50才から実践すべき「睡眠力」を高める生活習慣10「バナナ+牛乳は睡眠に最強の朝食」
「女性の健康寿命は75.38才ですが、これはあくまで平均値。75才を過ぎても元気な人もいれば、認知症の進行が速い人、75才を迎える前に自力で歩けなくなってしまう人もいる。この“75才の壁”を超えられるかどうかは、70代までの過ごし方が鍵となります」と専門家は話します。そこで、「75才の壁」を元気に超えるための「正しい睡眠」について睡眠専門医の坪田聡さんに話を伺った。
50才を過ぎたら睡眠の質を高める習慣を
睡眠には、疲労回復効果だけでなく、ストレスやうつ症状を緩和させるなどさまざまな効果がある。しかし、眠るにも力がいる。この“睡眠力”は10代でピークを迎え、50代を境に大きく衰える。
「これは加齢により脳の中の松果体(しょうかたい)が老化し、睡眠ホルモンである“メラトニン”の分泌量が減ってしまうからです」
とは、睡眠専門医の坪田聡さんだ。睡眠力が衰えると眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めてしまう。
「加齢により眠れなくなるのは仕方のないこと。若い頃と睡眠時間を比較するのではなく、50才を過ぎたら、自分に合った睡眠スタイルを新たに作ることが大切です」(坪田さん・以下同)
加齢により睡眠力が落ちても、睡眠の質を高める方法はある。以下で詳述する。
【1】長く眠る必要はない
睡眠が健康に必要不可欠なら、長く寝た方がよさそうだが、そうではないという。
「1980年代にアメリカで行われた調査では、睡眠時間が7.5~8.5時間の人は、6.5~7.5時間の人よりも死亡率が20%高いという結果が出ています」
睡眠は長さより質が大切だ。
【2】20分で寝つけないなら布団を出る
寝床に入っても寝つけないなら、無理に眠る必要はない。
「眠れないのに布団の中にいるのは逆効果。『布団=不眠』と関連づけられ、布団を見ると眠れなくなる恐れが。30分たっても眠れないなら一度布団を出るのもおすすめ」
【3】数回に分けて眠る「分割睡眠」も◎
「1日1回まとめて眠るのを『単相性睡眠』、数回に分けて眠るのを『分割睡眠』といいます。夜中に目覚めるなら1回起きて、あとで再び眠る分割睡眠でもOK。日中に問題なく動けるなら、睡眠不足ではありません」
【4】午前0時までには寝る
睡眠の質を高めるには、成長ホルモンがポイントに。
「成長ホルモンは寝始めの3~4時間が分泌のピーク。特に午前0時までに眠ることで、分泌を活性化できます」
【5】メリハリのある生活を心がける
「日中の活動レベルが高いと睡眠の質は上がる。昼はよく動き夜はしっかり休む、メリハリのある生活を心がけて」
休日の寝だめは逆効果。睡眠リズムが狂い、余計寝不足になるので気をつけよう。
【6】夜10~15分のストレッチを
「1日30分程度のウオーキングは脳細胞を再生させ、長寿遺伝子テロメアの減少を抑えます。午後7~9時に軽く運動をすると寝つきがよくなるので、10~15分のストレッチでもいいので習慣化を」
【7】明るさなど、寝室環境を整える
快適な室温は、夏で25~28℃、冬で15~18℃。湿度は40~60%程度だ。
「夕食後は照明を暗くすると体が自然と休みモードになります。寝るときは、光の刺激で眠りが浅くならないよう、真っ暗にしましょう」
【8】昼寝をするなら15時までに約20分
夜の睡眠を妨げないためにも、昼寝をするなら15時までに20分程度がおすすめ。
「ポイントは、昼寝前にカフェインを摂ること。カフェインの覚醒効果が発揮されるのは摂取してから30分後なので、目覚めたい時間に起きやすくなります」
【9】「バナナ+牛乳」は睡眠に最強の朝食
前述のセロトニンには心と体をスッキリさせ、自律神経を整える働きがあるため、良質な睡眠のためにも必要だ。
「セロトニンの材料になるトリプトファンを朝に摂ると、日中は目が覚め、夜は寝つきがよくなります。特にバナナと牛乳は、どちらもトリプトファンの含有量が多くて◎」
【10】悩みを寝床に持ち込まない
コロナ禍で悪夢を見る人が増えたとの調査報告もあるように、ストレスは睡眠の質を下げる。一度寝て朝起きると気持ちが切り替わりやすいので、悩みがあっても明日に持ち越し、とりあえず眠ることも大切だ。
睡眠の質をよくする生活習慣【まとめ】
■快眠の準備は朝から!
□ 布団を出たら、すぐに太陽の光を浴びる
□ 朝食は必ず摂る
□ 平日は同じ時刻に起きる
□ 休日でも平日の睡眠時間+2時間以内に起きる
■日中、気をつけること
□ 1日1万歩、歩く
□ 昼寝をするなら15時までに20分程度
■夕方に気をつけること
□ 軽い運動をする
□ 夕食は、眠る時刻の3時間前までに終える
□ カフェインは、夕食後は摂らない
■夜の過ごし方
□ 眠る1~2時間前に入浴する
□ 眠る1時間前は明るい光やスマホ・テレビの画面は見ない
□ お酒は眠る3時間前までに
□ 寝室の室温は夏で25~28℃、冬で15~18℃。湿度は40~60%程度に
■お休みのときに
□ 寝室は暗く静かに
□ 眠くなったら床につく
□ 眠る前に、翌朝の起きる時刻を強く念じる
□ 寝床の中では悩まない
教えてくれた人
坪田聡さん/医師・医学博士
雨晴クリニック院長。「快眠で健康な生活を送ろう」をコンセプトに、睡眠の質を向上させるための指導や普及に努める。著書に『60歳からの睡眠の新常識 もう無理して眠らなくても大丈夫!』(宝島社)など。
取材・文/鳥居優美 イラスト/なとみみわ
※女性セブン2022年7月7・14日号
https://josei7.com/
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