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健康

50才以降歩く速度が落ちる!中高年におすすめ「ファストウオーキング」の正しい方法

 コロナ禍以降、健康に対する意識は高まる一方。周りを見ても、ウオーキングやジョギングを始めた人がちらほら。「やっぱり私も運動、始めなきゃ」と思っている人におすすめなのが「ファストウオーキング」。健康効果が高く、天候を気にせずにできる歩き方を専門家に教えてもらった。

脚力を鍛えれば老後も健康に

 何才になっても元気な脚力を保つためにおすすめなのが、今回紹介するファストウオーキングだ。しかし、中高年の場合、始める前に注意しておきたい点がある。

「男女とも、50才を境に急激に歩く速度が落ちる人が増えます。それに伴い、歩幅や腕の振りが小さくなり、つま先が上がらず、足を左右に開いて歩く人が増えることもわかっています。これは、筋力やバランス能力が低下するため、よりラクに歩こうとする傾向が強くなるからです」と語るのは、アシックススポーツ工学研究所 主席研究員の市川将さん。

 アシックスが推奨する、ふだんより速く歩くことを意識した運動だ。エネルギーの消費量が増え、下肢だけでなく体幹や上肢の筋肉も鍛えられ、ダイエットや生活習慣病にも効果があるという。

 運動習慣のない人や高齢者でも、ランニングと比べて体への負担が少なく、運動効果も高い。脚力がつけば健康になるだけでなく、若々しく見えるといううれしい効果もあるという。買い物や移動の合間にできるという手軽さもある。

■ファストウオーキングの歩き方・特徴

 歩幅を大きくして、「走った方がラク」と思う速度まで、できるだけ速く歩く。けがやスポーツ貧血などのリスクを減らしながら、より高い負荷でエネルギーを消費する。姿勢も美しくなる。

<足の着地部分>
かかとから

<1歩あたりの歩幅>
70cm前後

<速度>
時速5~7km

<1㎞移動にかかる時間>
8分30秒~12分(時速7km→5kmの場合)

■年齢別歩行速度

 加齢による体の変化を36項目にわたり調査した結果、大きく減少したのが歩行速度だ。これにより、歩行速度が歩行能力に大きくかかわっていることが判明した。(資料提供/アシックス)

走った方がラク! その速さで歩くメリット

 ファストウオーキングにはどんなメリットがあるのだろうか。

「ランニングより体への負担が少ないにもかかわらず、ランニングに近い運動効果を得られる点が、最大のメリットです」

 そう、前出の市川さんは語る。

 アシックスと立命館大学が行った、ウオーキングとランニングのエネルギー消費量の実験結果を見てみよう。

■エネルギー消費量の計測(男女36人の平均値)

※ウオーキングは、速度に対して加速度的にエネルギー消費量が上がっていくと、時速5~7kmの早歩きが、運動効果を高める目安となる。

「ランニングはスピードに比例してエネルギー消費が増えていくのに対し、ウオーキングはスピードに対して加速度的に増えています。その目安は時速7km。時速7kmというのは、歩くよりも“走った方がラク!”と感じ、ちょうど人が自然と走り始める速さです。

 なぜそう感じるかというと、走った方がエネルギーの節約になるからです。そこをあえて歩くのは、体にとって効率が悪い。しかし、非効率だからこそ、高い効果が得られるわけです」(市川さん・以下同)

 同実験によると、時速7.5kmのファストウオーキングのエネルギー消費量は、同一速度でランニングしたときのそれを上回り、時速9.3kmのランニングエネルギーと同程度の結果だったという。誰もがそんな速度で歩けるわけではないが、それでも時速5km程度の歩行から速度を時速1kmずつ上げていくときのエネルギー消費は、ランニングと比較しても大きいことがわかる。

「加えて、ランニングより足の裏やひざへの衝撃、関節や骨への負担が少ないのも大きなメリットです。時速およそ7.7kmの実験の結果、ランニングの地面反力(体への衝撃)は体重の2.2倍ですが、ファストウオーキングは1.5倍でした(ウオーキングは1.1倍)。

 そのほか、時速7.5kmでファストウオーキングをした際の大腿二頭筋(太ももの筋肉)の活動レベルはランニングと同等であったことから、太ももの引き締め効果も期待できます」

