「継父からの虐待で絶望」「医者との結婚が不幸の始まり」波瀾万丈の実録エピソード2選
「心の複雑骨折を繰り返しながら、自然治癒力を身につけていくのが、人生というものなのかもしれない」とは夏井いつきさんが新著『瓢簞から人生』につづった言葉。浮き沈みの激しい人生を送ってきた読者のエピソードから、私たちが学べることとは…。
実の家族に虐げられ、新しい家族に救われた
大手企業に勤める父、専業主婦の母のもと、何不自由なく育った私の人生が一転したのは、わずか4才のとき。父が車にはねられて亡くなったのです。母は錯乱状態となり、子供を育てられる状態ではなく、私は父の実家に預けられました。祖父母は母との結婚を反対していたため、
「おまえの母親のせいで息子は死んだんだ」
と、八つ当たりをされました。物差しで叩かれ、線香を押し付けられ、口に粘着テープを貼られて殴られました。
10才のとき、見かねた親戚が母に連絡をしてくれ、ようやく母が迎えに来てくれたのですが、そのときには母は別の男性と再婚していました。働いたことがなく、ひとりで生きられない母も、再婚で精神が安定したようで、やさしい母に戻ってくれていて本当にうれしかったものです…。
でも、問題がありました。それは、継父が私と2人きりになると体を触ってくるのです。
「勉強を教えてあげる」
と言いつつ、最初は手、頰、股の間に手を入れられたことも。母に相談すると、
「それを誰かに言ったら追い出すわよ」
と言われました。絶望しました――
でも、二度と祖父母の家に行きたくなくて、母の言いつけを守ることにしました。14才で継父と男女の関係にさせられましたが、心を殺して耐え、アルバイトができるようになった16才のときに家を出ました。
その後の2年間は、友達の家を転々とし、援助交際をして生活しました。汚れた自分は死んでもいいと思っていたのです。
そんな投げやりだったときに、声をかけてくれたのが夫でした。彼の実家は仕出し店を経営しており、行く当てのない私を心配し、実家に住まわせてくれたのです。彼の両親は私を実の娘のようにかわいがってくれ、仕事も教えてくれました。そして、彼が大学を卒業すると同時に結婚。仕出し店の若女将としての人生が始まりました。
とても忙しかったですね。早朝から仕込み、オードブルや弁当の配達。さらに私が30才のとき、夫の父親が脳出血で倒れて半身不随に。その介護も加わりました。毎日必死でしたが、働けば認められ、お世話をすれば感謝される毎日は充実していました。
いまは52才。仕出し店は廃業しましたが、土地建物を売ったお金でマンションを買い、84才の義母と54才の夫と3人で、介護の仕事をしながら暮らしています。虐待され続けた10代、休む間もなく働いた20~40代を思えば、これほど穏やかな毎日はありません。
医者との結婚が不幸の始まりだった
幼い頃からの私の夢は「お金持ちと結婚すること」でした。父親が働かなかったため、家は貧しく、お金にまつわることで両親はいつもけんかをしていました。お金さえあれば、家族仲よく暮らせると思っていたんです。
高校を卒業後、就職し、その給料で通信制の大学に通って大卒資格を取得。さらに料理学校に通うなどして、“理想のお嫁さん”になる努力を続けました。
そして24才のときに、知り合いの紹介で5才年上の開業医と出会いました。結婚するならこの人しかいないと思いました。とにかく彼に好かれる努力をし、28才でプロポーズされたときは、心の中でガッツポーズを決めたものです。
ところが、現実は幸せな結婚とは程遠いものでした。夫の一族はみんな医師。そのため、学歴の低い私は、一族中からバカにされ、家政婦として扱われたのです。食費も日用品費も1円単位で夫に管理され、自由にできるお金はありません。それでも結婚2年目で生まれた息子がいてくれたからがまんできました。
ところがその息子が3才の健診で発達障害の診断を受けたんです。すると、夫や姑の息子に対する態度が激変。
「おまえの遺伝子のせいだ」
と私をののしるだけでなく、息子に暴力を振るうようになったのです。まだ3才の小さな子なのに…。このままでは息子の命が危ないと、離婚を決意。すぐに息子と家を出ました。
それまでの私は専業主婦でしたし、財布は夫に握られていたので貯金はありません。消費者金融でお金を借り、トイレ共同・風呂なしアパートを契約。仕事は50社以上回って探しました。
それからはとにかく息子の幸せのために生きようと、突っ走りました。息子の中学入学、高校入学、大学入学、就職内定…それぞれに大喜びしました。どれも当たり前のことかもしれませんが、“普通にできる”ことのありがたさが身にしみましたね。
お金の有無と幸せとは関係ないことがよくわかりました。まだ私も53才、健康であること、仕事があることを喜び、これからは自分のために生きようと思っています。
取材・文/前川亜紀 イラスト/大窪史乃
※女性セブン2022年9月8日号
https://josei7.com/
●私の波乱万丈人生「セレブ妻から一転!ドン底から這い上がった」実録エピソード3選