「コーヒーを飲むと情緒不安定になる!?」知っておきたい日本人特有の体質とは
コーヒーを飲むと眠気が覚める一方で、不安な気持ちになるという人が一定数いる。 その原因も日本人の体質に由来するものではないかと考えられている。
「日本人を含むアジア人は、カフェインで不快な症状が起きやすいタイプの遺伝子を持つ人が半数を占めます。
特に日本人の4人に1人はコーヒー2杯分程度のカフェインを摂取すると、不安定な気持ちになるという報告もあるほどです。一方、白人やアフリカ系では、そういった人は稀。不思議なことに、同じアジア人でも中国人はカフェインが合わない人は少数派なのです」
本当は苦手なのに、周囲に合わせてコーヒーやカフェインの多いお茶を飲んでいた人は、無理せずにジュースなどに切り替えた方がよさそうだ。
刺身で認知症予防ができる
日本人の魚介類摂取量の平均値の推移
悪いことばかりではない。”日本人にだけ効く食材”もある。しかも認知症防止によいといわれる、あの物質だ。
「魚に含まれる善玉物質であるEPAとDHAは認知症の予防に有効です。魚を多く食べる高齢者は、そうでない高齢者と比べて認知症になるリスクが3分の1に減る。日本で行われた調査では、認知機能に限れば、約10~20%しか低下しないと報告されています。
ところが、アメリカで実施された調査では、魚を多く食べても認知症の発症率に変化はなかった。日米で捕れる魚の種類が違うことを考慮しても、日米の体質の差を表しているといえるでしょう」
その魚の食べ方にも、日本人に合った方法があるという。
「日本人は伝統的に穀物を主食としてきたため、脂肪とたんぱく質を消化する力が弱いのです。魚の調理法で、最も短時間で消化できたのが、生のまま。つまり、お刺し身です。次いで、煮魚と蒸し魚という順序でした。胃腸が疲れているときは、肉や魚、卵も含めて、焼いたものは避けた方が吸収がよいようです」
乳がんのリスクを低下させる「大豆」
体質が違えば、かかりやすい病気にも「お国柄」が出る。
「日本人を含むアジア人の乳房は乳腺の密度が高い高密度乳腺の人が多い。欧米では40%しかいないのに対し、日本では80%もいる。このタイプの乳房を持つ人は、欧米型の乳房に比べ乳がんを4~6倍発症しやすいことがわかっています」
しかし、世界的に見ると日本人の乳がん発生率は低い。その一助となっていると考えられる食習慣がある、と言うのは健康医療ジャーナリストで『日本人のための科学的に正しい食事術』(三笠書房)の著者である西沢邦浩さんだ。
「それは多様な大豆の食文化です。35才以上の日本人女性1万5000人以上を15年以上にわたって追跡した調査によると、大豆イソフラボンを毎日納豆1パック分程度摂っている群では、閉経後の乳がんリスクが4割も減っていました。日本乳癌学会も診療ガイドラインで『大豆食品、イソフラボンの摂取が乳癌発症リスクを減少させる可能性がある』と記しています」(西沢さん)
大豆自体及び大豆イソフラボンの抗がん作用が一因と考えられるが、さらに、大豆イソフラボンを、女性ホルモンのエストロゲンに近い形に代謝できる腸内細菌がいるとその効果が高まるという指摘もある。
日本の女性に急増している大腸がん、背景に食生活の欧米化!?
現在、日本人女性のがん死亡でいちばん多い部位が大腸のがん。これも欧米人と同じ食事をすると、よりかかりやすいことがわかっている。 「大腸がんは、もともと欧米で多いがんですが、ここ50年で日本で急増しました。その背景には食生活の欧米化があると考えられています。特に肉の摂取が主犯ではとされていますが、日本人は欧米人に比べると圧倒的に肉を摂っていないにもかかわらず、大腸がんは減っていない」(奥田先生、以下「」同)
’15年、国際がん研究機関が牛、豚、羊の肉について「おそらく発がん性がある」としているが、日本人は特に気をつけた方がいい。
胃がんの原因、ピロリ菌の型にも民族の違いが
そして興味深いのは、胃がんの原因の多くを占めるピロリ菌にも民族によって違いがあることだ。ピロリ菌は「欧米型」と日本人に多い「東アジア型」とが存在し、前者が胃の出口にすみ着きやすいのに対し、後者は食道に近い部分にすみ着くという差があるほか、東アジア型は胃がんを引き起こしやすいなどの違いがある。
胃がん防止のためには野菜を多く摂ることがよいとされる。含有するビタミンCには発がん性物質の合成を強力に抑える効果があるからだ。
日光浴をしてビタミンDを生成する意味はない
健康によさそうな日光浴も、意味がないのだという。
「欧米、特に北欧の人が日光浴をするシーンをテレビなどでよく見かけます。それはビタミンDを作るための習慣です。日本人はビタミンDの90%を魚から摂取してきました。現在でも、ほとんどの日本人がビタミンDを充分に摂取できています」
では、欧米の人も魚をたくさん摂取すればよいかというと、それも”体質”によって難しいようだ。
「食品からビタミンDを吸収する力は人種によって違うと考えられており、欧米人は魚を食べても、ビタミンDを充分に吸収できない可能性がある。北欧もサーモンなどの産地で多食しますが、それでは必要量を摂り入れることができないため、日光浴が必要なのです
持って生まれた体質を変えるのは難しい。それだけに、自分の体質を知りつくし、それを利用するくらいの気持ちでつきあうことが肝要だろう。
教えてくれた人
奥田昌子さん/医師。『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社)の著書がある。
※女性セブン2019年1月1日号
●「海藻を分解できるのは日本人だけ」など 最新研究でわかった日本人の驚くべき体質