお金を兄が受け持つというのです。
そういう隠し財産があるんなら、先に言ってよね。私だけに隠していたのは腹が立つけど、結果オーライと思わなくては。父母と兄のやりとりがどんぶり勘定なので、のちのち揉めないよう、金額をしっかり書き出して残すよう、話そうと思います。
正直、総合的に判断すると、デイサービスは無理そうだし、介護付き有料老人ホームもコスト的にしんどいです。母としては、老人ホームを見ておきたかったそうなので、見て気が済むならいいのですが。疲れたときの逃げ道には、ターミナルケアの病院にレスパイト(※)を頼むのが現実的のようです。お金があったら自由がきくのになあ、とまたもモヤモヤです。
※介護する家族などが休息をとるため、病院などが一時的に入院などを受け入れること
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