10人の名医が実践する健康長寿を叶える朝のルーティーン「朝食でたんぱく質摂取、階段の上り下りで筋トレ」
仕事や家事、子育てなど、日中の過ごし方は人によって千差万別ある。一方、起床、食事と朝は大まかな行動が決まっていて、この時間で「何をするか」が健康長寿のカギを握る。名医たちは朝をどのように過ごしているのだろうか。名医10人がやっている「朝の習慣」を紹介する。
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医、牧田善二さん/AGE牧田クリニック院長、小林弘幸さん/順天堂大学医学部教授、伊賀瀬道也さん/愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長、加藤庸子さん/藤田医科大学ばんたね病院脳神経外科教授、高尾美穂さん/イーク表参道副院長・医学博士、鎌田實さん/医師・作家、坪田聡さん/睡眠専門医、富永喜代さん/富永ペインクリニック院長、今井一彰さん/みらいクリニック院長
医師も実践!「朝の運動&筋トレ」で体を健康に
多くの医師が揃って行っているのは、朝の運動だ。
精神科医の和田秀樹さんも朝の運動を習慣化し、その効果を実感している。
「毎朝、スクワットを10回して、午前中に30分ほどのウオーキングをしています。4~5年前から続けていますが、これを習慣にしてから、血糖値は660mg/dlから300mg/dlへと半分以下になりました」(和田さん・以下同)
筋肉を鍛えるための運動もしていると続ける。
「EMSという筋トレマシンなどを使い、メールチェックをしながら足の筋肉や腹筋を鍛えています。ぼくは糖尿病なのですが、太ももの筋肉がいちばん糖分を消費してくれるので対策として欠かさないようにしています」
老化物質「AGE」研究の第一人者である牧田善二さんも、筋トレをしている。
「階段の上り下りをしていて、居住階から26階分ほど下りて、3階分くらい上るようにしています。運動というとウオーキングのような有酸素運動を推奨する人も多いですが、私は筋トレをおすすめします。アイリシンというホルモンが筋肉から分泌され、これが脳にある海馬の細胞を活性化させて認知症予防が期待できるのです。寿命が長い女性にはぜひ取り入れてほしい習慣です」
牧田さんと同様に、意識的に階段を使っているというのは自律神経の専門家である小林弘幸さんだ。その狙いは、全身の血流促進にある。
「朝の通勤では電車でも座らず、エスカレーターも使いません。体を動かすことによって下半身から血流がよくなり、自律神経が安定します。運動はゆっくり呼吸できるくらいがいいでしょう」(小林さん)
「1分のジャンプ」「3分のラジオ体操」など軽い運動が理想的
朝の運動が理想的とわかっても、忙しい朝に筋トレなどをする時間も体力もないという人は少なくないだろう。
抗加齢医学研究を行う伊賀瀬道也さんが考案し、自身も習慣としているのは「ゆるジャンプ」。その名の通り、その場で軽く、かかとが床から少し離れるくらい飛び跳ねるだけの“ゆるい”運動だ。
「朝だけでなく、昼や夜など1日3回するようにしていますが、1回につき1分でOKです。道具いらずなうえ、ダイエット、ウエストダウン、ヒップアップなどさまざまな効果が期待できる。身長172cmで体重72kgを維持できているのは、このゆるジャンプのおかげです」(伊賀瀬さん)
朝のラジオ体操の効果は広く知られているが、脳動脈瘤の破裂を防ぐ「クリッピング術」のスペシャリストとして世界で知られ、脳外科医として3000例以上の手術を行ってきた加藤庸子さんも実践者のひとり。
「年を重ねると節々が固まってくるので、それをほぐして新陳代謝をよくするために行っています。体をしっかり動かすことで、一日の活動能力の高まりを実感できますよ」(加藤さん)
加藤さんが話すように加齢とともに体は硬くなり、それによって代謝低下や疲労の蓄積、痛みなどが生じる。翻っていえば、体をほぐすことを意識するだけであらゆる不調を遠ざけることができるということ。医学博士で婦人科スポーツドクターでもある高尾美穂さんが言う。
