100円グッズで日常生活の「できない」を「できる!」に【福祉用具専門相談員が提案】
高齢になると「握力が弱って瓶のフタが開けられない」「指先が上手く動かせずペットボトルのフタが開けにくい」など困ったことが増えてくる。そんな日常生活の困りごとに、身近な100円グッズが役立つという。福祉用具専門相談員の山上智史さんにおすすめの100円グッズについて教えてもらった。
100円グッズで介護に快適な環境づくりを
「高齢者の方や介護が必要な人の日常生活では“できないこと”ばかり注目されがちです。しかし、道具を使って環境を人に合わせることで、できないこともできるようになります。
介護に適した環境のことを、私は“介適環境”と呼んでいます。それを実現するのが100円ショップのプチプラアイテム。
例えば、片手に麻痺があって、油性マジックのフタが開けられない人には、ノック式の油性マジックなら片手だけで使えます。どうしたらできるようになるかを考えながら、100円ショップを歩いてみると、いろんな出会いがありますよ」
こう話すのは、高齢者などに適切な福祉用具を提供する福祉用具専門相談員の山上智史さんだ。
山上さんは、現職に就く前に100円ショップへの就職も考えたという100円ショップ愛好家でもある。日頃から介護に取り入れられそうなグッズをリサーチし、100円ショップの商品を介護生活に活用する提案をしている。
そんな山上さんが、介護・福祉の専門家向けの臨床研究大会で発表した『100均グッズ✕介護 プチプラ介適環境づくり』に多くのプロ達から反響が届いたという。その中から高齢者の生活シーンで役立つ100円グッズをピックアップしてご紹介する。
「できない」ことを「できる!」にする便利な100円グッズ5選
高齢者の生活シーンで「困った!」ことを解決するお助け100円グッズを山上さんがセレクト!
「瓶のフタが開けられない!」→ビンオープナー
瓶やペットボトルのフタなど、手指の力が弱った高齢者には開けにくいことも。そこで便利なのが100円ショップで多くの種類を取り扱っているオープナーだ。
「ペットボトルのフタが開けられないと困っている高齢者の方は結構いらっしゃいます。小さなキャップを指先でつまんで回すというのは、片手に麻痺がある方にとっては難しいことも。麻痺のないほうの手でボトル本体を握って回したら開いたということも。何ができないのかをよく観察してみると、やり方次第でできるようになることもあります」
「握力が弱ってきた!」→シリコーン伸びラップ
滑り止めとしても活用できる繰り返し使えるラップ。まな板の滑り止めや、瓶のオープナーとしても活用できる。
「片手に麻痺があって力が入らない!」→片手ふとんばさみ
ふとんばさみはしっかりしたバネで意外と力が要ることも。片手で使えるふとんばさみならワンタッチで使えて便利。
「加齢や疾患などで片手が使いづらいという方にとって、両手で布団ばさみを広げて閉じるのが難しいことも。片手でさっとはさめるものなら、力もいらず、家事の時短にもなりますね」
「ドアがうまく開けられない!」→ドアノブレバー
ドアノブにはめるだけで開けやすくできるレバー。レバー式なので手首をひねって回さなくてもドアを開閉できる。
「麻痺によってドアノブが上手く回せないとうケースもあります。介護を必要とされる方の行動をよく観察して困っていることを見つけたら、100円ショップで解決できるグッズを探してみてください。
お住まいのドアノブのタイプによっては付けられない場合もあるので、住環境を再チェックしておくことも介適環境づくりには大切です」
「火を使うのが心配!」→火を使わないろうそく
火が灯るろうそくのように見えるLEDライト。「火を使わない線香」もある。
「お仏壇にろうそくを灯して拝むのが習慣だった高齢者の方に、家族が危ないからとその行動を制限していたというケースがありました。LEDタイプのろうそくやお線香なら安心して使えますよ」
100円グッズで選ばないほうがいいものも
このほか、お薬ケースやうがい受け、入れ歯を保管するケースなど高齢者に役立つものはたくさん販売されている。ただし、選ぶ際には注意も必要だという。
「最近は、100円ショップで杖も扱っていることが多いですが、
在宅介護が始まると、多くの方が必要なものをデパートやスーパー、福祉用具のカタログなどで揃える方が多いと思います。
しかし、介護生活は長く続く可能性もあるため、なるべくコストを抑えたいもの。介護が始まったら、まずは環境を整えることが大切。100円グッズを有効活用しながら、お金をかけずに“介適環境”を目指してほしいですね」
教えてくれた人
福祉用具専門相談員・山上智史さん
福祉用具貸与事業所にて介護福祉士として介護現場を経験。現在は福祉用具貸与事業所「K-WORKER」と便利屋事業(住まいるサポート)の管理者を務める。福祉用具専門相談員としての現場経験をいかした「高齢者在宅の自立支援・介助者負担の軽減を目的とした介適環境づくり」を実践している。https://k-worker.co.jp/
取材・文/本上夕貴
●高齢の母の薬ののみ忘れに役立った100円ショップの「お薬」関連アイテム5選