健康になりたいなら「血液の量を増やしなさい」専門家が説く今すぐできる8つの対策
冬場は、寒さによって血管が収縮し、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患を発症して命を落とす人の数が最も増える。体の不調を改善するために目指すべきは「血流たっぷり」だと、『血流がすべて解決する』などの著書がある漢方薬剤師の堀江昭佳さんは話す。特に最近は、長期化するコロナ禍での運動不足や食生活の乱れ、閉塞感によるストレスなどにより、血が足りていない人が増えているとも。そこで、血を増やすための具体的な対策について堀江さんに教えてもらった。
血を増やす食事「肉、パンよりご飯を」
心身を蝕む血流不足を解消するためには何が必要なのか。堀江さんが真っ先に取り組むべきとアドバイスするのは、食生活の見直しだ。
「まずは胃に優しい食生活をすることを心がけてほしい。血流不足の人は、胃腸が弱っていることが多いのです。胃腸の機能が低下すると栄養を充分に消化吸収できずに、血を作るための成分を体に取り込みづらくなることが原因です」
胃をいたわりつつ、血を作るための原料や成分もしっかり摂取したい。
「良質な血を作るのに必要なのは鉄分とたんぱく質です。ですから両方がバランスよく含まれている肉は、血を増やすためにうってつけの食材です。肉が含有する『ヘム鉄』は、ほうれん草などの野菜に含まれる『非ヘム鉄』の5倍の吸収率を誇ります。
中でも、良質なたんぱく質が多く含まれており、お値段もリーズナブルな鶏肉は特におすすめです。薬膳では骨に近い部位は血を作る力が高いとされているので、骨付きの手羽先や手羽元をスープにするのがおすすめの食べ方です」
主食はパンよりもご飯を選ぶのがベター。
「古くから日本人が食べてきたお米は、ぼくたちの体に合った消化しやすい食材です。ぼくが診た中でも、血が足りていない人は圧倒的に“パン食派”が多かった。また、ダイエットや糖質制限などで炭水化物を極端に避ける人がいますが、生命活動を維持するのに必要なエネルギーなので、お米でしっかり摂ってほしい」
よく噛んで食べることも大切
食事の量と時間にも気を配ろう。堀江さんが続ける。
「就寝中は胃腸の掃除時間でもあるので、夕食は控えめにして負担を減らすこと。少しお腹がすいたと感じるくらいで眠るのがちょうどいいのです。その代わり、朝食は抜かずにお米などをしっかり食べてください」
食生活の改善と並行して意識したいのは、よく噛んで食べることだ。神経内科医の内野勝行さんが言う。
「脳の海馬が萎縮するとアルツハイマー型認知症の発症につながるといわれていますが、硬いものを噛むことで海馬周辺の血流が上がり、萎縮を予防できると考えられています。特におすすめなのがかまぼこやガムなど、適度な硬さのある食品です。かまぼこを1回噛むごとに、脳に運ばれる血液が約5ml増えるという研究もあるほどです」(内野さん)
水は1日2リットルは飲み過ぎ
反対に、血液量を一時的に減らしてしまうものもある。
「アルコールやカフェインには利尿作用があるため、体液の水分を排出し、その結果、血液量を減らす原因になります。飲みすぎたときは、スポーツドリンクなどでしっかり水分を補給しましょう」(能勢さん)
堀江さんは、水の飲みすぎにも気をつけてほしいと話す。
「水分の摂りすぎは胃腸に負担がかかるうえに、水が体内にとどまると血流も悪くなる。たくさん飲んだ方がいいと思っている人もいますが、1日2Lは飲みすぎです」
降圧剤の服用には注意
内野さんは降圧剤で血圧を下げると、脳に血液が行き届かなくなると警鐘を鳴らす。
「特に女性は更年期を迎える50代になると、血圧が上昇して降圧剤をのむ人が増えますが、服用はできるだけ避けた方がいい。
基礎疾患がなく健康で上が160mmHg、下が100mmHgくらいなら、のまなくても問題ありません。加齢で血圧が上がるのは、筋力低下や血管が細くなったために体のすみずみに血液を送りにくくなったからです。
しかし降圧剤の多くは血流を停滞させて血圧を下げるメカニズムを持っているため、服用すればさらに血液の循環が滞り、脳に血液が行き届かなくなる。長期服用をすれば認知症のリスクが高まります。特にカルシウム拮抗剤は脳の血流を低下させる代表的な降圧剤とされます。私のクリニックでは極力のまないように指導しています」
血を増やす生活習慣「生活リズムを整える」
たっぷりした血液を作るためには、生活リズムを整えることも重要だ。