「朝起きたら、軽く体を伸ばします。眠っているとき体は丸まっているので、それを伸ばすことを意識して、背中をや腰を反らすなど、軽めのストレッチです。窓際で空を見上げながら行い、お天気もチェックしています」
体を伸ばす前にも、欠かさず行うルーティンがある。
「洗顔と同じタイミングで、ザーッと大まかに歯磨きをしています。さまざまな病気の引き金になる歯周病の予防になりますし、目覚め効果もあります。舌のチェックも欠かしません。その後に、常温より少し温かい白湯を200mlほど飲んでいます。お昼前くらいに便意を感じるようになり、お通じにいいサイクルが生まれます。軽く体を動かすのは歯磨きと白湯の後です。一連の流れは、心拍数や血圧を上げて交感神経の活動を優位にするために、どれも大切な習慣です」(高尾さん)
朝食はマスト!積極的に「たんぱく質」を摂取しよう
朝食をとるかとらないかは、たびたび意見が割れるテーマだが、名医たちは10人中10人が「必ずとる」と回答。その理由について小林さんはこう説明する。
「朝の習慣でいちばん大事にしているのが朝食で、体内時計を動かすために起きてから1時間半以内に食べることにしています。朝食を抜いたり、軽めにしてしまうと体が目覚めず、頭が回りません」
全国各地で住民の健康づくりに携わる鎌田實さんは、朝食でたんぱく質と野菜を必ず摂ることを意識している。
「最も重きを置く朝の習慣は、“朝たん”。つまり、朝にたんぱく質をしっかり摂ること。朝食を食べないという人もいますが、たんぱく質を摂らなければ筋肉の貯金ができません。目玉焼きとか、それにハムを添えるとか簡単なものですよ。カニカマや缶詰のオイルサーディンがあると便利。女性は中年以降、筋肉が毎年1.2%ほど減少していくといわれています。大きな原因のひとつがたんぱく質不足。高野豆腐はたんぱく質が豊富なだけではなく、コレステロール値を下げるレジスタントたんぱくも含まれているので、高野豆腐と卵のおみそ汁なんかは朝食にぴったりだと思います」(鎌田さん)
たんぱく質の摂取は筋肉量の維持、増加だけではない。
「老化や病気の原因となるAGEsを高める血糖スパイクの予防にもなります。たんぱく質が不足すると薄毛を招く恐れや、肌のツヤが失われるなど女性にとってはマイナス作用が大きいので、積極的に食事に取り入れてほしいですね」(伊賀瀬さん)
睡眠専門医の坪田聡さんは、ストレッチや筋トレをした後にプロテインをのんでいる。
「運動後30分以内に摂ると効果的だと知って以来、運動で体を目覚めさせてから効率的にたんぱく質を摂取するためプロテインを取り入れています」(坪田さん)
朝のヨーグルトを習慣にしている人に朗報なのは、血管を若返らせる食べ方。
「朝食はヨーグルトにスパイスをかけて食べるのが定番。具体的には、ターメリックとシナモンとコリアンダーで、これらのスパイスには動脈硬化を予防する効果があるため、血管を若返らせることが期待できるからです。スパイスを日常的に摂取しているインド人には心筋梗塞が少ないというデータもあります」(和田さん)
起きる瞬間からなるべく快適に過ごせるような習慣を持つ名医もいる。痛み治療のエキスパートである富永喜代さんが言う。
「毎朝、豆から挽いてコーヒーを淹れています。新しい味を楽しむのが好きで、いまはベトナム産コーヒーで目覚めています。それでもなお寝覚めが悪いのが更年期。ベッドの上で、NHKのニュースを見てその日の情報を刺激とすることで、寝起きのつらさを和らげてます。またSNSフォロワーが39万人のインフルエンサーなので、仕事前にSNSの投稿を日課にすることで仕事脳にシフトします」
予防医療のための体操をいくつも考案してきた今井一彰さんは、自身が考案した口を動かして舌を回す「あいうべ体操」のほか、音読を朝の習慣にしている。
「滑舌が維持できるほか、脳トレ効果もあり、頭の活性化にもつながります。あいうべ体操は、舌の筋力を鍛え、健康の基本である鼻呼吸を促進。唾液を多く出すことでオーラルケアにもなります」