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忘れ得ぬ“私の恩人”エピソード|見知らぬ人の親切で運命が変わった!「電車のものまね名人」ほか実話

 コロナ禍で人との触れ合いが減って、人とのつながりが希薄になった人もいるかもしれない。それでも、街で、電車で、旅先で…思わぬ事態に見舞われたそのとき、優しく手を差し伸べてくれた人がいる。「名前も知らない誰かの親切に救われた」エピソードから、人の温かさを思い出してみてほしい。

山のように雄大だったあの人の背中

 登山が好きな茨城県の主婦・有田幸枝さん(72才・仮名)には、同じ趣味を持つ恩人がいる。

「数年前までは週に一度は登山を楽しんでいたのですが、足腰が弱ってからはすっかり遠のいてしまって…」  

 代わりに近所の散歩を日々の楽しみにしていた。ところがある日、転んでひざをすりむいてしまった。

「転んだだけでも老体には結構こたえます。座り込んでいると、見知らぬ青年が声をかけてくれました」

 その青年は、恐縮する有田さんをおんぶして家まで送ってくれたという。「何度も謝る私に“気にしなくていいですよ”と笑いかけてくれました」。世間話をするうち、青年が大学の登山部に所属していることがわかった。そして、申し訳なさそうにする有田さんにこう言ったという。

「大きな荷物を背負って山登りするので、おばあちゃんをおんぶするくらい平気ですよ」

 まるで山の上から見た絶景のような清々しさ――自宅に着くと、青年はすぐに去って行った。

 現在、有田さんは足腰を鍛え直し、また登山を始めたという。「いつか登山中にバッタリ彼に会えたら、必ずお礼を言いたい。それを励みに続けています」。感謝の気持ちを持ち続けることもまた健康長寿の秘訣になっているかも!?

電車の中で姿も見えぬものまね名人

 大阪府の主婦・手坂かおりさん(51才・仮名)は、初めての子育てに奮闘中の30代の頃、ちょっと変わった恩人に出会っている。

「当時2才の娘を連れて電車に乗ったのですが、そこで娘の“イヤイヤ”が発動してしまったんです」

 車内で泣き叫ぶ娘。手坂さんはなだめようと声をかけるが、まったく聞き入れてくれず…。乗客の視線は手坂さんと娘に集まっていた。

「いたたまれなくて、とにかく次の駅で降りようと思っていたそのとき、犬の鳴き声が聞こえてきたんです。最初はペットを連れて乗車している人がいるのかと思ったのですが、次は猫の鳴き声が聞こえました」

 動物好きな娘はその声で泣きやみ、周囲を見回した。

「その後も、カラス、サル、馬…次から次へと動物の鳴き声が聞こえてくるんです。どうやら、乗客のどなたかが、動物の鳴きまねをしてくれたようなんです」

 手坂さんは必死に声の主を探したが、見つけられなかった。「あのことがきっかけで娘はさらに動物に興味を持つようになり、この春、獣医を目指して大学に進学しました!」

 そのものまね名人は、きっとこのことを忘れているだろう…。しかし、そのささやかな親切が、ひとりの女の子の人生に大きな影響を与えたのだ。

父の四十九日に起きた奇跡

 熊本県の主婦・小松智美さん(58才・仮名)には、不思議な巡り合わせを感じた出来事があった。

「先日、父の四十九日の法要がありました。無事に納骨も終わり、89才の母のリクエストで近くの温泉施設にあるレストランに行ったんです」

 ところが、食事を終えた母親に異変が起きる。見る見るうちに顔色が悪くなったのだ。

「明らかに普段の様子と違ったので、すぐに救急車を呼んでもらいました。私の腕の中でぐったりし、変ないびきをかき始めて…。どうしていいかわからず、ただ母を見つめていることしかできませんでした」

 するとそこへ、たまたま温泉へ遊びに来ていた消防士の夫婦がやってきたという。母親の様子を見た途端、テキパキと処置を始めた。

「母にAED(自動体外式除細動器)を付けたり、脈を測ったりしてくれました。そのうち母の意識が戻ったんです」

 その後、母親は救急車に運ばれ、一命を取り留めたという。

「もし、あの場に消防士のご夫婦がいなかったら、母は亡くなっていたか、重い後遺症が残ってしまったかもしれません。温泉のスタッフも、タオルをたくさん持ってきてくださり、いろいろなかたにお世話になりました」

 偶然が重なった奇跡。もしかしたら、天国の父親も力を貸してくれたのかもしれない――。

厳しい言葉の裏の真のやさしさを知る

「あのおばさんは大切なことを教えてくれた恩人です」

 福井県の主婦・浅岡千春さん(38才・仮名)は、小学1年生の頃、子猫を拾った。しかし、母親から、「飼えないから元の場所に捨ててきなさい」と言われてしまった。

「子猫がかわいそうで家を飛び出しました。母はなんて冷たいんだろうと憤りました」

 公園のベンチに座り、途方に暮れていたそのとき――。

「40代くらいのおばさんに声をかけられました。事情を話すと“あなたはその子猫をどうするの?”と質問されました」

 浅岡さんは不満げに、母のせいで捨てるしかない、と答えた。すると、「あのね。かわいそう、だけで動物は救えないの。生き物の命を預かるというのは、死ぬまで責任を持って面倒を見るということ。責任も負えないのに拾ってくることこそ、残酷で無責任なんだよ」

 ペットを飼うには、お金や手間がかかる。しかし、まだ幼い浅岡さんには理解できず、知らない人に怒られたと思って怖くなった。しかし結局、おばさんが子猫を引き取ってくれ、心の底から安堵したという。

「あのときおばさんが伝えたかったこと、いまならよくわかります。私もわが子に、命を預かる責任の重さを伝えていきます」

取材・文/川辺美奈子 イラスト/ico.

※女性セブン2022年6月9日号
https://josei7.com/

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