「片麻痺の人を立ち上がらせる」「車いすやトイレに深く座らせる」方法|力のない人も楽にできる「古武術介護」
『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子さん(65才)は、昨年8月から母親を在宅介護し、今年3月に見送った。実際に介護をするなかで、「立たせる」「座らせる」「移動させる」機会が多く、大変だったという。そこで、介護福祉士の岡田慎一郎さんが考案した「古武術介護」を体験してもらった。格闘技や古武術の動きを取り入れた介護法は、体を効率的に使うことで、力のない女性でも楽にできるという。介護をするなかでも難しい、「片麻痺の人を立ち上がらせる」「深く座らせる」方法を教えてもらった。
股関節がよく動く体をつくることが大切
「体を動かす際、土台となるのは下半身。ですから、しっかり安定させつつ、自在に動けるようにしておかないとなりません。そのために必要なのは筋トレではなく、股関節を動かしやすくすること。
股関節が硬いと、立つ、座る、歩くといった基本動作がしにくくなります。ですから、生活の中で自然と股関節を動かす動作をすることが大切です」(岡田さん・以下同)
そうすることで、体の使い方が楽になり、必要な筋力も自然について、介助に役立つという。
片麻痺の人の立ち上がらせ方
被介助者の体の片側が麻痺している場合、かなり立ちにくい。まずは“片麻痺の人の立つ仕組み”を理解することが大切。
※記事中では、右半身が麻痺で動かせない場合を例として紹介しています。
●片麻痺の人の立つ仕組み
【OK!】
左脚(動く方の脚)を少し広げ、左太ももにひじを置いたら、左ひざの方角に頭を下げて、股関節から前傾すると楽に立ち上がれる。
【NG!】
右半身が麻痺で動かせない場合、左脚(動く方の脚)の脚力だけで真上に立とうとしがち。脚力が足りないとよろけてしまって危険なうえ、左のひざに大きな負担がかかる。
●片麻痺の人を立ち上がらせる方法
【1】“片麻痺の人の立つ仕組み”を応用させる。被介助者の足をできるだけ広げ、動く方(写真の場合は左)の側に立って腰を落とし、上半身に手を回してしっかりと支える。
【2】被介助者には頭を下げて前傾してもらい、上に引っ張り上げるのではなく、介助者の斜め後ろに引くと簡単に立ち上がらせられる。
深く座らせる方法
トイレや車いすに浅く座ってしまった被介助者を、深く座らせる。これは、オバ記者が母の介護で苦労した動作の1つ。ポイントは後方に引くこと!
【1】被介助者に前傾してもらったら、介助者は両わきの下から腕を回し入れ、おへその下あたりに両手を添える。
【2】被介助者が前傾になるとお尻が上がる。そのタイミングで、両手で被介助者のお腹を押して腰を自分の方に引き寄せる。上でなく後方に引くことを意識する。
【NG!】
立ち上がらせるときと同様、介助者は被介助者を上方向に引っ張って移動させようとしがち。これは体を痛める。
教えてくれた人
介護福祉士・理学療法士 岡田慎一郎さん
重度身体障害者などの施設に勤務しながら、古武術の体の動かし方を参考にした「古武術介護」を生み出す。近著に『図解でわかる! 古武術式 疲れない体の使い方』(三笠書房)。
取材・文/野原広子、桜田容子 撮影/楠聖子
※女性セブン2022年9月15日号
https://josei7.com/
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