暮らし

「自分が正しいと言い張る、ひがみっぽくなる…」実例イラストで解説!老いた親と円滑にコミュニケーションするコツ【専門家監修】

事例1.同じ話を何度も繰り返す

●おすすめの対応法

×】「その話、100回以上も聞いたよ」

【○】「へえ、おもしろいね。それでどうしたの?」

 年を取ると同じ話をしがちだが、これは脳の前頭前野の衰えにより直近の記憶が残りにくくなるため。

「繰り返し話すのは伝えたいという思いが強い出来事なんです。それをさえぎると、話す気力がそがれ、プライドも傷つきます。同じ話が出ても初めて聞いたように聞くことが大切です」(榎本さん)。

事例2.約束を忘れる

●おすすめの対応法

×】「また忘れたの!? しっかりしてよ」

【○】「忘れるのは仕方がない。次はカレンダーにメモを」

「老化とともに脳の機能は衰えますから、物忘れが多くなるのは当然のこと。さらに、興味がないこと、気乗りしないことは聞き流してしまう傾向も強くなります」(榎本さん)。

 忘れても怒らず、カレンダーやメモで目立つようにマークしてあげよう。本人が興味を持つよう、親の好物を持って行って伝えるなど、伝え方を工夫するのも◎。

事例3.怒りっぽくなる

●おすすめの対応法

×】「(無視)」「怒らないでよ!(と怒鳴る)」

【○】「一休みしようか」「あっちに素敵な店があるよ」

「脳の前頭前野が萎縮すると、感情の制御がきかなくなるんです。怒りっぽくなったり、逆にすぐ泣くようになるのは老化のせいと考え、気をそらすような会話をするのがおすすめです」(榎本さん)。

 ただし、あまりにも喜怒哀楽が激しいときは認知症の可能性も。その場合は、一度医師に相談を。

事例4.自分が正しいと言い張る

●おすすめの対応法

×】「それは違うよ、なぜなら(と論破する)」

【○】「そうだね」「さすが、よく知っているね」

「プライドが高い人ほど、高齢になるにつれて頑固になる傾向が。対処方法としては、ほめてプライドを満足させてあげましょう」(榎本さん)。

 正論をかざして論破したり、上から目線で説教したりするのは逆効果だという。ほめられない、聞き入れられない場合でも、まずは「そうだね」と、話を一度受け入れることが大切だ。

事例5.だまされやすくなる

●おすすめの対応法

×】「あれだけ注意したのに!」

【○】「そう。次は相談してね」

「老化とともに分析力と判断力が低下するので、だまされやすくなります」(榎本さん)。

 被害に遭ったことを責めると、次に何か起きても隠すようになる。寄り添って、何でも話してくれる関係性を築くことが大切だ。

事例6.ひがみっぽくなる

●おすすめの対応法

×】「そんなこと、言わないでよ!」

【○】「わかるよ(と背中をさする)」

「ひがみは、自分を大切にしてほしいという心の叫び。さみしさや不安の裏返しなので、その気持ちを受け止めましょう」(榎本さん)。

 気持ちを落ち着かせるには、スキンシップが有効だという。

事例7.何事も億劫がる

●おすすめの対応法

×】「ちょっと!早くしてよ」

【○】「手伝うから、やってみようよ」

「年齢とともに疲れやすくなり、ひざや腰などに痛みが出る場合も。すると体を動かすことが面倒になり、気力も低下します」(尾渡さん)。

 ひとりでやらせるのではなく、一緒に行動するよう提案するのがおすすめ。

事例8.まだ若いと言い張る

●おすすめの対応法

×】「もう立派な老人だよ」

【○】「そうね、10才は若く見えるよ!」

 自分を若いと思っている人の方が、元気でいられるという。

「親を否定しないことが大切です。そうね、若いよね。でも、気分転換にちょっと出かけてきたら?などと促すのがおすすめです」(尾渡さん)。

事例9.若い頃の自慢話ばかりをする

●おすすめの対応法

×】「はいはい(と聞き流す)」

【○】「すごいね。もっと聞かせて」

 若い頃の自慢話を繰り返すのは、いま、自分の存在価値が見いだせないから。

「新しい話題がないので過去の栄光にすがってしまうのです。家族が世界を広げるお手伝いをしてあげるのがおすすめ」(榎本さん)。

事例10.お金を隠したり、盗(と)られたと疑う

●おすすめの対応法

×】「盗むわけないでしょ!」

【○】「それは困ったね。一緒に探そう」

 老後の不安のため、お金への執着は強くなる。それを知った上で対応しよう。

「大切だから隠すものの、その場所を忘れてしまいます。一緒に探そうと味方であることを伝えましょう」(榎本さん)。

教えてくれた人

榎本睦郎さん/医師。榎本内科クリニック院長、日本老年医学界専門医。高齢者を中心とした地域医療に取り組む。著書に『老いた親へのイラッとする気持ちがスーッと消える本』(永岡書店)など。

尾渡順子さん/介護福祉士、社会福祉士、認知症ケア上級専門士などの資格も持つ。介護現場で働きながら、介護従事者にコミュニケーション方法などを教える活動も行う。著書に『介護で使える言葉がけ シーン別実例250』(つちや書店)など。

取材・文/前川亜紀 イラスト/たばやん

女性セブン2023427日号
https://josei7.com/

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