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『星降る夜に』6話 鈴を執拗に攻撃する人物がついに判明!今後の展開にゾクゾクする

 吉高由里子演じる産婦人科医と北村匠海演じる遺品整理士のラブストーリー『星降る夜に』(テレビ朝日系 火曜よる9時〜)。脚本は来年のNHK大河ドラマ『光る君へ』(吉高由里子主演)を手掛けることでも話題のベテラン・大石静。『鎌倉殿の13人』の全話レビューを担当したライター・近藤正高さんが6話を考察します。ラスト、ついに現れた雪宮鈴を誹謗中傷し続けている人物。その思惑はどこに向かうのでしょう? 今夜7話放送。

死は生の続き

『星降る夜に』の前回のラストで、柊一星(北村匠海)が勤務先のトラックに社長の娘の北斗桜(吉柳咲良)を乗せていたのを、バレンタインデーのその日、一星とデートする予定だった雪宮鈴(吉高由里子)が目撃してしまう。しかも、交差点で停車中、桜は一星に顔を近づけていた。まさかキスしたんじゃないよなあ……と思っていたら、そのまさかだった。

 今回、第6話の冒頭では、このとき桜が一星からガキ扱いされ(一星だって鈴に子供扱いされてるくせに)、とっさに彼の唇を奪ったのだ。何て大胆な子! 桜はそれに続けて、一星が誰を好きであろうと、自分は一星のことが好きだと告白する。

 てっきり、鈴はその様子を見て、一星が浮気したと勘違いしてひと波乱起こるのかと思いきや、そういう展開にはならなかった。このあと、鈴は一星の自宅で2人きりになった場面で、一星が桜から告白されるのを見たと言うと、彼はちょっとむきになって「俺が好きなのは鈴だから」と伝える。これに対し彼女は「わかってる」と答えた。

 それにしても、鈴はなぜ桜が一星に告白したとわかったのか、トラックの車内での会話など外に聞こえるはずがあるまいに……と一瞬、疑問に感じたのだが、そう思った筆者が浅はかだった。桜と一星は手話でやりとりしていたのだから、鈴に筒抜けなのは当然である。とはいえ、鈴がほんの短期間で、他人が手話で話す内容を即座に理解できるほど、手話をマスターしたことには驚かされる。気づけば、一星ともスムースに会話できるようになっていて、互いに意思を伝えるのにほとんど支障はない。

 鈴は一星の家のバルコニーから彼と星空を眺めた。このときの2人の会話も印象深い。一星が、夜空の星のなかには、地球から何万光年も離れていてすでに存在しないものもあるということから「星って生と死の境目にあるような、生と死をつなげてるような感じがする」と言えば、鈴は自分の仕事(産婦人科医)もそうかもと返した。

 ここから鈴は「命が生まれるその隣で、当たり前に死産がある。そのあいだで医者は何もできない。残された人たちを救うこともできない」と、自らの経験を踏まえて話した。これに対し一星は「生と死はあまり変わらないのかも。死は絶望とか終わりじゃなくて、生の続きなんじゃないかって思う」と遺品整理士としての実感を語る。このドラマではなぜ主人公の2人を産婦人科医と遺品整理士という職業に設定したのか、その理由をうかがわせるような会話だ。それぞれ人の生と死を見届けることを生業とする2人が、星降る夜に出会ったのも、星の導きであったのか。

 一星はさらに続けて「人は明日は当たり前に来ると思うから、近しい人の死に戸惑ってしまうことも多い。だから明日死んでも悔いがないように、俺は伝え続けるよ」と言ったかと思うと、いきなり鈴に一緒に暮らそうと切り出すのだった。

 このあと、鈴と一星は初めてベッドをともにする。翌朝、鈴が目覚めると、いきなり一星の祖母が部屋に入ってきて、朝ご飯だと告げた。そりゃ、プライバシーも何もないこんな家では、一星も出たくなるだろう。ただ、祖母は一星と同様にろう者だが、それをハンディキャップと感じているようなところはみじんもなく、いつも明るい。一緒に暮らしていると楽しそうではある。ちなみに祖母役を演じる五十嵐由美子は、日本ではまだ数少ないろう者俳優だ。

