市販の介護食「どんな味？見た目は？親に食べてほしいのはどれ？」”肉じゃが＆すき焼き”を実食検証
すき焼きは、キユ―ピー、アサヒグループ食品、ハウス食品、イーエヌ大塚製薬、エバースマイルの5品を実食。「牛肉の仕上げ方が各社アプローチが違っておもしろい！」（編）。
やさしい献立 すき焼き（キユーピー）
キユーピーの介護食のおかずは、かたさの区分のラインナップが豊富。実食したのは「歯ぐきでつぶせる」だが、嚥下や咀嚼機能に合わせて選びたい。すき焼きは、やわらかく仕立てた牛肉と豆腐、玉ねぎ、しいたけを卵でふんわりととじた甘めの味わいが特徴。
「5品の中でいちばんすき焼きらしい味。舌ざわりもいい」（宮）。「にんじんが入っていないせいか見た目がやや寂しい。肉の繊維がちょっと舌に残る感じがするけど、味はグッド」（編）。「とろみの量に対して具材の量が少ない気がしますが、すき焼きとしての味のバランスはいいですね」（記）
【データ】
商品名：やさしい献立 すき焼き
区分：歯ぐきでつぶせる
内容量：100g
エネルギー：93kcal
食塩相当量：1.0g
価格：206円（メーカー希望小売価格）
販売：キユーピー
バランス献立 すき焼き（アサヒグループ食品）
料亭のだしや具材のかみ心地を追求した多彩なおかずが揃うアサヒグループ食品の「バランス献立」シリーズ。すき焼きは、牛肉と野菜の旨みを引き出し、卵でとじた上品な味わいが特徴。
「お肉は小さくカットされているが、肉の食感がけっこうしっかりしている」（宮）。「玉ねぎはかなりトロッとしていて、すき焼きらしい甘みが感じられる。溶き卵がさりげなく入っていて食べやすいと感じた」（編）。「にんじんの色合いがよく見た目はいいが、甘めの味つけがあまり好みではないかも」（清）。
【データ】
区分：歯ぐきでつぶせる
内容量：100g
エネルギー：57 kcal
食塩相当量：1.2g
価格：205円（メーカー希望小売価格）
販売：アサヒグループ食品
やわらか肉の牛すき煮（ハウス食品）
ハウス食品の「やさしくラクケア」シリーズ。やわらか肉の牛すき煮は、ジューシーな肉の旨みと、濃口しょうゆの甘辛いたれでしっかりとした風味に仕上げてある。
「しいたけの風味が利いていて、具材の食感や旨みがしっかりしていておいしい。歯ぐきでつぶせるギリギリのかたさですが、通常食に近い味でこれはいい！」（清）。「素材の形がしっかり残っていて、お肉の味わいがほかのものより強く感じる」（宮）。「牛肉の素材感をいちばん楽しめますね」（編）。
【データ】
商品名：やわらか肉の牛すき煮
区分：歯ぐきでつぶせる
内容量：100g
エネルギー：106kcal
食塩相当量：0.97g
価格：185円（編集部調べ）
販売：ハウス食品
あいーと すき焼き風寄せ煮（イーエヌ大塚製薬）
見た目が通常食と変わらない『あいーと』シリーズは、故・小林麻央さんが闘病中に食べたことでも話題になった。すき焼きは、牛肉やれんこん、ごぼう、白菜などの具材が、甘いしょうゆだれにしっかり絡んだ一品。
「煮しめや筑前煮に近い感じで、ごぼうの味と香りが立っていておいしい。根菜が入ると、食が細くなった人にとってはすっきりした味わいになっていいかも」（清）。「すき焼きを家族で食べるとき、介護が必要な人にはこれがあれば、一緒に食卓を囲んでいる感じがしていいかも」（宮）。「お肉の見た目が食欲をそそる。れんこんがやわらかくて驚きました」（記）
【データ】
商品名：あいーとすき焼き風寄せ煮（冷凍食品）
内容量：93g
エネルギー：69 kcal
食塩相当量：1.7g
価格：691円（メーカー希望小売価格）
販売：イーエヌ大塚製薬
やわらかムース すき焼き（エバースマイル）
牛肉ムース、白菜ムース、しいたけムース、長ねぎムースで構成され、野菜の旨みと牛脂の甘い香りが溶けだした、コク深い味わいに。
「牛肉のムースは舌ざわりがザラっとしていて肉の食感を再現しているのがおもしろい」（清）。「白菜と長ねぎの味の違いがわからないが、すき焼きのたれは甘みがあって食べやすい」（編）。「父の介護をしたとき、お肉や魚を小さくカットして食べさせていたがどうしても食が進まなかった。こういうムース状ならかむ力が弱っていても食べやすいと感じた」（宮）。
【データ】
区分：舌でつぶせる
内容量：115g
エネルギー：147 kcal
食塩相当量：1.4g
価格：3200円（8個）（メーカー希望小売価格、送料別）
すき焼き5品の中で「マイベスト」は？
清水：やわらか肉の牛すき煮（ハウス食品）
宮本：あいーとすき焼き風寄席煮
編集：バランス献立すき焼き（アサヒグループ食品）
記者：やさしい献立 肉じゃが（キユーピー）
商品名：やさしい献立 すき焼き｜バランス献立 すき焼き｜やわらか肉の牛すき煮｜あいーと すき焼き風寄席煮｜やわらかムース すき焼き
メーカー：キユーピー｜アサヒグループ食品｜ハウス食品｜イーエヌ大塚製薬｜エバースマイル
区分：歯ぐきでつぶせる｜歯ぐきでつぶせる｜歯ぐきでつぶせる｜―（区分なし）｜舌でつぶせる
内容量：100g｜100g｜100g｜93g｜115g
エネルギー：93kcal｜57 kcal｜106kcal｜69 kcal｜147 kcal
食塩相当量：1.0g｜1.2g｜0.97g｜1.7g｜1.4g
価格：206円｜205円｜185円｜691円｜3200円（8個）
市販の介護食を実食検証【まとめ】
「父親は晩年、量が食べられなくなっていたので、お刺身やハンバーグを小さくしてひと口サイズにして食べてもらっていましたが、どうしても受け付けないことがありましたね。早い段階からこういうものを使ってみてもよかったかもしれません」（宮）。
「食材の見た目が保たれている『あいーと』は、どれも群を抜いておいしかったですね。ムース状の介護食は、見た目や食感に驚きましたが、こういう介護食の形もあるんだなぁと」（編）。
「普段食べている食事と比べてしまうと正直おいしくないというものもありましたが、介護が必要な人にとっての適切な味の濃さやかたさ、とろみの加減がわかってよかったです」（記）
「同じ区分『歯ぐきでつぶせる』でも、食材のかたさがメーカーによって違いがあるのが発見でした。総じてキユーピーの介護食は具材がやわらかめの印象で食べやすいと感じました。
昨年亡くなった父は、入院していたときチューブで栄養を摂りはじめたら目に見えて弱っていきました。やっぱり口から食べることが大切。介護食を便利に活用しながら、最後までおいしいものを食べてもらいたいですよね。口から食べることで、もっと食べたい、また食べたい、という生きる意欲につながると思うんですよ」（清水さん）。
監修
管理栄養士・清水加奈子さん
国際中医薬膳師、調理師などの資格を持ち、女性誌や広告などでレシピの提案や監修を行う。介護食おせちの監修なども手がける。
撮影／宮本信義 取材・文／田名部知子
●介護食はどこで売っているの？売り場や種類、食べ方を徹底リサーチ【栄養士監修】
