エンディングノート、記載すべきは「金銭関連と医療の意思表示」と専門家。自分の死生観を見つめる機会に|プリントできる「終末期医療の意思表示書」付き
終の住処をどこにするかも、早めに考えておくべき案件だ。自宅なのか施設なのか、自宅なら身の回りの世話を誰に頼むかなど、計画と準備が必要だからだ。希望通りの施設に入るための資金繰りも、50代から始めれば実行しやすい。
「家事ができなくなったり、病気になって初めて、どこか入れるところはないかと探すと、老人ホームで最期を迎えたかったのに、看取り介護の対応をしてもらえない施設しか空いていなかったため、病院でつらい延命治療をすることになった、というケースもあります」
埼玉県の会社員・Kさん(59才)も、83才で亡くなった母の失敗から、すでに10年後に入る予定の施設を決めているという。
「母は80才のとき、自宅を売ったお金で、新築の高齢者向けマンションを購入。ここを終の住処にする予定でした。ところが、入居後ほどなくして転倒して骨折。寝たきりの日々が続いたせいか認知症の症状が現れて、常時介護が必要な状態に。マンションの規定として、常時介護が必要になった場合は、退去しなければなりません。そのため、入居後わずか2年で転居先を探すことになりました」
看取り介護に対応した特別養護老人ホームを希望するも、入居に3年待ちだと言われ、ケアマネジャーと相談して在宅介護に切り替えたという。
「仕事をしながらの在宅介護は地獄でした。幸い3か月後に、看取り介護に対応した介護付き有料老人ホームに入居できたのですが、予想外の出費と手間になりました」
Kさんの母親は結局、その介護付き有料老人ホームで息を引き取ったという。
「母には私がいたからいいですが、私は未婚のおひとりさま。途中で退去しないで済むよう、介護や看護が必要になっても対応してくれるうえ、新築でサービスの充実した施設を探して入居予約をしました。いまは施設で暮らすための資金を貯金し始めています。素敵な施設で安心して暮らすという目的ができたので、仕事にも張り合いが出ます」
死に備えることは、これからどう生きたいかを考えることにもつながる。だからこそ、終活はできるだけ早めに始めた方がいいのだ。
■高齢者住宅の種類と特徴
・対象者
・<費用>
・<入居時費用の目安>
・<月額費用の目安>
・<退出時期>
・<その他>
●軽費老人ホーム(ケアハウス)
<対象者>自立~要支援
<費用>安い
<入居時費用の目安>20万~30万円
<月額費用の目安>7万~15万円
<退出時期>常時介護が必要になったとき
<その他>収入に応じて利用料が決まる
●サービス付き高齢者向け住宅
<対象者>自立~要介護
<費用>比較的安い
<入居時費用の目安>30万~80万円
<月額費用の目安>12万~25万円
<退出時期>重度の認知症・寝たきりになったとき
<その他>安否確認や生活支援サービスが付帯した賃貸型の介護住宅。入居時の条件に要支援・要介護の施設も多い
●認知症グループホーム
<対象者>要介護状態の安定した認知症の人
<費用>比較的安い
<入居時費用の目安>30万~60万円
<月額費用の目安>15万~20万円
<退出時期>状態が悪化したとき
<その他>住民票がある地域の住民のみ入居可能
●特別養護老人ホーム
<対象者>要介護3以上
<費用>比較的安い
<入居時費用の目安>0円
<月額費用の目安>多床型:6万~8万円 ユニット型:10万~18万円
<退出時期>看取りまで可能な施設が多い
<その他>収入と資産により負担限度額認定を受けられる
●高齢者向けマンション
<対象者>入居時自立
<費用>非常に高い
<入居時費用の目安>賃貸は1000万円~、分譲は2000万円~
<月額費用の目安>10万~18万円(介護付きは20万~25万円)
<退出時期>常時介護が必要になったとき
<その他>常時介護が必要になると、施設内の介護棟や系列の施設に移ることも
●住宅型有料老人ホーム
<対象者>自立~要介護
<費用>高いところが多い
<入居時費用の目安>数十万~数千万円
<月額費用の目安>15万~60万円程度
<退出時期>常時介護が必要になると住み替えた方がいいケースも
<その他>入居時に自立・要支援・要介護などの条件があったり、介護等級により費用がかかる施設も
●介護付き有料老人ホーム
<対象者>要支援~
<費用>高いところが多い
<入居時費用の目安>数十万~数千万円
<月額費用の目安>15万~80万円程度
<退出時期>看取りまで可能な施設が多い
<その他>介護度の高い入居者向き。自立の人が入居する場合は追加費用がかかることが多い
参考文献/『家族に頼らない おひとりさまの終活~あなたの尊厳を託しませんか』(ビジネス教育出版社)より。
教えてくれた人
行政書士 黒澤史津乃さん
OAGライフサポートに在籍。「家族に頼らず老後とその先を迎える」ことを目標に20年以上にわたりシニア世代の人々の介護、身元保証、死後事務などの法務問題に携わる。
取材・文/前川亜紀 イラスト/白ふくろう舎
※女性セブン2023年5月4日号
https://josei7.com/
●エンディングノートを親子で記入するときの尋ね方例 子が「親との終活準備」をする際の上手な話し方【専門家監修】