自律神経をほぐす「ツボ押し&呼吸法」5つのSTEPで胃の不調をリセット【専門医監修】
蓄積する疲労や日々のストレスで胃の不調を感じているなら、「自律神経」に注目だ。専門医によると、自律神経をもみほぐして柔らかくすることで、胃の不調が緩和されるという。自律神経を整えて気になる胃の不快感をリセットする5つのステップを紹介していこう。
硬くなった自律神経をほぐして胃の不調を緩和
「腸と脳が影響し合う『腸脳相関』はよく知られていますが、最近の研究では『胃脳相関』といって、胃と脳も互いに影響を及ぼし合っていることがわかってきました」(新板橋クリニック院長で消化器内科医の清水公一さん・以下同)
胃と脳は自律神経によってつながり、胃に食べ物が入ると消化に働くよう脳から信号が送られる。これと同様に、胃もたれなどの不調があれば脳に信号が送られ、不安感が増すことがわかっている。
「自律神経は自分の手で触って確認し、リセットすることができる」と清水さんは言う。
「自律神経は細い神経線維の束が集まってできており、全身に網の目のように広がって脳と神経のネットワークを作り上げているのですが、束が硬く太くなったり、柔らかく細くなったりと、形を変化させながら常に動いています。自律神経は特にお腹に集中していて、お腹の上から手で触ることができるので、状態を感じることができるのです。
また、脳と神経のネットワークがうまく機能しているときはとても柔らかいのですが、ストレスなどがかかると神経線維は硬くこわばり、束は厚みを増して痛みを感じるようになります」(清水さん・以下同)
太く硬くなってしまった自律神経をもみほぐして柔らかくすることができれば、脳と神経のネットワークがうまく働いて自律神経の乱れがリセットされ、胃の不調も緩和されるのだ。
自律神経の硬さをチェックしてみよう!
自律神経は、みぞおちからへそのまわりに集中している。
硬さをチェックする基準は、脇腹近くの内臓の柔らかさがわかりやすい部分で、この部分と同じくらい柔らかければ、自律神経がうまく動いているサイン。硬くなっていれば不調があり自律神経が乱れているわけだ。
「まずは内臓の柔らかさがわかりやすい場所を探します。人差し指、中指、薬指の3本の指で、おへその横を押していくと、ふにゃふにゃと柔らかくて、指がかなり深くまで入ると思います。この感覚を覚えておいてください。次に、お腹の自律神経を指で押します。
右の下腹部から始めて、時計回りに少しずつ指を移動させ、お腹を押します。
最初に確認した内臓の部分と比べ、硬くなっていたり、痛さや苦しさ、気持ち悪さを感じたら、そこの自律神経が硬くなったり、太くなったりしているということです。このようにお腹全体をチェックしたら、もっとも硬い場所を見つけ、1か所を集中してもみほぐしてください」
ほぐす際は力を入れすぎず、5~10秒を目安に、両手の指をお腹に押し込み、指を上下左右に動かし円を描くように回すといい。
以下で具体的なやり方を解説する。
STEP1:自律神経の硬さをチェック
A:内臓の柔らかさがわかりやすい部分
B:自律神経が集まっている部分
右の下腹部から始め、時計回りに指で押していく
□ 内臓の部分Aと同じくらい指が深く入る
□ 自律神経が硬くなっている
□ 指で押したとき、痛さを感じる
□ 指で押したとき、苦しさを感じる
□ 指で押したとき、気持ち悪さを感じる
STEP2:硬いところをもみほぐす
【1】で硬かった部分を1か所見つけ、もみほぐす。
1:硬い部分に両手の各3本の指を当てて、下に押す。
2:押したままの状態で、前後左右に動かすように力を入れる。
3:押したままの状態で、時計回りに円を描くように力を入れて回す。
逆腹式呼吸でセロトニンを増やして自律神経を改善
息を吐くときは、横隔膜が上がって肺がしぼみ、吸うときには、横隔膜が下がって肺が膨らむ。
「無意識の呼吸では横隔膜はほとんど動きませんが、意識的にお腹を使う深呼吸は、横隔膜が動いて自律神経も動かすことができます。お腹をへこませたまま息を吸い、お腹を膨らませたままで息を吐く『逆腹式呼吸』をすれば、横隔膜がより大きく働きます」
