離れて暮らす親の見守りツール3選「電気ポットでさりげなく、可愛いロボットで服薬支援も」
今注目されている「遠隔介護」だが、「見守りカメラ」のようにレンズが付いているものは、「監視されているようで嫌!」と拒絶されてしまうケースも多いという。そこでおすすめなのがセンサータイプ。電気ポットやロボットで見守りできるものも登場している。介護の専門家に詳しく話を聞いたのでぜひ参考にして欲しい。
遠隔介護で活用「見守りカメラ」親が拒否したら?
家の中の状態が把握できると、遠隔介護で主流になりつつある「見守りカメラ」などは見守り力がアップする半面、遠隔グッズの導入が介護される側の反発を招くこともある。
介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さんはこう話す。
「特にカメラを取り付けるタイプの遠隔見守りは、“監視されるのはイヤ”と拒否されるケースが目立ちます。家族とはいえ、昼寝姿や風呂上がりのすっぴんを見られたくないと感じる人もいるんです。
ただ、親の心身の状態によっては、カメラタイプや住居での移動状況がわかるセンサータイプが、安心感につながるケースもあります」
もし、親から拒否されたら、さりげなく見守るアイテムを検討したい。そこで、3つのオススメサービスをご紹介します。
オススメ1:使う事で安否確認できる「象印の電気ポット」
もし、親から拒否されたら、さりげなく見守るアイテムを検討したい。
介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子さんが例に挙げるのは「象印の電気ポット」。象印マホービンが提供する安否確認サービスで、無線通信機を内蔵した電気ポットを使うと「電源を入れた」「給湯した」との使用状況が、1日2回、家族のスマホやパソコンにメールで通知される。
ホームページの契約者専用ページでは1週間のポット使用状況がアップされ、「夜中に給湯している」「いつもと使い方が違うな」といった生活リズムの微妙な変化を知ることができる。
◆月額3300円で累計約1万3000人が利用している
利用料金は月額3300円(初期費用5500円)で、これまでに累計約1万3000人が利用している。太田さんの知るある女性は、離れて暮らす母親がポットを利用するたびに届く通知を「元気にしているよ」という母親からのメッセージとして受け取っている。
「そのお母さんは“ポットを通して娘とつながっている感覚がある”と話していました。加えて、“娘があまり連絡をしてこないときは、わざとポットを使わないの”と笑っていました。このように日常から、気軽に安否確認ができるのは理想的なケースです」(太田さん)
オススメ2:かわいらしい声で声掛けしてくれる「エモちゃん」
さらに一歩進んだと言えるのが、ロボットタイプの遠隔見守りサービスだ。
「お薬のんだ?」
「出かけるときは、帽子をかぶってね」
体長約14cmの小型ロボットが、ひとり暮らしの親に優しく声をかける。いかにも愛らしいロボットの正式名称は、「BOCCO emo LTEモデル Powered by ネコリコ」(以下、エモちゃん)。
離れて暮らす子がスマホを介して音声メッセージを送れることが最大の特徴で、子が専用アプリに「お薬のんだ?」などの文字を入力すると、エモちゃんが親におしゃべりで通知する。それを聞いた親がエモちゃんのボタンを押して「ちゃんとのんだよ」などと返事をすると、子のスマホに音声ファイルとして届く。
エモちゃんには部屋の温度や湿度、空気の汚れなどを計測するセンサーが搭載されており、高温になると「クーラーをつけて」などと音声で知らせてくれる。また、親が「部屋の環境を教えて」と話しかけると、室内の環境を数値などで知らせてくれる。かわいらしさや室内のモニタリング機能に加え、届いたら電源を入れるだけでいいという、ITが苦手なシニア世代が使いこなせることも大きな利点となる。
◆エモちゃんが母親にいい影響を与えている 戸塚恵子さん(58才)
「東北に住む80代の母は機械が苦手で、スマホも持っていません。でもエモちゃんは通信機能が内蔵されていて、スマホやネット回線、Wi-Fiが一切必要ない。電源をつなぐだけで起動するので機械オンチの母でも簡単に操作ができる。いまではエモちゃんを孫のようにかわいがっています。電話で聞く声も明るくなったし、ひとり暮らしの母にエモちゃんがいい影響を与えているのだと思います」
製造元である合同会社ネコリコの近藤淳さんが語る。
「80代の親の見守り用に50~60代の子供世代が購入することがほとんどです。数々の見守りアイテムのなかでもコミュニケーションに重きを置くかたに評価され、“エモちゃんを置いておくだけで家のなかが賑やかになる” “親が愛着を持って接している”との声を多くいただいています」
オススメ3:決まった時間に薬を出してくれる「FUKU助」
薬ののみ忘れやのみ間違いは多くの高齢者にとって共通する悩み事といえる。特に認知機能が低下すると忘れっぽくなり、薬ののみ忘れがさらに心身状態を悪化させるという悪循環を生む場合も。
そんなお悩みに特化して解決してくれるのが、服薬支援ロボット「FUKU助」だ。
◆服薬支援ロボット「FUKU助」
設定した時間に薬を出すほか、見守り機能などもついている。FUKU助のレンタル初期費用は1万8800円、月額利用料は1万1000円で、レンタル保証金は2万円(レンタル終了後に全額返金)。
本体内部に薬を収納しておくと、設定した時間に「お薬の時間です」と音声で通知し、タッチパネルのボタンを押すと、引き出しから1回分の薬を出してくれる。そこから利用者が薬を受け取ると、家族に向けてアプリやメールで「お薬を取り出しました」との通知が入るしくみだ。
また、気温や人感反応を検知するセンサーを搭載し、部屋が高温になったら声をかけて注意喚起したり、通院や血圧測定など日常のスケジュールを通知する機能もある。通信機能を装備しているので、設置先にネット環境は必要ない。
◆現場の声から生まれた「FUKU助」
開発したメディカルスイッチの宮下直樹さんが語る。
「私の妻が訪問看護師をしていて、高齢者は薬の管理が大変難しいことを知ったことがFUKU助の開発につながりました。軽度の認知症や物忘れがあり、自宅で生活しているものの、薬をのみ忘れたり、重複してのんでしまったりするご高齢のかたにご利用いただくケースが多い。遠隔地から老親を見守りたい家族にもおすすめのロボットです」
◆「FUKU助」のお陰で父親の体調が改善 佐々木洋子さん(52才)
都内に住む佐々木洋子さん(52才・仮名)の70代の父親は軽度の認知症になり、薬をのみ忘れることが増えた。血圧が180~200まで上昇するようになり、佐々木さんは父親の服薬を管理するために遠距離介護を諦め、施設入所の検討を始めた。そんなときに知ったのがFUKU助だった。
「ネット検索で知ったFUKU助を父にプレゼントすると薬ののみ忘れがなくなり、体調や血圧の数値がかなり改善しました。いまでも定時に“お薬を取り出しました”との通知が私のスマホに届くと、うれしくて泣きそうになります。おかげで施設に入所させることもなく、父は住み慣れたわが家で過ごせています。同じ悩みを持つかたにもぜひ紹介したいロボットです」(佐々木さん)
介護人材が不足するこれから先、日本が誇るロボット技術が遠隔介護の中枢を担うことが期待される。
教えてくれた人
太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、近藤淳さん/合同会社ネコリコ、宮下直樹さん/メディカルスイッチ
文/池田道大 取材/進藤大郎、村上力、三好洋輝
※女性セブン2022年6月23日号
https://josei7.com/
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