速度にこだわらず自分なりの早歩きを

 そもそも、ファストウオーキングに着目したのはなぜか。

「早歩きの運動効果については、すでに60年ほど前から知られていましたが、詳細な分析は多くありませんでした。

 しかし、ランニングよりも体への負担が少なく、ウオーキングより運動効果が高いのであれば、両者の溝を埋める新しい運動として、幅広い年代の人が手軽にできるのではないかと思ったのです。特に、高齢のかたの日常の歩行速度と平均余命には関連性があることが報告されており、いまより少しでも速く歩くことができるようになれば、その後の健康維持にもつながります」

 東京都健康長寿医療センターの研究でも、大きな歩幅で颯爽と歩くことは、脳機能の低下を防ぐ可能性があるとして注目されている。とはいえ、時速7kmで歩くのは、シニア女性にとってはかなりハードに思える…。
 
「時速7kmは、エネルギー消費量がランニングと逆転する目安ではありますが、前述の通り、時速5~6㎞でも運動効果は充分高いです。女性であれば、時速6㎞程度を目標にしてみてください。重要なのは、いまより少しずつ速く歩けるようになることです。

 最初は速度にこだわらず、自分なりの早歩きから始めれば問題ありません。ファストウオーキングのよさは、ウエアを着て走るための時間を作らなくても、通勤時間や買い物などに取り入れられる点です。まずは、日常の歩行を早歩きに置き換え、時間ができたら、少し長めのファストウオーキングに挑戦してみてください。運動習慣のない人ほど、効果が早く表れます」

 暑さや雨で屋外で運動する時間を取るのが難しい日もあるが、通勤や買い物で歩く時間を利用するなど、生活の中で速く歩く習慣を身につけよう。

ファストウォーキング“理想のフォーム”

【1】肩の力を抜き、ひじは軽く曲げ後ろに大きく引くように振る

【2】頭の揺れを小さくし、あごを引いて少し遠くを見る

【3】ひざは曲げず、足は振り出すとき、つま先を上に反らせる

【4】ストライドを大きく

 肩を開いて背筋を伸ばし、骨盤を立てるイメージで立つ。鼻から吸い、口から吐く呼吸を続けながら大きく歩く。腕を振る際、脇を締め、お腹も引き締める。歩くときはひざを開かず、ひざとつま先を前に向けて歩く。ファストウオーキングの詳細は、アシックスのウェブサイトでも見られる。https://walking.asics.com/jp/ja-jp/mk/fastwalking/index.html

ファストウオーキング“歩き方のコツ”

 ファストウオーキングの実践に入ろう。アシックスでは、加齢による歩き方の変化をはじめとした歩行に関する研究結果から、理想的なフォームを導き出した。

 細かく指示がある中で、最重要ポイントは大きく4つある。
 
「まず大切なのは、『颯爽と速く歩く』ことです。それができれば、ある程度理想的な姿勢と歩き方になります。その中で注意すべきは、腕の振り方と姿勢、足の運び方です。腕の振り方はけっこう間違いがちで、速く歩こうとして、体の前で腕を振ってしまう人が多い。それはそれで速く歩けるのですが、背中が丸まり、前傾姿勢になって胸が縮こまるため、呼吸もしにくくなります。リラックスして肩を開き、目線を落とさず、まっすぐ前を見ます。そして、腕を後方に引きながら歩き出すと、自然と背筋が伸びてよい姿勢になります。呼吸もしやすくなることが実感でき、歩く姿も美しく見えますよ」(市川さん・以下同)

 呼吸がしっかりできると運動効果も高まるそうだ。

「腕が振れるようになると、足も前に出やすくなり、無理をせずとも歩幅が大きくなります。足も、かかと側から着地して、ある程度ひざが伸びた状態で蹴り出せているはずです。『肩を開き、腕を後ろに振り、歩幅を大きく取って、かかとからつく』ことを意識すること。そして繰り返しになりますが、『いま自分は颯爽と歩いている』ことをイメージしながら気持ちよく歩いてください。推奨速度の5~7kmは気にせず、自分なりの早歩きでかまいません」

 この歩き方が身についてくると、50才以降の人に増えてくる「腕の振りと歩幅が小さくなり、つま先が上がらず、足を左右に開いて歩く」という歩行傾向が、少しずつ改善されるという。

「ただし、運動習慣のない人や、足腰や関節に不安を抱えている人には負担が大きいかもしれないので、通常のウオーキングから始めて、少しずつ速く歩くことをおすすめします」

 もっと運動効果を上げたければ、走る時間を延ばせばよいのか?

