お腹のはりや胸やけは”腸のガスだまり”かも?「腸ストレッチ」でリセット【医師監修】
松生クリニック・院長の松生恒夫さんは、「腸に不調をかかえている人が最近増えている」と語る。腸内環境は食べ物だけが原因ではなく環境的な要因も考えられるという。なんとなくお腹に張りを感じるという方は必見。腸の機能を向上する「腸ストレッチ」を実践して欲しい。
お腹に張りをかかえている人が増えている
お腹がポッコリ出てしまうのは、「骨盤底筋の低下」だと、広島大学大学院医系科学研究科講師で理学療法士、『骨盤底筋の使い方』(池田書店)の著者でもある前田慶明さんは話す。
だが、それ以外に、便秘や腸内環境の悪化による代謝の低下、ガスだまりも、下腹が出る大きな要因だ。
『専門医が教える 腸ストレッチでお腹スッキリ!』(マイナビ出版)などの著書がある、松生(まついけ)クリニック院長の松生恒夫さんは、最近、腸の不調を訴える人が増えていると語る。
「中でも多いのが『腹部膨満感(お腹の張り)』です。もともと便秘症の人は特に症状が強く出る傾向にありますが、最近は便秘を抱えていなくても、お腹の張りを感じるようになった人が増えています。これを『停滞腸』といいます」
腸は“第二の脳” ストレスで腸の働きが低下することも
腸は“第二の脳”ともいわれ、腸内環境は脳機能やストレスにも深く関与すると考えられている。いつまでたっても終わらないマスク生活に異常な物価高など、ストレスの原因を思い浮かべればキリがない。こうした環境的な要因も、腸の不調を抱える人が増える一端を担っていることは間違いないだろう。
松生さんによれば、腸は約2000もの神経で脳とつながっており、互いに影響し合っている。
「腸は副交感神経が優位なときに活発に動くため、ストレスによって交感神経が優位になると、働きが低下します。その結果、腸内にガスがたまりやすくなる。特にみぞおちのあたりに位置する『横行結腸』という場所にガスがたまると、胃を圧迫して内容物が滞り、悪心や胸やけ、食欲不振などの症状につながります」(松生さん)
そして、その不快感は約2000本の神経を介して脳に伝わり、さらに腸内環境が悪化する悪循環に陥る。腸にガスがたまれば、腸の働きはさらに低下し、便秘がひどくなる恐れもある。すると、頭痛や倦怠感、肌荒れ、肩こりなどにもつながりかねない。
内・外側からの腸管機能を上げる
ヨーグルトなど、食べ物で腸内環境を整えるのも、もちろん有効。だが、体の内側だけでなく外側からもアプローチして、腸管機能そのものを向上させることも重要だ。
ガスは腸の屈曲した部分にたまりやすく、特に大腸の右側の「上行結腸」にたまると、なかなか抜けにくい。この上行結腸から、胃を圧迫しやすい横行結腸、下行結腸…と順番にガスを手で移動させて体外に排出させることで、腹部膨満感を解消し、腸の機能を向上させることができるのだ。横になって行うことでリラックスできるため、腸のストレス解消にも役立つ。
寝たまま出来る「腸ストレッチ」
【1】左腕をまくらにして頭を支えながら寝そべり、右のわき腹を右手のひらで押す。
【2】あお向けになり、右手のひらで腹の右側から左側へ、押しながらなでる。
【3】右腕をまくらにして頭を支えながら寝そべり、左のわき腹を左手のひらで押す。
【4】うつ伏せになって深呼吸する。
出典:松生恒夫『専門医が教える 腸ストレッチでお腹スッキリ!』
日常から正しい「姿勢」と「呼吸」を意識すること
姿勢の悪さやストレスなど、内臓の不調の原因は「体の外側」にある。だからこそ、ストレッチで外側から整えることも可能なのだ。
だが、せっかく整えても、同じような生活を続けていては、すぐに元に戻ってしまう。大切なのは、日常生活で正しい「姿勢」と「呼吸」に気をつけることだ。
整体師の片平悦子さんはこう語ります。
「いすに座るときは、骨盤を立てることを意識してください。うまく骨盤を立てるには、いすに浅く腰掛けてから、“お尻歩き”をするように後ろに移動して深く腰掛け、背もたれに寄り掛かりましょう。そうすると骨盤が立ち、姿勢が安定します」
骨盤さえ安定していれば猫背になることはなく、猫背にならなければ肩甲骨がズレることもない。背筋が伸び、横隔膜ものびのびと動くことができる。
体を動かすことも習慣づけよう
広島大学大学院医系科学研究科講師・理学療法士の前田慶明さんは
「正しい姿勢を身につければ、骨や筋肉、内臓の衰えを予防したり、遅らせることが期待できます。でも、できるだけ座りっぱなしは避けて、スマホやパソコンを使う時間はできるだけ減らしてください。エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、簡単なことで充分なので、体を動かす習慣をつけてほしい。少なくとも、1日10回の深呼吸を」
と、話します。
かばんを持つ手を日によって交互に代えたり、骨盤底筋にダメージを与えるきつい補正下着を避けたりするだけでもいい。
もうすぐ師走。寒さや忙しさ、食べすぎ、飲みすぎは毎年のことながら、今年はいまだに油断ならない感染状況に値上げ問題など、内臓にとっても厳しい日々が続く。クタクタに疲れた日もイライラする日も、ストレッチで内臓をいたわれば、あなた自身の健康にもつながると、覚えておいてほしい。
教えてくれた人
松生恒夫さん/松生クリニック院長、前田慶明さん/広島大学大学院医系科学研究科講師・理学療法士、片平悦子さん/整体師
イラスト/勝山英幸
※女性セブン2022年12月8日号
https://josei7.com/
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