エアコンはフィルター掃除で860円節約 我慢せず節電しながらお得に活用する方法
総務省消防庁によると、熱中症で搬送される人の6割近くが65才以上の高齢者となっている。この夏は、節電要請も発令する中、高齢者はとくにエアコンを我慢しがち。そこで節約・家事アドバイザーの矢野きくのさんに、エアコンを賢く節電しながら快適に夏を乗り切る方法を教えてもらった。
高齢者のエアコン嫌いへの対処法
7月1日から9月30日までの期間で、政府から節電要請が発令されました。そのような中で、真夏という季節に限定すれば、家庭の消費電力の中で占める割合が大きいのはエアコンになります。
しかし、近年注意喚起されているように、節電するためにエアコンをつけず熱中症になってしまうというというのは避けなければなりません。
とくにシニアの方の場合は、若い頃に比べて暑さを感じづらくなっている人もいるようで、気づかないうちに熱中症になってしまっているというケースも。また、「エアコンの風が嫌い」「エアコンは寒すぎる」という方もいます。
さらには、「エアコンは贅沢。昔はエアコンなんてなくても大丈夫だった」という考えの方も少なくはありません。
このような中で、高齢者の方にはエアコンとどのように付き合ってもらうのがいいのでしょうか。
「昔と今は気温が違う」ことを知ってもらう
2022年7月10日現在、歴代の最高気温ベスト10のうち1つだけ1933年というものがありますが、9つが2000年以降、うち7つが2018年以降に観測された気温になります。
順位|都道府県・地点|観測値(℃)|起日
1位|静岡県・浜松|41.1|2020年8月17日
1位|埼玉県・熊谷|41.1|2018年7月23日
3位|岐阜県・美濃|41|2018年8月8日
3位|岐阜県・金山|41|2018年8月6日
3位|高知県・江川崎|41|2013年8月12日
6位|静岡県・天竜|40.9|2020年8月16日
6位|岐阜県・多治見|40.9|2007年8月16日
8位|新潟県・中条|40.8|2018年8月23日
8位|東京都・青梅|40.8|2018年7月23日
8位|山形県・山形|40.8 1933年7月25日
※気象庁「歴代全国ランキング」
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/rankall.php
それだけここ数年に暑さは、昔の日本とは違うものなのです。「昔はエアコンなんて使っていなかった」という考えの方には、この数値を見せて昔の日本と今の日本の気候の違いを知ってもらうところからはじめましょう。
それでも納得してもらえない場合は、熱中症患者の6割近くが65歳以上の高齢者※であり、熱中症の発生場所は半数近くが自宅であることを説明してみてはいかがでしょうか。
※総務省消防庁「全国の熱中症による救急搬送状況 令和4年6月27日~7月3日(速報値)」より。
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r4/heatstroke_sokuhouti_20220627.pdf
大前提として室温を上げない工夫をする
エアコンの節電というと、どうしてもエアコンの設定温度などに意識がいきがちですが、まずは、エアコンを使う場合でも、使わない場合でも、室温を上げない工夫をすることが重要です。
外からの熱をカットする
筆者の自宅でも日中、日当たりがいい南側の部屋と、日当たりが悪い北側の部屋では5度ほど室温が違う日があります。このことからも分かるように、外からの直射日光を遮ることで室温が上がるのを抑えることが可能なのです。
昔ながらのすだれやよしず、最近流行りのオーニング(日よけ)などを使い直射日光が室内に入るのを防ぎましょう。また、最近はレースのカーテンでも遮熱、遮光性能がある製品があるので、そのようなものを使うのもおすすめです。
室内の行動で室温を上げない
室内で室温を上げてしまうのは、調理です。調理時間を短くすることで室温の上昇を抑えることができます。食材を薄く、小さくカットすることで火の通りが早くなります。また、煮物などは、最初の野菜の下茹でに当たる工程だけ電子レンジで加熱することによって、その後の加熱時間を短くすることも可能です。
また、やかんで麦茶を沸かしているのであれば、水出しのティーバッグに換えることで室温を上げずにお茶を用意することができます。
エアコンはフィルターの掃除で年間860円節約に
フィルターにホコリがこびりついているご家庭があります。ホコリがついていると、中から冷えた空気が出づらくなり、エアコンは冷やそう冷やそうとして、余計に電力を消費してしまいます。
資源エネルギー庁の省エネポータルサイト※によると、フィルターが目詰りしているエアコン(2.2kW)とフィルターを清掃したエアコンを比較すると、年間で電気31.95kWhの省エネ、約860円の節約になると言われています。
夏の間はとくに最低でも2週間に1度はフィルターの掃除をするようにしましょう。
※参考/経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/airconditioning/index.html
定期的にフィルター掃除をしているエアコンであれば、フィルターをつけたまま掃除機で吸い取る程度の掃除でよいですが、ホコリがびっしりと着いてしまっているようであれば、取り外して掃除する必要があります。
フィルターを取り外したら、まずは掃除機でホコリを取ります。その後に、中性洗剤と使い古した歯ブラシなどを使い細かい部分の汚れも落としながら水洗いし、しっかりと乾燥させてから、エアコンに戻しましょう。
リモコンの設定温度よりも室温をチェック
エアコンの設定温度というとどうしてもリモコンに表示される温度を気にしてしまいますが、エアコンの温度センサーはエアコン本体、吹き出し口付近にあるものが多く、実際に人がいる場所の室温とは違います。
そのため、必ず温湿度計を人がいる場所に置き、実際の数値を確認する必要があります。熱中症になるのも、不快と感じるのも、温度だけでなく湿度も関係してくるので、両方を表示してくれるものがいいでしょう。
エアコンを使いたくないというシニアの方にはとくに、温度と湿度の状況にあわせて「熱中症の注意アラート」が表示されるものがおすすめです。
編集部注:一般的に室温の温度が28度、湿度70%を超えると熱中症に注意すべきとされている。環境省の「熱中症予防サイト」※によると、暑さ指数(WBGT、気温と湿度と輻射熱による温度の指標)が25~28℃以上:「警戒」、28~31℃以上:「厳重警戒」、31℃以上:「危険」となる。
※環境省「熱中症予防サイト」
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
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エアコンに関してはとくに、「節電のために使わない」「節電のために設定温度を上げる」というのは避けて、まずは、室温を上げない工夫や、風通しのよい服装にする等で対処しましょう。
室内の温度や湿度をチェックしてエアコンを賢く活用して節電しながら熱中症を防ぎ、猛暑の夏を乗り切って欲しいと思います。
執筆
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』、『「節電女子」の野菜レシピ!』など。https://yanokikuno.jp/