「上級レベルの目標は45分歩くことですが、かなり疲労します。それ以上歩くと故障のリスクも出てくるので、45分以上はおすすめしません。もっと運動効果を狙うなら、3 分のファストウオークと2分のゆっくり歩きを繰り返す『インターバルウオーキング』を30~45分行うと、体への負担を抑えながら、筋力や心肺機能を無理なく向上することが見込めます」

実際に歩いてみた!

 アドバイスをもとに、記者もファストウオーキングに挑戦してみた。コースは約1kmの遊歩道。徒歩だと12~13分だが、今回の目標は10分(時速6km)だ。目線を上げ、腕を後ろに引いて踏み出すと、骨盤から足が押し出されるように前に進む。この歩き方をするだけで、自然とスピードが出る!

 体格や運動習慣によって個人差があるが、記者の場合、「三百六十五歩のマーチ」のテンポが、ちょうど時速6km。じんわりと汗をかきながら1km到達。10分を全力で歩くと、けっこう息が上がる。これを30分続けると思うと…ジョギングの方が、確かにラクな気がしてきた。

 歩行後は、意外にも背中まわりがスッキリと軽くなった。正しいフォームで歩ければ、全身に効きそうだ。何より、風を切ってキビキビと歩くことが心地よく、いい気分転換になった。暑い日や雨の日は、家の廊下やベランダでもできそうな気がする。

 ファストウオーキング用アプリ「Walkmetrix」を記者は利用した。ウオーキング中の時速、距離、消費カロリー、歩幅、心拍数が表示され、各自のメニューに応じたプログラムも組んでくれる。頑張ると「この調子です!」と音声で叱咤激励してくれるのもうれしい。iPhone iOS13以降、Android8.0以降に対応。

ファストウオーキングの素朴な疑問に答えます

 それぞれに合った靴選び、運動する時間帯や頻度、ダイエットに効果のある強度…etc.気になるあれこれを一問一答形式で

 運動する際の注意事項などを、ファストウオーキングについてはアシックススポーツ工学研究所の市川さんに聞いた。

【Q】脚力強化には、週何日くらい運動するのがいいですか? ダイエットにおすすめの頻度はありますか?

【A】「一般的な目安として、初心者は1日10分、中級者は20分、上級者は30分(最大45分)をそれぞれ週4回とお伝えしています。ダイエット目的ならインターバルウオーキングなど、強度の高い運動を組み合わせてみましょう。時間がない、続かないという人は、日常に早歩きを取り入れるだけでもOKです」(市川さん・以下同)

【Q】おすすめの時間帯はある?

【A】「何時でもOKですが、よく眠れないという人は朝がいいでしょう。朝に日光を浴びると、14~15時間後に睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されて眠気を促し、眠りのバランスを整えるといわれています」

【Q】食前食後、どちらがいい?

【A】「食後の方が、より糖をエネルギーに変えてくれるので、生活習慣病やダイエットに効果的です。一方で、食前の運動は筋肉をつけて基礎代謝を上げ、太りにくい体になります。運動後は、筋肉となるたんぱく質を摂ることで、さらに筋力向上の効果があります」

【Q】水分補給は?

【A】佐藤さん「こまめに摂ることは常識ですが、摂りすぎると体内の塩分濃度が低くなる『低ナトリウム血症』となり、めまいがしたり、最悪死に至ることも。走る前後の体重差を把握しておき、減った分を補いましょう」

【Q】靴選びのポイントは?

【A】「ウオーキングの場合、柔らかすぎるクッションのものは、蹴り出しの力が必要になるため、適度に硬さがあり、反発力のある靴底のウオーキングシューズがおすすめです。10分程度の短さであれば、革靴でも問題ありません」

 ファストウオーキングにおすすめのシューズ、ゲルムージーSP (アシックス)。歩行時にミッドソールの中足部がたわむことで体の上下動によるロスを抑え、効率のよい足運びをサポートする。ゲルムージーSP 1万3200円/アシックス

取材・文/佐藤有栄 イラスト/中村知史

※女性セブン2022年6月30日号
https://josei7.com/

●脂肪が燃えるウオーキング3つの条件|1日20分以上、週3以上、あと1つは?

●高齢者に「ポールウオーキング」がおすすめな理由「通常歩行よりエネルギー消費量が多く、4点歩行で転倒防止に」

●認知症予防にも!ウオーキングで得られる4つの健康効果と正しい歩き方3つのコツ

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