「漢方の世界では午後11時~午前1時に体の『陰』と『陽』が入れ替わり、自律神経が整う時間だといわれています。この時間に体をしっかり休めていなければ、血は作られにくくなります。夜11時までには布団に入っているようにしてください」(堀江さん)
決まった時間に眠るためには入浴が欠かせない。
「シャワーではなく湯船につかってください。お湯にゆっくりつかって温まると体温が上がります。それを冷やそうとする体の作用で就寝前は体温が下がって、良質な睡眠につながります。また、体が温まれば血流も改善する。40℃のお湯に10~20分ほどつかるのがベストです。高すぎると交感神経が刺激されて覚醒してしまいます」(堀江さん)
運動後に牛乳やヨーグルトを
能勢さんは運動の必要性を力説する。
「自分が体力の限界だと感じる運動を10点としたときに、6~7点ぐらいの少しきつめの運動を取り入れてほしい。その際に筋肉で産生される乳酸には、体を刺激して血液量を増やす働きがある。軽い負荷がかかる運動であれば、なんでもかまいません。例えば早歩きとゆっくり歩きを3分ずつ交互に繰り返すのもいいし、駅でエスカレーターではなく階段を使うだけでも効果があります。1日10分、週に合計60分以上行ってください。大切なのは続けること。積み重ねて行うことで、血液量は必ず増えていきます」
さらに能勢さんは、運動のすぐ後に牛乳やヨーグルトを摂ることによって、運動の効果が増すと話す。
「運動して30分以内に乳たんぱく質と糖質をセットで摂ると、効率よく筋肉に取り込まれて、筋肉が太くなるうえに、肝臓に取り込まれて、アルブミン合成を促進し血液量が増加します。牛乳には乳糖が含まれているのであえて糖分を加える必要はありませんが、無糖ヨーグルトを食べるならジャムやはちみつを加えるといいでしょう」
体を動かすことはいいことだが、血を増やすうえで逆効果になる運動もある。
「汗が大量に出るホットヨガは避けた方がいい。血が足りていない人が汗をかきすぎると、漢方の世界では血が失われるといいます。だるさや疲れを強く感じる場合はやめましょう」(堀江さん)
生活習慣を変えてもすぐに結果を実感できないかもしれないが、案ずる必要はない。「赤血球の寿命は120日。つまり体内の血液は4か月で入れ替わります。ですから最低でも4か月は続けてみてください」(堀江さん)
しっかり食べてよく眠り体を動かして、今冬は血液たっぷりの“血の気の多い女”を目指したい。
■「血液たっぷり」のためにやるべきこと
【胃腸をいたわる】
血液不足の人は胃腸が弱って血を作れなくなっているケースが多い。
【鉄分とたんぱく質を摂る】
両方がバランスよく含まれているのは鶏肉。特に肉類のヘム鉄は野菜よりも吸収されやすい。
【パンよりご飯】
日本人の体に合っていて消化しやすく、胃腸に負担をかけないのはお米。
【夕食は控えめに】
就寝中は胃腸の動きが止まるため、負担を減らすために夕食は控えめに食べる。
【硬いものを噛む】
硬いものを噛むと脳の海馬周辺の血流が上がり、萎縮を予防できる。おすすめはかまぼこやガム。
【少しきついと感じる運動】
運動の際に筋肉で産生される乳酸には血液量を増やす働きが。週に合計60分以上行うのが理想。
【運動後に牛乳やヨーグルトを摂る】
運動後30分以内に乳たんぱく質と糖質をセットで摂ると、血液を増やすアルブミンが合成されやすくなる。
【夜11時までに布団に入る】
この時間までに眠ることで血が作られる。入浴して寝つきをよくするのもおすすめ。
■「血液たっぷり」のために避けるべきこと
【アルコールの摂取】
利尿作用があり、水分が排出されてドロドロした質の悪い血液が作られる原因に。カフェインも同様。
【水分の過剰摂取】
水分の摂りすぎは胃腸に負担がかかるうえ、水が体内にとどまることで血流も滞る。
【降圧剤の服用】
降圧剤は血流を停滞させて血圧を下げるゆえに、脳に血液が行き届かなくなる。
【ホットヨガ】
血が足りていない人がホットヨガをすると血液不足のもとに。だるさや疲れを感じる場合は中止すべし。
教えてくれた人
堀江昭佳さん/漢方薬剤師。著書に『血流がすべて解決する』など。
能勢博さん/信州大学大学院特任教授でスポーツ医科学が専門。
内野勝行さん/神経内科医。
※女性セブン2023年2月9日号
https://josei7.com/
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