時間差で明かされる真相

 一星は自宅デートの場面で、先日、鈴が何者かに誹謗中傷を受けたとき、真っ先に彼女の家へ駆けつけた産院の同僚・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)に嫉妬して、鈴につい当たってしまったことを謝ってもいた。鈴に子供扱いされている一星だが、前回、軽口を叩いて傷つけてしまった同僚の佐藤春(千葉雄大)にあとからちゃんと謝ったことといい、案外、大人なところもある。いや、むしろ大人のほうが素直に謝れないものかもしれない。

 他方、深夜は、誹謗中傷された鈴が心配で産院で一夜をともにしたとき、彼女が眠りながら手話で何やら“寝言”を言っているのを目撃していた。今回、一人でいるときにふとそれを思い出し、それまで鈴の弟だと思い込んでいた一星がじつはそうではないとようやく気づく。

 桜も桜で、一星は鈴が好きだという事実を認め、そのうえで鈴にある頼み事を持ちかける。生後まもない桜を置いて父と離婚した彼女の生みの母親が、養母である北斗千明(水野美紀)に突然手紙を寄越し、娘に会いたいと伝えてきたので、付き添ってほしいというのだ。なぜ自分についてきてもらおうと思ったのか、鈴が桜に訊けば、一星が好きな人がどんな人なのか知りたいと思ったからだという。行きのバスのなか、鈴と桜が離れて座っていたのは、微妙な関係を感じさせたが、生母の家へ向かう道すがら話すうちに距離を縮めていく。

 桜の生母(吉井怜)は地味な感じの人だった。ここから桜と生母の会話が描かれることも、出生の秘密が明かされることもないまま、その夜、彼女は帰ってくる。鈴との道中の会話のなかで本人が打ち明けていたとおり、桜が自分の本当の母親は千明だと思っているという事実だけで十分ということだろう。生みの母との面会はそれを強調するための設定にすぎなかったのだ。そんな娘の思いなどつゆ知らず、千明が桜の出かけているあいだ、彼女がそのまま帰ってこないのではないかと柄にもなくうろたえていたのがおかしかった。

 それにしても、桜が生母に会いに行くにあたり、髪をピンクに染めたのはなぜなのか。帰ってからすぐに戻したのを見ると、(停学処分になるからと言っていたとはいえ)相手に自分の素の姿を見せたくないという思いもあったのかもしれない。

 一星と桜のトラックでのやりとりもそうだったが、時間差で事の真相が明かされることが、このドラマではたびたび出てくる。今回でいえば、鈴の勤務する産院の看護師長・大山鶴子(猫背椿)とその息子のチャーリーこと正憲(駒木根葵汰)の過去もあきらかにされた。シングルマザーだった鶴子は、仕事にかまけて息子にあまりかまってこなかったところ、彼が高校に入っていきなり暴れ出し、一旦別居したというのだ。いまの正憲は髪をピンクに染め、いかにも軟派なキャラクターだけに、そんな過去があったとは意外だった。こうして登場人物たちの過去が徐々に明かされていく分、親しみが湧いてくるような気もする。

 このドラマでは毎回、一人の俳優がゲスト出演することもお約束になっている。今回のゲストは磯村勇斗で、一緒に暮らすと決めた一星と鈴が部屋を探すにあたり、物件に案内する不動産屋の役であった。いまをときめく磯村が、物語に深くかかわることもなく、一場面のみの登場と、何ともぜいたくな起用であった(じつは一星役の北村匠海とは親友ということでのサプライズ出演であったようだ)。

 ぜいたくな起用といえば、深夜の亡き妻役の安達祐実もそうだ。以前、妻が妊娠中に病院に担ぎ込まれた回想シーンでは顔はほとんど見えず、エンドロールでクレジットが出てようやく安達が出演していたことに気づかされた。今回も、葬儀の回想シーンで遺影として一瞬の登場であった。今後、がっつり出てくることはあるのだろうか。同情するなら出演シーンを増やせとか言い出さないかと、つい心配になる。

 さて、今回は前回までとくらべると平穏な回だったなー……と思っていたら、ラストに来て、これまで鈴を執拗に攻撃し続けてきた人物の正体があきらかになった。それは、鈴が大学病院時代に担当し、治療のかいなく亡くなってしまった妊婦の夫であった。演じ手もずっと伏せられてきたが、ムロツヨシだと判明する。コミカルな役の多いムロをヒール役に持ってきたところが新鮮だ。とうとう鈴の前に現れたムロ演じる男が、次回、どんな事態を巻き起こすのか、ゾクゾクする。

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

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