兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第219話 使用済み紙パンツリサイクルの話】
若年性認知症を発症してから7年あまり経つ兄の症状は進んでいます。一緒に暮らし、サポートをする妹のツガエマナミコさんを悩ますのは排泄問題。紙パンツは必需品です。今回は、その日々消費量が増える使用済み紙パンツが、リサイクルできる!?という話です。
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使用済み紙パンツが資源になる!?
兄のお便さまを見ずに済んでいた頃は、じつは幸せだったのだと感じているツガエでございます。それほど毎日お便さま掃除をしております。朝、自分の部屋から出るのが嫌で、早く目が覚めてもストレッチをしながら寝っ転がって7時を待ち、もう朝ごはんにしなきゃ…と思いつつさらにダラダラして、そのダラダラがちょっとずつ伸びているこの頃でございます。
リハビリパンツは朝晩履き替えていただくようになりました。まったくお尿さまの痕跡がなく、もったいないときもございますが、「どんだけ~」というほどずっしり重いときもございます。その上、兄の排泄物から壁や床、家具を守るため貼りめぐらせた使い捨て防水シート(ペットシート)を貼り替える機会も多くなり、ここ最近ゴミの量が格段に増えました。
たった一人でもひと月の紙パンツや使い捨て防水シートなどの量は膨大でございます。週2回の燃えるゴミの日に出してしまえば、我が家から汚物のゴミは消えますが、世の中に兄のような人がどれだけいて、どれだけの汚物のゴミが出ているのかを考えると恐ろしくなります。
そんなことを気にしていたら、新聞でこんな見出しを発見しました。
「紙おむつは資源 リサイクルに注力」
(※編集部注:朝日新聞9月15日より)
目を疑いました。あの使用済み紙パンツをリサイクルする?????
記事によれば、千葉県のリサイクル業者でそれは行われているそうでございます。集められた大量の使用済み紙おむつはドラム式洗濯機のような機械に入れ、薬剤と混ぜ合わせてバラバラにし、原料であるパルプとプラスチックと高分子吸収材に分解するというのでございます。この工場では、そのプラスチックとパルプの部分を使って固形燃料を生産しているとのこと。さらにはそれが製紙会社の発電などに使われるという見事な循環を作り出しているからあっぱれでございます。さらには段ボールをつくる実験も始めたそうな…。
もっとすごいのは鹿児島県の企業で、パルプとプラスチックと高分子吸収材に分解し、消毒と漂白をして、使用済み紙おむつ由来のパルプを使った新しい紙おむつを作り出したそうでございます。すでに一部の介護施設や医療機関向けに販売を始めたというのが衝撃的でございました。
環境省の推計によると、2030年度に家庭と事業者から排出されるであろう紙おむつ類の量は、約245~261万トンと予想されております。著しい少子高齢化によって生産量はすでに赤ちゃんの紙おむつを大人の紙パンツが上回っているとも書いてありました。
※使用済み紙おむつのリサイクルについて詳細は環境省のHPを参照くださいhttps://www.env.go.jp/recycle/recycling/diapers/diapers_recycling.html
水分を多く含んだ紙パンツ類は燃えにくいので、リサイクルできれば焼却量が減ります。ゴミの最終処分場の満杯時期も遅らせることができて、いいことづくめでございます。
昔はおむつといえば布おむつしかありませんでした。かく言うわたくしも布おむつ時代の子どもでございます。今でも布おむつで子育てをするお母さんが一定数いらっしゃるようですね。でもさすがに介護の世界に布おむつは考えにくい。となると、やはり紙パンツもリサイクルするのが現実的な解決策となりましょう。まさか使用済み紙パンツをリサイクルする時代が来るとは思っておりませんでした。素晴らしいことだと思う反面、抵抗感がないとは言えません。
でも、でも、日に日に汚物のゴミを増やしているツガエ家としては、紙おむつ由来のリサイクル商品を積極的に購入していかなければならないと使命感を抱いております。リサイクルにはお金がかかるので、商品価格も決してお安くはできないでしょう。けれど、あれを集め、あれを分解し、あれを原材料として製品を作る方々のご苦労を応援したいと思います。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