シニア向け体験型イベント「Age Well Japan 2022」に潜入!インスタで話題「シルバーテツヤ」誕生秘話も
体験ブースの奥の広い会場では、脳トレリズム体操考案者の早川嘉一郎による実演や、ファッションデザイナーの横森美奈子による「おとなのおしゃれトキメキ講座」、特別講演としてブライダルファッションデザイナーの桂由美さんも登壇し、客席は大盛り上がり。
中でも記者が注目したのが、85才の祖父にブランド服を着せた画像がバズったことで注目されたCMプランナーでコミュニケーション・デザイナーのクドウナオヤさんの講演だ。「若者が憧れる“次世代シニア”とは」をテーマに講演した内容の一部をお届けする。
クドウさんは、洋服が大好きで気づくとクローゼットがいっぱいになってしまうため、定期的に不要になった服を古着屋に売りに行っていたという。
そんなクドウさんは、2019年のゴールデンウィーク前のある日、ふと「3年くらい実家に帰ってないな」と思ったという。しかし、ただ秋田に帰ってもやることがないため、「そうだ、捨てる服をおじいちゃんに着せて写真を撮ってみよう」と思いついた。
おじいちゃんこと、工藤哲弥(くどう・てつや)さん(享年87才)は、元教師でファッションとは縁遠い。果たしてどんな写真が撮れたのか――。
「最初に撮った写真が意外にカッコイイ。次の写真も、おや? カッコいいぞ。まさかのテツヤ85才、孫の服を着てみたらイケていました。
思いのほかカッコよく着こなしていて、途中からは本人も農具を担いだりしてやる気になって、素人とは思えない表情も撮れちゃったりしました」
早朝から日が沈むまで、子供のころにおじいちゃんと遊んだ場所を訪れ、思い出を語り合いながら30着もの服を着て撮影を続けたという。
東京に戻り、撮影した写真をInstagramに投稿。シルバー世代の人がカッコよく見えたらいいなという思いを込めて、アカウント名は「シルバーテツヤ」にしたという。その投稿がバズりにバズりまくって、くどうさんのおじいちゃんは、一夜にして世界が注目するファッションアイコンとなった。
反響は世界にも広がった。海外のファッションブランドサイトや『VOGUE』などの海外のメディアにも取り上げられ、写真展や写真集まで出版するブームとなった。
「おじいちゃんは2021年、87才で亡くなりましたが、生前は地元の新聞に掲載さたことで元教え子たちからもたくさん連絡がきて、嬉しかったと言っていました。よくおじいちゃん孝行だねって言われるんですけど、決してそうではないんです。
おじいちゃんと一緒になにかできたらなっていう軽い気持ちで始めたことでした。一緒に何かをする、いわば共犯関係のような感じ。高齢者の人と向き合うとき、僕は『うやまうな、一緒に遊べ』という姿勢が大事だと思っています。
横並びで目線を揃えて、一緒に楽しめることを探すことが、高齢者にとっても若者にとっても、ハッピーにつながる。高齢者と若者カルチャーには、ギャップがあるからこそ、世の中を驚かせる力があると思います。若い人から高齢者、高齢者も若い人を巻き込んで、一緒にできることを見つけてくれたらなって思っています」
講演の後半では、ミハルのスタッフたちも「自分のおばあちゃんに孫の服を着せてみた」という写真を披露した。
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ミハルをはじめ、今、介護市場に参入するスタートアップ企業が増えている。今回のようなシニア向けの体験型イベントをはじめ、孫世代と高齢者が繋がる場がもっと増えて行くといい。人生100年時代、格好いい次世代シニアになるために、孫世代と目線を揃えて楽しむ柔軟さが大事かもしれない。
取材・文/氏家裕子 構成/介護ポストセブン編集部