妻から離婚宣言!崖っぷちから夫婦関係が改善した実例「共感が大切」専門家が指南
厚生労働省の調査によると2020年の離婚件数は約19万3000件、うち21.5%は同居期間が20年を超えた夫婦の離婚だったという。長年連れ添った夫婦はどのような瞬間に別れを考え、またどうやって関係を修復したのだろうか? 実話に基づくエピソードに、多くの夫婦関係を見てきた専門家にアドバイスいただいた。
【エピソード1】「がんで手術」が夫の態度を変えた
夫(61才)は、家事や育児の協力はしないうえ、私が体調を崩し、寝込んでいると、「それくらいでサボるなよ」と不機嫌になるタイプ。これまではおちおち風邪もひけませんでした。
しかし、3年前に娘が結婚して家を出た直後、私に子宮がんが見つかりました。子宮摘出の手術を受けることになったのですが、入院は5日程度でその後は自宅療養になるとのこと。私が寝込んでいると夫の機嫌が悪くなる…それでは療養できないと悩み、娘に相談すると「いつまででもうちにいて」と言ってくれたのです。
そこで手術の前日、夫に、「実は子宮がんが見つかり、手術することになりました。退院後は娘の家で療養するので、今後はひとりで暮らしてください」と伝えたんです。
すると、「なんでだ? すぐにうちに帰ってこい」と言うので、
「あなたはこれまでも病気の私に家事をさせてきたでしょ。さすがに今回は無理。本音を言えば、これを機に離婚したいの」と伝えたのです。
すると夫はショックを受けたようで沈黙したままでした。
翌朝、私が病院へ行こうとすると、夫が玄関で待っており、車で送ってくれるというじゃありませんか。それだけでなく、その後毎日見舞いに来たんです。退院の日も迎えに来てくれ、
「これからは何もしなくていいから。しっかり治してくれ」
と言い、帰宅後はベッドに寝かせてくれました。家事なんてできなかったのに、部屋は掃除が行き届き、台所からはおだしのいい香りが…。私の入院中に、料理を学んだようです。
そういえば、夫を好きになったのは、後輩に対する面倒見のよさだったなと思い出しました。夫はその後、献身的に看病してくれたので、それをいいことに私も「アイスが食べたい」とか「着替えを持ってきて」などと、召使いのように扱って、積年の恨みを晴らしてやりました(笑い)。手術が夫婦間の“病巣”もとってくれた気がします。(64才・専業主婦)
専門家からのアドバイス
「“思い出遺産”を堀り起こしてみよう!」
「“専業主婦の妻なら離れていかないだろう”とあぐらをかいている夫は実際多いです。永遠の別れ(死)がちらつかないと、妻の大切さに気がつかないんですよね。しかし夫が反省をしているようなら、夫とのいい思い出を掘り起こし、許してあげれば、夫婦関係はグッと改善されるはずです」
【エピソード2】「妻の社会復帰」でお互いの立場に共感
「おまえはいいよな、働かないでいいんだから」
これが夫(52才)の口癖。家事も2人の子供の育児も私ひとりでやっていましたが、私自身、養ってもらっているという負い目を感じていたので、黙っていました。それに私は、子供たちが高校に入ったら再就職して離婚しようと決めていたのでまだ耐えられました。
そして結婚18年目。念願の再就職が決まりました。夫に、「私も正社員になったから、あなたと同等よ。家事は分担してもらいます」と言うと、「ふざけるな。おれと同じだけ稼いでから言え」とキレられました。
そのときも黙って耐え、3年で夫の給料に追いつくところまで稼ぎ、5年で夫の給料を超えました。これでいつでも離婚できるという自信が生まれましたが、同時に、社会で働く大変さにも気づきました。理不尽な上司、仕事を押し付ける同僚…夫もつらかったから、私に当たっていたんだなと思うように。
だからといって許したわけではなく、夫には給与明細を見せ、離婚届を突きつけました。すると呆然としつつも、「チャンスが欲しい」と‥‥。
それからは、確かに態度が改善。私をほめてくれるようになりました。ご機嫌取りでしょうが悪い気はしません。会社帰りにバーで互いの仕事について話すことも。それぞれ何に悩んでいるか、同じ立場になったことで見えるようになり、前よりは理解が深まったと思っています。(50才・会社員)
専門家からのアドバイス
「共感する、会話する、だから思いやれる」
「失礼なことを言う夫に対し、“なぜこの人はこんな発言をするのか”と、冷静に想像することで、相手の気持ちを理解したり共感できることもあります。共感し会話することが夫婦には必要。この夫婦は、会社での夫のつらさを、同じ立場になった妻が共感したことで関係が改善したいい例ですね」
教えてくれた人
川崎貴子さん/夫婦関係コンサルタント。2児の母。女性のキャリア支援事業を展開し、講演や執筆活動も行う。共著に『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本~35歳からのナチュ婚のすすめ』(河出書房新社)がある。
取材・文/前川亜紀 イラスト/香川尚子
※女性セブン2022年12月1日号
https://josei7.com/
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