背筋をまっすぐ伸ばしてお腹をへこませ、息を吸う。次に胸からお腹までを膨らませ、口から息を吐く。
「息を吐くときは、“あー”と声を出すか、口を“あー”の形にして声は出さず、“息の音”を聞きながら行うのがポイントです。かなり疲れる呼吸法ですが、3回を1セットにして行うといいでしょう。この呼吸法を繰り返せば、マッサージする以上にお腹がほぐれます」
この後、STEP1に戻って自律神経の硬さをチェック。行う前より柔らかくなっていれば、自律神経が動いて形状が変化しているということになる。変化があまりなければ、再度もみほぐしと逆腹式呼吸を繰り返し、1日30セットを目標に行うといい。
「自律神経は触れば触るほど柔らかくなっていきます。そうなると、機能性ディスペプシアだけでなく、さまざまな体の不調が改善できます。“1日に30セットなんて到底できない”などと諦めず、通勤途中や、仕事をしながら逆腹式呼吸を行うだけでも効果はあります。続けていれば意識しなくても逆腹式呼吸ができるようになります。横隔膜をリズミカルに動かす逆腹式呼吸をすれば、脳内のセロトニン分泌が増えます。自律神経ほぐしとセロトニンのダブルの効果が期待できます」
時間を見つけて、硬くなった自律神経をすべてほぐすつもりでSTEP1~3を繰り返していこう。
STEP3:お腹を使う逆腹式呼吸で、自律神経を動かす
1日30セット以上が目安
1:息を吸う前にお腹をへこませる。
2:顔をやや上に向けながら、息を胸いっぱい吸い込む。
3:息を吐く前に胸からお腹をめいっぱい膨らます。
4:口からゆっくりと息を吐き出す。
心と体の状態を自立神経でチェック
みぞおちや、みぞおちとへその間には、自律神経の中で、緊張や興奮をつかさどる交感神経が多く集まっている。そのため、脳が疲労したり、緊張したりすると、この場所の交感神経が反応して硬くこわばるのだ。
また、へその左右は感情変化によって自律神経が硬く太くなりがちだ。
「おへその右側は、思い通りにいかないイライラや怒り、憤り、不満があると硬くなります。また左側は心配や不安、悲しみがつのったり、がまんを続けると硬くなります。ここをほぐせば心と体の状態も改善されていきます」
STEP4:心身の状態の影響が表れる自律神経のチェックポイント
・みぞおち周辺…脳の疲労、緊張
・みぞおちとへその間…脳の疲労、緊張
・へその右側…怒り、イライラ、憤り、不満
・へその左側…心配、不安、がまん、悲しみ、憂い
あくび体操で脳幹に刺激を与えてリフレッシュ
眠気に襲われたときに無意識のうちに出る「あくび」にも、凝り固まった自律神経を元に戻し、心と体をリセットする効果がある。
「自律神経は、背骨の中を通る脊髄から脳幹を経て、脳にさまざまな情報を伝えています。また脳幹は、呼吸や体の器官の動きなどをつかさどる生命維持に重要な部分で、自律神経の中枢を担っています。
大きく口を開けてあくびをすると、顔の筋肉とつながっている骨が動き、脳幹の上にある蝶形骨(ちょうけいこつ)と呼ばれる骨も動いて脳幹に適度な刺激を与えます。このとき、脳脊髄液の循環をよくする効果もあるため、あくびをすると自律神経が整います。
このあくび体操と、先ほど紹介した逆腹式呼吸には同じような作用がありますが、両方を合わせればさらに効果が高まります。1セット行うだけで、自律神経はもちろん、首肩まわりの凝りもほぐれ、全身が整います」
STEP5:あくび体操
1:足を肩幅に開いて立ち、口を大きく開けてめいっぱい息を吸い、上を向いて5秒キープ。
2:顔を正面に向け、息を吐き、再び上を向いて息を吸う。
3:顔を上に向けたまま右に傾けて5秒キープし、息を吐く。
4:顔を上げて息を吸い、そのまま左に傾けて5秒キープ。1の姿勢に戻り、ゆっくり息を吐きながら顔を正面に向ける。
取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ
※女性セブン2022年8月11日号
https://josei7.com/
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